Webアプリケーションセキュリティ

2021年 企業が注目すべきWebアプリケーション・セキュリティ・トレンド  その2

ベライゾン(Verizon)の2020 DBIR Reportによると、昨今のデータ侵害の約5割がWebアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃によって発生すると報告されています。Webアプリケーションに対する攻撃は益々増加し、関連規制も強化しつつあります。このような状況で企業が顧客の信頼を失わずにビジネスの持続性を保っていくためには、Webアプリケーション・セキュリティに対する最新情報を踏まえ、セキュリティ対策を強固にする必要があります。前回にご紹介した5つのセキュリティ・トレンドに続いて、今回も企業の信頼性とビジネス継続性を守れる最新のWebアプリケーション・セキュリティ・トレンドをまとめてお伝えします。

 

1. 個人情報保護強化

データ侵害による個人情報漏えいや個人情報不正利用など個人情報と関わるセキュリティ事故と被害が急増し、個人情報保護の重要性は年々高まっている現状です。

東京京商工リサーチによると2020年日本国内における個人情報漏えい被害の件数はおよそ2515万件に達するといいます。
また、外部からのサイバー攻撃による個人情報漏えいや不正利用等の他にも、企業が顧客の情報を無断収集・配布する行為によって顧客の個人情報が侵害された場合もあります。例を挙げると、2019年就職情報サイト「リクナビ」が、学生への説明が不十分なまま「内定辞退率」を企業に有償提供していた事件が代表的です。

被害拡大と共に個人情報保護法の改正により企業の個人情報収集・使用などに関する規制も強化され、2020年6月改正個人情報保護法は個人データを利用する企業の責任を重くした内容となっています。

顧客の個人情報侵害による信頼性の低下は長期的な観点からみると企業のビジネスに悪影響を与える可能性が高いです。したがって企業は顧客の信頼を失わないために個人情報と関わる規制に厳重に準拠するなど、個人情報保護に関するあらゆるイシューをWebアプリケーション・セキュリティに反映する必要があります。

 

2. ビルトインセキュリティbuilt-in security

ソフトウェア、サービスなどITシステムの企画·開発·運営のライフサイクルの全段階でセキュリティをビルトインすることの重要性が高まっています。

ビルトインセキュリティのメリットは、セキュリティを内蔵することを前提にソフトウェアやサービスを設計・開発する過程で、開発者が脆弱性を早期に識別し、対策を立てることが可能であることです。何よりもセキュリティ事故を未然に防ぐ事前対策を備えられることから、Webアプリケーション・セキュリティのトレンドとして注目されています。

 

3. アプリケーション・モニタリング Application Monitoring

アプリケーション・モニタリングは多様化しながら急増するサイバー攻撃を早期に発見し、被害拡大を抑えるために必需的に実装すべきのセキュリティ・ソリューションとして注目されています。

広くなるIT環境の中、いつどこから攻撃してくるか把握しきれないサイバー攻撃を人が直接毎分毎秒監視することはかなり時間と手数がかかる作業になります。そのためWebアプリケーションをリアルタイムでモニタリングする機能を企業システム内に搭載し、24時間サイバー攻撃を警戒・監視することが重要なセキュリティ・トレンドになっています。

  • アプリケーション・モニタリングによるメリット
  • 様々なソースからデータを収集
  • Webアプリケーションから脅威を検知・対応
  • 検知及び対応機能の拡張は脅威検知機能の正確さを向上
  • エンドユーザに影響する前にエラーを把握・処理

上記のようなメリットによってアプリケーションのセキュリティ性能と効率性が高まり、顧客の満足度まで確保できます。

 

4. Web攻撃の変化

Webアプリケーション・セキュリティの全般的な向上によってサイバー攻撃者も更なる進化を重ねて、Webアプリケーションを攻撃するための新しい手口を模索しています。そのため安全なWebアプリケーション・セキュリティ実現をためには、Web攻撃動向の変化を注意深く分析し、最も危険度高い攻撃を把握することを通じて、根本的な解決に繋げる対策に取り組むことが重要です。

ペンタセキュリティがリリースしたWebアプリケーション脅威分析レポート「WATTレポート」によると、2020年上半期Web攻撃Top5は次のようになっております。

  1. Extension Filtering(32.71%)
  2. Request Header Filtering(16.73%)
  3. SQL Injection(15.21%)
  4. Error Handling(7.46%)
  5. URL Access Control(5.71%)

Request Header Filteringの場合、2018年6.27%だった発生率は2020年上半期に16.73%まで上がり、その頻度が極めて増加したことが分かりました。また、Extension FilteringやSQL Injectionの場合、毎年のように発生していますが、URL Access Controlは2020年に新しくTop5に登場したWeb攻撃であります。このようなWeb攻撃動向の変化が2021年にも起こらないとは断言できませんので、一般的に知られているWeb攻撃への対策はもちろん、知られていない新しいWeb攻撃の登場を常に警戒する必要があります。

 

5. 2要素認証 Two-Factor Authentication

2要素認証とは、1つの要素だけで認証していた過程にもう1つの要素を加えてセキュリティの強化を図る手法のことです。例えば、一般的なIDとパスワードのような認証は「ID+パスワード」という1つだけの要素で認証を行います。それに対し2要素認証は、ユーザが知っているもの(パスワード、暗証番号、秘密の質問への回答など)、ユーザが持っているもの(トークン、携帯電話、USBなど)、ユーザの身体的な要素(顔または音声認識、指紋など)、この3つの認証要素のうち2つを組み合わせた認証プロセスです。

2要素認証は他人の個人情報と権限を奪取して企業のシステムに潜入したり、不正利用したりするサイバー攻撃が増えていることから企業のビジネスを守るセキュリティ・トレンドとして注目されています。

実際、2020年「ドコモ口座不正」事件の根本的な原因は本人確認の甘さでありました。ドコモ口座の開設に厳格な本人確認はなく、ドコモメールアドレスを用意するだけで登録が済んでしまいます。この単純な本人確認の過程によって、犯人は何らかの方法で預金者の名義や口座番号などを盗み出し、名義人に成り済ましてドコモ口座を開くことが可能であったため、不正引き出しの被害が発生したと分析できます。

このような被害に遭わないために2要素認証を導入して本人かどうかを徹底的に確認する厳重な本人確認が企業のWebアプリケーションに必需的なものとなっています。

 

さいごに

信頼できない企業にビジネス継続性があるとは言えません。なら、信頼できる企業になるっためには何が必要でしょうか?信頼を守る最も基本的な方法は、サイバー脅威からビジネスに関する情報はもちろん、顧客の情報まできちんと保護することです。
特にWebアプリケーションはコロナ禍につれ非対面生活が持続している今、更に注目すべきのセキュリティ領域であります。Webアプリケーションを基づいて行われる非対面活動が増加しており、サイバー攻撃者は急速に利用度が高まって成長しつつあるWebアプリケーションでユーザは見え切れなかったセキュリティの四角を見抜くためにその目を光らせているからです。

したがって、変化の流れを止めないIT環境でWebアプリケーションセキュリティを発展させるために、企業は昨今のIT環境で狙われやすい脆弱性、セキュリティ脅威の動向、最新セキュリティソリューションなどを把握し、これらをセキュリティ対策を立てる意思決定に反映する必要があります。