WAFのシグネチャーとは?仕組みや種類、設定・更新方法をわかりやすく解説

WAFの防御能力を左右する重要な要素が「シグネチャー」です。シグネチャーとは、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングなど、既知の攻撃パターンを定義したルール集であり、WAFはこのシグネチャーをもとに不正な通信を検知・遮断します。

本記事では、WAFシグネチャーの基本的な仕組みから、ブラックリスト型・ホワイトリスト型の違い、実践的な運用ステップ、更新の必要性と課題までをわかりやすく解説します。

 

WAFのシグネチャーとは 

ここでは、シグネチャーの定義と、WAFがシグネチャーをどのように活用して攻撃を防いでいるのかを解説します。

 

シグネチャーの定義

シグネチャーとは、既知の攻撃パターンや不正な通信を識別するためのルール集です。攻撃の「特徴的なパターン」をまとめた定義ファイルとも言えます。

具体的には、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)、コマンドインジェクションなどの攻撃パターンがシグネチャーに定義されています。また、攻撃コードそのものを検知するシグネチャーだけでなく、攻撃の前段階となる調査行為(脆弱性スキャンなど)を検知するシグネチャーも存在します。

SQLインジェクションについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。

SQLインジェクションとは? 攻撃の仕組みや被害例、対策方法を解説

 

WAFとシグネチャーの関係

WAFはWebアプリケーションへの通信を常時監視し、受信したリクエストをシグネチャーと照合します。通信内容がシグネチャーのパターンと一致した場合、WAFは設定に応じて遮断・警告・許可などのアクションを実行します。

つまり、シグネチャーはどのアクセスを通過させ、どれをブロックするかを決定する判断基準となります。シグネチャーの精度がWAFの防御能力を直接左右するため、「WAFの要」と言えます。適切なシグネチャーがなければ、WAFは十分に機能しません。

WAFについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。

セキュリティ対策に有効なWAFとは?仕組みや種類、おすすめ製品を紹介

 

ブラックリスト型とホワイトリスト型の比較

シグネチャーの検知方式には、大きく「ブラックリスト型」と「ホワイトリスト型」の2種類があります。主な違いは下表のとおりです。

項目 ブラックリスト型 ホワイトリスト型
検知方式 既知の攻撃パターンを定義しブロック 許可する通信のみ定義し、それ以外をブロック
メリット ・既知の攻撃に高い検知精度

・運用コストが低い

・SQLインジェクション、XSSなどに有効

・未知の攻撃にも対応可能

・セキュリティレベルが高い

・新種の攻撃にも効果的

デメリット ・未知の攻撃には対応不可

・定期的な更新が必須

・シグネチャ肥大化で性能低下

・誤検知が発生しやすい

・設定変更の手間が大きい

・管理・運用負荷が高い

未知の攻撃への対応 対応不可 対応可能
適用シーン 一般的なWebサイト、ECサイト 社内システム、高セキュリティ環境

このように、多くの企業ではブラックリスト型が主流ですが、両方を併用することでより強固な防御を実現します。自社の環境や運用体制に応じて適切な方式を選択しましょう。

 

シグネチャー型とアノマリ型の違い

WAFの検知技術には、「シグネチャー型」と「アノマリ型(異常検知型)」の2つのアプローチがあります。主な違いは下表のとおりです。

項目 シグネチャー型WAF アノマリ型WAF
検知方式 既知の攻撃パターン(シグネチャー)とのマッチングで判断 正常な通信パターンを学習し、異常を検知
使用技術 パターンマッチング、正規表現 AI・機械学習、統計分析
既知の攻撃への対応 非常に高い検知精度 対応可能
未知の攻撃への対応 対応不可 対応可能
誤検知率 中程度(適切なチューニングで低減可能) 比較的低い(学習により精度向上)
運用負荷 高い

(継続的なチューニングと更新が必要)

低い

(学習により自動最適化)

このようにそれぞれ強みが異なるため、両者を組み合わせることでより高い防御力を実現できます。

 

WAFシグネチャーの実践的な運用ステップ

WAFを効果的に活用するには、適切な運用が欠かせません。ここでは、導入から日常運用までの流れを4つのステップに分けて解説します。

 

ステップ①導入時の試験運用

WAF導入時には、まず監視モード(検知のみモード)で試験運用を行うことが推奨されます。この段階では通信の遮断は行わず、ログのみを取得します。

試験運用の目的は、正常な通信パターンを把握し、誤検知が発生する箇所を特定することです。一般的な試験期間は1〜4週間ですが、近年はWAF技術の向上により1〜2週間、場合によっては数日で本番導入に至るケースも増えています。

この期間を設けることで、本番運用開始後の誤検知を事前に防ぐことができます。

 

ステップ②チューニングと本番移行

試験運用で収集したログをもとに、シグネチャーのチューニングを行います。誤検知が発生した場合は「なぜWAFが誤検知したのか」を確認し、特定の条件と特定のシグネチャーのみを無効化するなど、条件を絞って調整することが重要です。

チェックを外しすぎると攻撃を検知できなくなるため、慎重な判断が必要です。場合によってはWebアプリケーション側の実装で対処する場合もあります。

チューニング完了後は、影響の少ないページや時間帯から段階的にブロックモードへ移行し、リスクを最小化しましょう。

 

ステップ③日常的な運用と監視

WAF運用において最も重要なのが、定期的なログ確認と分析です。平常時のログを把握しておくことで、異常を早期に発見できます。

検知状況の分析では、日々どの程度の攻撃を受けているか、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングなどどの種類の攻撃が多いかを確認しましょう。新しいシグネチャーを適用する際は、検知モードで検証してから本番適用することで、正規のアクセスを誤ってブロックするリスクを回避できます。

脆弱性情報の収集や攻撃手法の進化に応じた調整など、PDCAサイクルを回し続けることが効果的な運用のポイントです。

 

ステップ④誤検知発生時の対応フロー

誤検知が発生した場合は、まず、どのユーザー・どのページで誤検知が発生しているか影響範囲を特定します。その後、該当する通信を一時的に許可するなど、ビジネスへの影響を最小限に抑える措置を取ります。

暫定措置が完了したら、ログを詳細に分析して原因を究明し、シグネチャーのチューニングによる恒久的な対策を実施します。この際、セキュリティレベルを過度に下げないよう注意しましょう。

自社での対応が難しい場合は、ベンダーのサポートやセキュリティ専門家への相談も有効です。

 

シグネチャーの更新が必要な理由

シグネチャーは一度設定すれば終わりではなく、継続的な更新が必要です。ここでは、シグネチャーを更新すべき3つの理由を解説します。

 

理由①新しい脆弱性・攻撃手法への対応

サイバー攻撃の手口は日々進化しており、新しい脆弱性が次々と発見されています。IPA(情報処理推進機構)の統計によると、2023年10〜12月のWebサイト関連の脆弱性届出件数は225件に上り、前年同期の84件から約2.7倍に増加しました。

また、攻撃者は既存の攻撃手法を組み合わせたり、AIを活用したりすることで、これまでにない手法で攻撃を仕掛けてきます。シグネチャーを更新しないと、既知の攻撃であっても検知できなくなる可能性があるため、常に最新の状態に保つことが重要です。

2025年のサイバー攻撃事例については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。

【2025年最新】国内外のサイバー攻撃事例10選!対策方法も紹介

 

理由②誤検知の防止

誤検知とは、WAFが正常な通信を不正アクセスと誤って判断し、ブロックしてしまうことです。誤検知が発生すると、一般のユーザーがWebサイトにアクセスできなくなり、顧客の不信感やクレームにつながります。ECサイトでは売上機会の損失という直接的なビジネスダメージも生じます。

誤検知を防ぐには、継続的なシグネチャーのチューニングが欠かせません。Webサイトの通信傾向に合わせた細かい調整を行うことで、誤検知率を低減できます。ベンダーによる運用サポートやクラウド型WAFの活用も有効な対策です。

 

理由③脆弱性対応までの時間稼ぎ

脆弱性が発見されてから修復が完了するまでには、数週間から数カ月かかることも珍しくありません。この期間中、Webアプリケーションは脆弱性を抱えたまま稼働せざるを得ません。しかし、WAFのシグネチャーを更新することで、修復が完了するまでの間も攻撃を防御し続けることができます。

WAFは根本的な対策(アプリケーションの修正)が完了するまでの防御策として非常に有効であり、ビジネスを継続しながらセキュリティを保つことができます。

 

シグネチャ型ーWAFの課題

シグネチャー型WAFは多くの企業で活用されていますが、いくつかの課題も存在します。ここでは、導入・運用時に注意すべき3つの課題を解説します。

 

課題①WAFで防げない攻撃

シグネチャー型WAFでは防ぐことが難しい攻撃があります。まず、シグネチャーに登録されていない未知の攻撃(ゼロデイ攻撃)には対応できません。また、攻撃者がシグネチャーを研究し、検知を回避する手法を開発してくるケースもあります。さらに、大量トラフィックによるDDoS攻撃はWAFだけでは対処が困難です。

これらの課題に対しては、アノマリ型WAFの導入検討や、IPS、ファイアウォール、DDoS対策サービスなど他のセキュリティ対策との組み合わせによる多層防御が有効です。完全なセキュリティは存在しないため、複数の対策を組み合わせることが重要です。

DDoS攻撃への対策については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。

DDoS攻撃への対策とは?攻撃手法や実際の被害事例も紹介

 

課題②処理負荷とコストの増大

シグネチャー型WAFは、通信量とシグネチャ数に比例した処理が必要になるため、規模が大きくなるほど処理負荷が増大します。シグネチャー数が増加するとデータベースが肥大化し、検査に時間がかかるようになります。その結果、高スペックなハードウェアが必要となり、コストも増大する傾向にあります。

この課題への対策としては、ベンダー側でリソース管理を行うクラウド型WAFの活用が有効です。また、不要なシグネチャの定期的な見直しと統廃合によるデータベースの最適化も効果的です。コストと被害額のバランスを考慮した投資判断が重要です。

 

課題③継続的な運用負荷

シグネチャー型WAFの運用には継続的な作業が必要であり、運用負荷が大きいという課題があります。新たな攻撃が発見されるたびにシグネチャーを追加・更新する必要があり、誤検知が発生した場合は迅速な対応が求められます。これらの作業には専門知識を持つセキュリティエンジニアが必要ですが、日本企業ではセキュリティ人材が不足しているのが現状です。

この課題への対策としては、ベンダーへの運用委託が有効です。特にクラウド型WAFでは、シグネチャーの自動更新やチューニングをベンダーが代行するため、運用負荷を大幅に軽減できます。

 

まとめ

本記事では、WAFシグネチャーの基本的な仕組みから、ブラックリスト型・ホワイトリスト型の違い、実践的な運用ステップ、更新の必要性と課題までをわかりやすく解説しました。

WAFのシグネチャーは、既知の攻撃パターンを定義したルール集であり、WAFの防御能力を左右する重要な要素です。効果的に活用するには、継続的な更新と適切な運用が欠かせません。

Cloudbric WAF+」は、シグネチャーの自動更新に加え、AIを活用した異常検知機能を備えたロジック方式のクラウド型WAFです。専門知識がなくても導入・運用が容易で、運用負荷を大幅に軽減できます。WAFの導入や運用にお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。