
近年、サイバー攻撃は高度化・巧妙化の一途をたどっています。そのため、従来のセキュリティ対策だけでは十分とは言えず、より積極的な情報収集と分析が不可欠となっています。
そこで注目されているのが「脅威インテリジェンス」です。攻撃者の意図や手法に関するデータを収集・分析し、セキュリティ体制を強化する仕組みとして、多くの企業や組織が導入を進めています。
本記事では、その定義や種類、活用方法、導入ステップに加え、サービス動向までをわかりやすく解説します。
脅威インテリジェンスとは何か
多く企業や組織で導入が進められている脅威インテリジェンスですが、具体的にはどのようなものなのでしょうか。
ここでは、脅威インテリジェンスの定義や目的、種類について詳しく解説します。
脅威インテリジェンスの定義
脅威インテリジェンスとは、サイバー攻撃者の目的や攻撃手法に関する情報を収集・分析して得られる知識や仕組みを指します。単なる情報の集合ではなく、分析によって付加価値が与えられた成果物としての性質を持っています。
そもそも「脅威」とは情報資産を脅かす要因全般を指し、以下の3種類に分類されます。
①意図的脅威:攻撃者による悪意ある行為(マルウェア感染、標的型攻撃)など
②偶発的脅威:人為的ミスや誤操作による情報漏えいなど
③環境的脅威:自然災害や停電によるシステム停止など
脅威インテリジェンスは上記のような脅威を対象とし、組織の対策力を高めるための基盤となります。
脅威インテリジェンスの目的
脅威インテリジェンスの目的は、組織のセキュリティ体制を強化することにあります。
攻撃の兆候や手口を把握すれば、被害を未然に防げます。経営層にとってはセキュリティ戦略の見直しや投資判断に役立ち、現場担当者にとってはインシデント対応を迅速に進める助けとなります。
さらに、業界全体で情報を共有することで、社会全体のレジリエンスも向上します。脅威インテリジェンスは、情報収集にとどまらず「予防」「意思決定」「効率化」を支える仕組みとして機能します。
脅威インテリジェンスの種類
脅威インテリジェンスは、主に以下の4種類に分類されます。
①戦略的インテリジェンス
脅威トレンドやリスク評価に関する情報など。経営層が意思決定に活用する。
②運用的インテリジェンス
攻撃者の手口やパターン(TTP)に関する情報など。SOCやCSIRTが攻撃傾向の分析などに利用する。
③戦術的インテリジェンス
IPアドレス、マルウェアのハッシュ値など具体的データなど。セキュリティ担当者が攻撃の検知や対応の強化に活用する。
④技術的インテリジェンス
攻撃手法や脆弱性の詳細情報など。セキュリティ担当者がリスク評価やインシデント対応に活用する。
これらは対象とする範囲や利用者の立場によって役割が異なります。自組織の規模や課題に応じて、どの種類を重視すべきかを明確にすることが重要です。
脅威インテリジェンス活用のメリット
脅威インテリジェンスの活用には、以下のメリットがあります。
メリット①攻撃の検知と被害の未然防止
脅威インテリジェンスを活用すれば、サイバー攻撃の動向や自組織に関連する脅威を継続的に把握できます。攻撃の兆候を早期に検知できるため、被害を未然に防ぐ可能性が高まります。
また、ダークウェブや不正サイトを監視することで、情報流出が起きた際に影響範囲をすばやく特定できます。その結果、被害を最小限に抑える対応が可能となります。
メリット②最新の攻撃手法への対応強化
サイバー攻撃は進化を続け、対応が難しい事例も増加しています。ただし、脅威インテリジェンスを活用すれば、最新の攻撃手法や攻撃者の意図を分析できます。
従来のセキュリティ対策は受動的な対応が中心でしたが、脅威インテリジェンスにより能動的な取り組みが可能となり、脅威への対処を迅速かつ効果的に進められます。
メリット③対応の定型化
収集した脅威インテリジェンスを対応プロセスに組み込むことで、手順を標準化できます。既存の方法を整理し、自組織に合わせて最適化すれば、迅速かつ再現性の高い対応が実現します。さらに、属人的な対応に頼らずに済むため、組織全体のセキュリティ水準を高められます。
脅威インテリジェンスを導入するステップ
脅威インテリジェンスを効果的に活用するためには、段階的な導入ステップを踏むことが重要です。
ステップ①情報の明確化
脅威インテリジェンスは、多様な情報源から大量のデータを収集して整理する必要があり、大きな負担がかかります。そこで、「収集の目的」と「必要な情報の範囲」をあらかじめ明確にすることが欠かせません。
戦略的・運用的・戦術的・技術的という4種類の脅威インテリジェンスを基準に、自組織に必要な範囲を定義すれば、効率的な収集につながります。
ステップ②報告内容の明確化
分析した脅威インテリジェンスは、組織内で共有してこそ価値を持ちます。経営層、セキュリティ担当者、一般社員では必要とする情報が異なるため、対象ごとに内容や形式をあらかじめ整理しておくことが重要です。これにより、得られた情報を意思決定や対応へスムーズに反映できます。
ステップ③プロセスの構築
脅威インテリジェンスは、定期的なプロセスを構築することで継続的な活用が可能となり、その効果を高めることができます。具体的には、下記のようなサイクルを構築します。
①計画:情報収集・分析の目的や範囲を設定
②情報収集:必要なデータを継続的に取得
③分析:収集したデータを整理・分類し、知見を抽出
④活用:レポートやダッシュボードで共有し、対策に反映
これらのサイクルを回していくことで、脅威インテリジェンスの有効性を高めることができます。
脅威インテリジェンスサービスとは?
脅威インテリジェンスサービスとは、専門ベンダーがサイバー攻撃に関する情報を収集・分析し、脆弱性や早期警戒の情報を提供する仕組みを指します。サイバー攻撃の手口や攻撃者の動向、脆弱性を幅広く把握できるため、単なる防御にとどまらず「予防」や「早期対応」に大きく役立ちます。
例えば、Cloudbric Labsでは、世界171ヵ国から収集したWeb脆弱性やリスク情報を分析し、その結果を無料で公開しています。このようなサービスを利用すれば、最新の脅威状況を把握しつつ被害の未然防止につなげられます。
Cloudbric Labs:脅威インテリジェンスプラットフォーム
続いて、脅威インテリジェンスサービスの市場規模と今後の展望について解説します。
脅威インテリジェンスサービスのグローバル市場規模
世界の脅威インテリジェンス市場規模は、2024年に58億米ドルと評価され、2025年の68億7000万米ドルから2032年までに240.5億米ドルに成長すると予測されています。
特に、日本を含むインド、中国、オーストラリア、香港などアジア太平洋(APAC)地域で大幅な成長が期待されています。
今後の展望
近年のサイバー攻撃は、国家組織から犯罪グループまで多様化し、手口も高度化しています。こうした状況に対応するため、脅威インテリジェンスサービス市場は今後も拡大すると予測されています。
さらに、AIや自動化技術の進展により、膨大な情報をリアルタイムで分析できるようになり、脅威インテリジェンスの有効性は一段と高まると期待されています。
市場拡大を後押しする要因としては、クラウドサービスの利用拡大、リモートワークの普及による攻撃対象の増加、そしてセキュリティ人材の不足が挙げられます。これらの課題を補う仕組みとして、脅威インテリジェンスへの需要が今後さらに高まっていくでしょう。
まとめ
高度化するサイバー攻撃から組織を守るためには、脅威インテリジェンスを有効に活用することが欠かせません。
まずは目的や種類を正しく理解し、自社に合った導入ステップを踏むことが重要です。さらに、ベンダーが提供するサービスを活用すれば、効率的かつ効果的にセキュリティ体制を強化できます。
特にCloudbric Labsのように無料で利用できるサービスは、最新の脅威状況を把握するための入り口として最適です。
サイバー脅威が増大する今こそ、脅威インテリジェンスを戦略的に取り入れ、組織の安全と事業の継続性を確保することが求められています。
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