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【2025年最新】国内外のサイバー攻撃事例10選!対策方法も紹介

 

テクノロジーの進化に伴いサイバー攻撃の手口も巧妙化し、国内外の企業を脅かす事例が後を絶ちません。企業がサイバー攻撃の被害を防ぐためには、実際の攻撃事例から学び、適切な対策を講じることが不可欠です。

本記事では、2025年最新の国内外におけるサイバー攻撃事例を10件取り上げ、そこから見えるリスクと具体的な防止策を解説します。自社のセキュリティ体制を点検・強化する一助として、ぜひご活用ください。

 

【2025年最新】日本企業におけるサイバー攻撃の被害事例7選

近年、日本企業へ特に深刻な被害をもたらしているサイバー攻撃が「ランサムウェア」です。ランサムウェアとは身代金要求型ウイルスのことで、他者のデータを暗号化して使用不可にし、元に戻すために金銭などを要求します。

ここからはランサムウェア攻撃を中心に、国内で最近発生したサイバー攻撃の被害事例を7点ご紹介します。

 

事例①保険見直し本舗:ランサムウェア攻撃による情報漏えい

大手保険代理店「保険見直し本舗」の運営会社がランサムウェア攻撃を受け、契約者の氏名・住所・電話番号等について最大で約510万件の個人情報に漏えい等のおそれが生じたと公表しました。同社は社内システムの一部で暗号化被害を確認し、速やかにネットワーク分離等を実施。クレジットカード等の決済関連情報は保存対象外で、含まれていないと説明しています。その後の最終報では(2025年8月時点)、外部流出の痕跡は確認されていない旨を公表しています。

 

事例②近鉄エクスプレス:ランサムウェア攻撃による大規模な物流停止

大手物流企業「近鉄エクスプレス」では、基幹システムへの不正アクセスを端緒とするランサムウェア攻撃によりサーバー障害が発生し、一部業務に遅延・停止を含む広範な影響が生じました。同社は緊急対策本部を設置し、外部専門家と連携して復旧対応を数日間にわたり段階的に進めました。攻撃の影響は取引先にも及び、サプライチェーン全体へのリスクが顕在化しました。

ランサムウェアへの対策については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。

「ランサムウェア対策の重要性と具体的な対策方法とは?対処法も紹介」

 

事例③レゾナック:ランサムウェア攻撃によるファイル改ざん

大手化学工業会社「レゾナック」でもランサムウェア攻撃によるサーバー障害が発生し、一部端末でファイル改ざんが確認されました。感染拡大防止のためネットワーク遮断等を実施した結果、社内業務に支障が生じています。第三者調査等の結果、取引先を含む外部ネットワークへの感染拡大や重大な外部へのデータ送信は確認されていないと説明しています。

 

事例④東海大学:ランサムウェア攻撃によるネットワーク停止

東海大学では、学内ネットワークへの不正アクセスを経てランサムウェア攻撃を受け、学内の認証基盤やWebコンテンツの一部が暗号化されました。被害拡大防止のためインターネット接続を遮断し、外部のセキュリティ機関と連携して復旧を進めました。現時点で暗号化データの外部流出は確認されていないとしています。

 

事例⑤宇都宮セントラルクリニック:ランサムウェア攻撃による情報漏えい

宇都宮セントラルクリニックのサーバーがランサムウェア攻撃を受け、患者・医療関係者に関する最大約30万件の個人情報に漏えいの可能性が生じました。対策としてネットワーク遮断等を実施し、電子カルテ等の院内システムが一時的に利用不可となりました。金融機関情報やマイナンバー情報は当該サーバーに保存しておらず、不正利用も確認されていないと説明しています。

 

事例⑥快活CLUB:DDoS攻撃によるネットワーク障害

大手ネットカフェ「快活CLUB」では、DDoS攻撃によりネットワーク障害が発生し、ネットワーク通信をともなう会員アプリ機能が一時的に大幅制限されました。DDoSは侵入を伴わずにサービス妨害を引き起こすため、不審通信の検知・遮断体制の強化が重要です。

 

事例⑦tenki.jp:DDoS攻撃によるアクセス障害

天気予報サイト「tenki.jp」は複数回のDDoS攻撃を受け、一時的にWebページの閲覧が困難になりました。交通等への影響が懸念される気象状況下での情報制限は、利用者に不便と不安を与える結果となりました。

DDoS攻撃については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。

「DDoS攻撃の種類と企業がとるべき効な対策とは?」

 

【2025年最新】海外企業におけるサイバー攻撃の被害事例3選

サイバー攻撃の脅威にさらされているのは、日本企業だけではありません。ここからは、海外で発生したサイバー攻撃の被害事例を3点ご紹介します。

 

事例⑧オラクル:不正アクセスによる情報漏えいの疑い

米国の大手クラウドプロバイダーであるオラクル社について、攻撃者側が「ダークウェブにおいて、約600万件の認証情報を窃取した」と主張し、複数メディアで報じられました。一方で、同社はこうした主張の一部を否定しており、被害の有無・範囲は現時点で確定していません。

 

事例⑨ユナイテッド・ナチュラルフーズ:サプライチェーン攻撃による大規模な物流混乱

米国の大手食品流通業者UNFIがサイバー攻撃を受け、物流システムの一部が停止。これにより注文処理や配送業務に支障が生じ、広域の物流拠点へ影響が波及しました。サプライチェーンのデジタル依存度が高いほど、単一点の障害が全体へ連鎖するリスクが高まります。

サプライチェーンのセキュリティについては、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。

「サプライチェーン攻撃とは? 攻撃方法やその対策を紹介」

 

事例⑩マンパワー:ランサムウェア攻撃による情報漏えい

米国の人材派遣会社マンパワーはランサムウェア攻撃を受け、約14万件超の個人情報に関する侵害通知を実施しました。侵害期間は2024年末〜2025年初頭にわたり、複数のファイルが盗まれたと確認されています。犯行グループは自サイト上で内部データの一部を公開したと主張しており、データ暗号化に加えて情報公開リスクがあることが示されました。

 

企業がサイバー攻撃による被害を防ぐ方法

サイバー攻撃は、企業のサービスや経営に多大な影響を及ぼします。そのような事態を防ぐためには、セキュリティ体制を見直し、適切な対策を講じることが大切です。

ここでは、企業がサイバー攻撃による被害を防ぐための3つの方法をご紹介します。

 

方法①脆弱性診断を実施する

企業のシステムやWebサイトに対しては、定期的に「脆弱性診断」を実施しましょう。脆弱性診断とは、ソフトウェアに潜む脆弱性(セキュリティ上の弱点)を、専門家や専用ツールを通して調べる作業のことです。

放置された脆弱性は、攻撃者による侵入経路や攻撃の起点となりかねません。たとえば、ユーザーから送られた入力データの処理が不適切だと、攻撃者に不正な命令を送信され、システムが誤作動するリスクが生じます。

定期的に脆弱性診断を行えば、こうした脆弱性を事前に検出できます。問題が見つかった場合は、修正や運用改善を通してリスクを低減することが可能です。

 

方法②セキュリティを常に最新の状態に保つ

ソフトウェアやハードウェアのセキュリティは、常に最新の状態に保つことを心がけましょう。攻撃者は日々、新たな攻撃の手口を試みます。新たなサイバー攻撃が登場すれば、従来のセキュリティ対策では不十分になるでしょう。

ソフトウェアやハードウェアを提供する企業は、新たに判明した脅威に対して対策を講じ、パッチ(修正プログラム)を提供します。こうしたアップデートを速やかに適用すれば、新たな脅威からシステムを防御できる可能性が高まります。

 

方法③WAFを活用する

サイバー攻撃の多くは、インターネットを介して外部から行われます。こうした脅威に対処する手段として、WAF(Web Application Firewall)の導入が有効です。WAFは、WebサイトやWebアプリに届く通信を監視し、不正なリクエストを自動で遮断します。そのため、インターネット経由の攻撃リスクを大幅に低減することが可能です。

WAFについては、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。

「セキュリティ対策に有効なWAFとは?仕組みや種類、おすすめ製品を紹介」

 

クラウド型WAFなら「Cloudbric WAF+」がおすすめ

サイバー攻撃の対策として有効なWAFには、ソフトウェアを導入するタイプや、専用機器を設置するタイプがあります。これらは初期費用や維持管理の負担が大きく、中小企業には導入しづらい面も否めません。

より手軽に導入したい場合は、インターネットを通して利用できるクラウド型のWAFがおすすめです。なかでも、おすすめの「Cloudbric WAF+」は、一般的なWAFの基本機能に加え、下記のように多彩な機能を標準で備えています。

 

  • AIを活用した高精度な攻撃検知
  • 最大40Gbpsまで対応するDDoS攻撃対策
  • 無料で自動更新されるSSL証明書の提供
  • 脅威情報に基づくIP・悪性ボットの遮断
  • 専門家による導入・運用サポート

 

セキュリティ強化と運用の手軽さを両立したCloudbric WAF+は、初めてWAFを導入する企業にも適した選択肢といえます。Webサイトやサービスを守るために、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

 

まとめ

サイバー攻撃による被害は国内外で増加しており、企業や組織にとって無視できない脅威となっています。被害を防ぐためには、事例から学びを得ながら適切なセキュリティ対策を実践することが重要です。

脆弱性診断の実施やWAFの活用など、今回紹介した方法を取り入れると安心につながります。特に、クラウド型WAFの導入を検討している企業には、多彩な機能と信頼性の高いサポートを兼ね備えた「Cloudbric WAF+」が有力な選択肢と言えるでしょう。

 

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SQLインジェクションとは? 攻撃の仕組みや被害例、対策方法を解説

 

現代のIT社会では、大量のデータを管理する手段としてデータベースが不可欠です。多くのWebサービスや業務システムでは、商品や顧客の情報をデータベースで扱っています。

一方で、こうしたデータベースを標的としたサイバー攻撃も増えており、代表的な脅威が「SQLインジェクション」です。Webビジネスの拡大に伴い、その危険性はさらに高まっています。

対策には、まずSQLインジェクションの基本を理解することが重要です。本記事では、攻撃の仕組みとあわせて対策方法も解説します。

 

SQLインジェクションとは?

SQLインジェクションとは、データベースを操作するための言語「SQL(Structured Query Language)」を悪用したサイバー攻撃です。攻撃者が悪意のあるSQL文をWebシステムにインジェクション(注入)することで、不正なデータベース操作を図ります。

たとえば、Webサイトの入力フォームや検索ボックスに、不正な操作を行わせるSQL文を入力・送信します。適切なセキュリティ対策が施されていない場合、このSQL文が攻撃者の狙いどおりに実行されてしまい、データの削除や窃取といった被害を招きます。

SQLインジェクションはIT黎明期から存在しますが、現在でも決して過去の脅威ではありません。IPA(情報処理推進機構)によると、2024年における脆弱性(セキュリティ上の弱み)の累計届出件数において、SQLインジェクションは2番目に多く報告されています。

(参照元:IPA「ソフトウェア等の脆弱性関連情報に関する届出状況[2024年第3四半期(7月~9月)]」)

SQLは、世界で最も広く使われているデータベース言語です。そのSQLを扱う多くのWebシステムにとって、SQLインジェクションは決して対岸の火事ではありません。

 

SQLインジェクション攻撃を受けた際のデータベース処理

SQLインジェクション攻撃がどのように成立するのか、その仕組みを通常のデータベース処理と比較しながら見ていきましょう。ここでは、SQL文を交えて手口例を紹介します。

 

通常のデータベース処理

SQLインジェクションの標的となりやすいのは、ユーザーからの入力を直接受け付けるWebサイトの入力欄です。例として、商品を検索するための検索ボックスを考えてみましょう。

多くのECサイトでは、ユーザーが検索ボックスに入力したキーワードを受け取り、それをもとにSQL文を構築して商品データを取得します。たとえば、ユーザーが「Tシャツ」と入力して検索を実行した場合、サーバー側では一例として次のようなSQL文が生成されます。

例文1

このSQL文は、商品テーブル(products)の商品名(name)に「Tシャツ」が含まれるデータを検索し、該当する商品データを取得するものです。

このように、ユーザーが通常のキーワードを入力した際には特に問題は発生しません。入力されたデータに沿ったデータベース処理が行われ、期待どおりの検索結果が表示されます。

 

攻撃を受けた場合のデータベース処理

攻撃者がSQLインジェクション攻撃を図る場合、「Tシャツ」のように単純なキーワードは使いません。SQLにおいて特別な意味を持つ文字や命令文を仕込み、サーバー側で不正なデータベース処理を実行させようとします。これがSQLインジェクション攻撃です。

たとえば、攻撃者が「商品データの削除」を狙う場合、検索ボックスには次のような文字列を入力することが考えられます。

例文2

これは、本来のデータ取得処理(SELECT文)を意図的に中断し、別のデータ削除処理(DELETE文)を実行する構文です。先ほどと同様に、ユーザーの入力をSQL文にそのまま組み込むと、次のようなSQL文が構築されてしまいます。

例文3

このSQL文では、SELECT文の末尾で命令が終了するように記述されており、そのあとにDELETE文が続いています。また、「–」以降はSQLのコメント扱いとなるため処理に影響せず、構文エラーを回避したまま命令が通ってしまう仕組みです。

仮にこのSQL文が攻撃者の狙いどおりに実行されれば、productsテーブル内の全商品データが削除されかねません。適切なセキュリティ対策が施されていないWebサイトでは、たった一行の不正な入力がこうした事態を招く危険性があります

 

SQLインジェクション攻撃で起きる問題

SQLインジェクション攻撃を許すことになれば、Webシステム上でさまざまな問題が発生します。具体的に懸念される問題は、主に次の4つです。

問題①重要な情報が盗まれる

SQLインジェクションが成功すると、攻撃者が他者・他社のデータにアクセスできるため、重要な情報が盗まれる恐れがあります。たとえば、データを取得するSQL文に脆弱性がある場合、攻撃者が不正にデータの取得範囲を書き換えることで、他人の情報までも取得可能です。

その結果、顧客の氏名・住所・連絡先といった個人情報や、業務上の設計資料・契約書といった機密情報が攻撃者の手に渡る危険性があります。こうした情報は、攻撃者本人に悪用されたり、ダークウェブで売買されたりするケースも少なくありません。

 

問題②データが改ざん・削除される

SQLインジェクションが成功すると、攻撃者によってデータベースに保管されたデータが改ざん・削除される恐れがあります。たとえば、攻撃者がデータ更新のSQL文(UPDATE文など)を悪用し、商品データの価格や説明文を不正に書き換えることも可能です。

また先ほどの例のように、データ削除のDELETE文で商品テーブル自体を削除されることも考えられます。Webサイトに表示されるデータが改ざんや削除の対象となれば、Webサイトの見た目は不適切に変わってしまうでしょう。最悪の場合、業務の継続やサービス提供に重大な支障をきたしかねません。

 

問題③システム自体を乗っ取られる

SQLインジェクションの手口によっては、システム自体を乗っ取られる恐れもあります。たとえば、データベースに登録されたユーザーの権限情報が不正に書き換えられることで、攻撃者が管理者権限を取得できてしまうかもしれません。

管理者権限を奪われると、システムの設定を不適切に変更されたり、サーバー内部にバックドア(密かに侵入可能な経路)を仕掛けられたりするリスクも生じます。攻撃者にシステム全体の制御を握られる状態となり、大変危険です。

 

問題④マルウェアに感染させられる

SQLインジェクションを足がかりに、攻撃者がマルウェア(不正なソフトウェア)の拡散を図るケースもあります。たとえば、マルウェアをダウンロードさせるスクリプトをWebページに埋め込まれると、閲覧したユーザーの端末がマルウェアに感染しかねません

また、攻撃者がシステムの乗っ取りに成功した場合には、企業のサーバーを起点としてマルウェアが社内ネットワーク全体に拡散される恐れもあります。こうした攻撃はWebシステムの運営企業だけでなく、一般の訪問者にも被害を広げるため、非常に深刻です。

 

SQLインジェクション攻撃が企業にもたらす被害

SQLインジェクションは、単なるシステム障害にとどまらず、企業経営そのものに大きな被害を及ぼすリスクがあります。ここからは、SQLインジェクション攻撃が企業にもたらす被害例を見ていきましょう。

被害①企業の社会的信用の失墜

SQLインジェクション攻撃によって情報漏えいやWebサイトの改ざんが発生すると、企業の社会的信用は大きく損なわれます。サイバー攻撃を防げなかった事実が明るみに出れば、顧客からは「信頼性の低い企業」という烙印を押され、顧客離れは避けられません。

一度失った信頼は、簡単には取り戻せません。ブランドイメージに傷がつくと、既存顧客の離反に加えて、新規顧客の獲得も難しくなる恐れがあります。被害が報道やSNSを通して広まれば、さらなる評判の低下にもつながるでしょう。

 

被害②損害賠償や金銭的損失

SQLインジェクション攻撃による被害は、直接的・間接的な金銭的損失を企業にもたらします。たとえば、顧客の個人情報が流出した場合、企業に対して損害賠償を求める訴訟が起こされるケースもあります。

また、関係各所への報告・説明対応や再発防止策の検討など、事態の収束までに多大なコストを費やすことになるでしょう。システムの停止による機会損失や、流出した機密情報を悪用されることによる競争力の低下など、目に見えにくい経済的打撃も無視できません。

 

被害③不正行為への関与

SQLインジェクション攻撃によって企業のシステムが乗っ取られると、攻撃者に「踏み台」として悪用されるケースもあります。そうなれば、システムが別のサイバー攻撃に悪用され、結果として意図せず不正行為に関与してしまうでしょう。

たとえば、企業のメールサーバーから大量のスパムメールやフィッシング詐欺メールが送信されてしまうことも考えられます。こうした事態となれば、加害者ではないにもかかわらず、企業が不正行為に関与しているように見なされかねません。

 

SQLインジェクションの技術的な対策

SQLインジェクションに対しては、主に2つの技術的な対策が挙げられます。いずれも、ユーザーからの入力を安全に処理し、不正な命令の実行を防ぐための仕組みです。

対策①プレースホルダを利用する

Webサイトでは、ユーザーが入力・送信した内容を使って、SQL文を構築する場面があります。このとき「プレースホルダ」を使えば、不正な命令の埋め込みを防ぐことが可能です。

プレースホルダとは、SQL文に埋め込むデータの位置を仮の記号(「?」など)で指定し、後から安全にデータを組み込む仕組みです。たとえば、商品検索機能でユーザーがキーワードを入力した場合、プレースホルダを使うと次のようなSQL文になります。

例文4

実際には、プレースホルダ「?」の部分に、ユーザーが入力したキーワードが後から安全にセットされます。このとき、SQLにおける特殊な記号は命令として解釈されず、単なる「文字列」として扱われます。そのため、悪意のある入力によってSQL文が壊されたり、意図しない命令が実行されたりするリスクを抑えられます。

プレースホルダは、データベース処理に使われるライブラリの多くでサポートされています。SQLインジェクションを防ぐ第一歩として、プレースホルダを使える仕組みの導入を検討しましょう。

対策②エスケープ処理を行う

プレースホルダはSQLインジェクション対策として有効ですが、すべての状況で使えるとは限りません。たとえば、文字列の連結によってSQL文を構築しなければならない場合などは、代替手段として「エスケープ処理」を検討する必要があります。

エスケープ処理とは、入力値に含まれる特殊な記号を、SQL文の構文として解釈されないように無害化する処理のことです。たとえば、シングルクォート(’)やセミコロン(;)といった記号は、SQL文では命令の区切りや文字列の終端として扱われます。これらを単なる「文字列」として扱われるよう、適切な形式に変換するのがエスケープ処理です。

プレースホルダの内部でも、入力値を正しく扱うためにエスケープ処理が自動で行われています。エスケープ処理を手軽に実装できるライブラリもあります。プレースホルダを使えない場面では、開発者自身が明示的にエスケープ処理を実装することも検討しましょう。

 

SQLインジェクションを含む脅威への総合的な予防策

SQLインジェクションをはじめとするサイバー攻撃からシステム全体を守るためには、開発段階だけでなく、運用やインフラの面からも予防策を講じることが大切です。ここでは、SQLインジェクションを含む脅威への総合的な予防策を3つ紹介します。

予防策①動作環境をすべて最新状態に保つ

Webサイトや業務システムを安全に運用するためには、動作環境を常に最新の状態に保つことが大切です。

Webシステムは、OSやWebサーバー、データベース管理システムなど、複数の要素で構成されています。こうした要素は、新たな脆弱性が見つかった際にアップデートされることが一般的です。バージョンが古いままだと最新の脆弱性に対応できません。

安全性を保つためには、これらのバージョンを定期的に確認し、必要に応じて速やかにアップデートしましょう。また、Webサイトを構築するために「WordPress」などのCMS(コンテンツ管理システム)を使っている場合は、そのアップデートも不可欠です。

WordPressのセキュリティについて、詳しくは関連記事「WordPressのセキュリティ|脆弱性を狙った攻撃事例や対策」もご覧ください。

 

予防策②脆弱性診断ツールで定期的にチェックする

サイバー攻撃は日々巧妙化し、それに伴い新たな脆弱性も次々と発見されています。開発段階であらゆる脆弱性を完全に排除するのは現実的ではないため、運用中も継続的な確認が欠かせません。そこで、脆弱性診断ツールを活用するのが効果的です。

脆弱性診断ツールは、Webシステムを自動的に検査し、SQLインジェクションをはじめとする脆弱性を洗い出してくれます。診断ツールで検出された脆弱性を速やかに修正することで、攻撃を受ける前にリスクを排除することが可能です。

脆弱性については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。

「脆弱性とは?被害例や攻撃手法、セキュリティ対策方法を紹介」

 

予防策③WAFなどのセキュリティツールを導入する

サイバー攻撃の多くは、インターネットを介して行われます。ネットワーク通信の段階でそれらを検知・遮断するためには、専用のセキュリティツールを導入することが効果的です。なかでも「WAF(Web Application Firewall)」は、Webアプリに対する代表的な防御手段として注目されています。

WAFとは、Webアプリへの通信内容を常時監視し、攻撃を検出・防御するための専用セキュリティツールです。たとえば、ユーザーの入力内容に不正なSQLの命令が含まれている場合、WAFがその異常を見つけ出し、通信がWebサーバーへ届く前に遮断します。

WAFにはソフトウェア型やクラウド型など多くの種類がありますが、最新の脅威に対応しやすい点ではクラウド型がおすすめです。セキュリティ対策の「最後の砦」として、導入を検討するとよいでしょう。

WAFについては、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。

「セキュリティ対策に有効なWAFとは?仕組みや種類、おすすめ製品を紹介」

 

まとめ

SQLインジェクションは、企業のWebシステムに深刻な被害をもたらすサイバー攻撃です。対策が不十分だと情報漏えいやデータの改ざん・削除といった被害を引き起こし、信頼の失墜や金銭的損失につながります。

SQLインジェクション攻撃からWebシステムを守るためには、プレースホルダやエスケープ処理による技術的な対策が不可欠です。また、動作環境の定期的なアップデートや脆弱性診断ツールによる定期的なチェック、WAFの導入といった総合的な対策も欠かせません。

クラウド型WAF「Cloudbric WAF+」は、最新の脅威に対応しながらWebシステムを保護できるセキュリティプラットフォームです。SQLインジェクションを含む幅広い攻撃への備えとして、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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ペネトレーションテストとは?脆弱性診断との違いや目的・方法について解説

サイバー攻撃の手口が高度化・巧妙化する中、自社システムの防御力を客観的に検証する「ペネトレーションテスト」が注目されています。

この記事では、ペネトレーションテストの基本や脆弱性診断との違い、ペネトレーションテストの目的や実施の流れを紹介します。

 

ペネトレーションテストとは

ペネトレーションテスト(侵入テスト)とは、セキュリティの専門家であるホワイトハッカーが、実際のサイバー攻撃を模した侵入を企業のシステムやネットワークに対して試み、セキュリティ上の弱点(脆弱性)を明らかにする検証手法です。情報漏えいや不正アクセスが多発する現代において、潜在的なリスクを事前に洗い出し、攻撃を未然に防ぐための重要な対策として注目されています。

このテストの最大の特徴は、攻撃者と同じ視点でシステムを評価できることです。机上のセキュリティ診断だけでは見つけにくい盲点や想定外の侵入経路を把握でき、実際の被害につながる前に優先度の高い対策を講じられます。テストの結果は詳細なレポートとして提供され、発見された脆弱性の内容や利用された攻撃手法、修正の優先度、具体的な改善策が提示されるため、実践的なセキュリティ強化に役立ちます。

ペネトレーションテストには、社外からの攻撃を想定した「外部侵入テスト」と、内部ネットワークや社員アカウントの不正利用を想定した「内部侵入テスト」があり、システム導入時や大規模アップデート、クラウド環境への移行時など、セキュリティリスクが増大しやすいタイミングで実施することが効果的です。

ペネトレーションテストと脆弱性診断の違い

ペネトレーションテストとよく似ているサービスに「脆弱性診断」があります。ペネトレーションテストと脆弱性診断の違いは、下表のとおりです。

 

項目 ペネトレーションテスト 脆弱性診断
主な目的 実際の攻撃を模倣して侵入可能性を検証 セキュリティの弱点を網羅的に検出
アプローチ 専門家が攻撃者視点で実演 自動・手動ツールでチェック中心
対象範囲 特定の経路や攻撃シナリオ(限定的) システムやアプリ全体(広範囲)
実施タイミング 高度な防御検証が必要な局面 システム更新時や定期チェックなど
向いている企業 金融・医療・重要インフラ、PCI DSS対象企業等 Webサービス運営企業、取引先の要求対応等
報告内容 攻撃手法・被害範囲・リスク分析 脆弱性リストと推奨対応策
実施者 セキュリティ専門家 ツール+診断者
難易度・コスト 高め(専門性が必要) 中程度(比較的導入しやすい)

 

ペネトレーションテストは、実際に攻撃を試みてシステムへの侵入可否や影響範囲を検証する実践的な手法です。一方、脆弱性診断はツールやチェックリストで既知の脆弱性を洗い出す調査的手法であり、必ずしも侵入は行いません。

それぞれ目的や手法、対象範囲に違いがあり、自社のセキュリティ課題や予算、求められる精度に応じて使い分けることが重要です。両者を適切に使い分けることで、より強固なセキュリティ体制の構築につながります。

Cloudbricでは、既知・未知の脅威に備えるセキュリティ診断サービス「Cloudbric 脆弱性診断」を提供しています。詳細は下記リンクを参照ください。

Cloudbric 脆弱性診断

 

ペネトレーションテストの種類

ペネトレーションテストは、調査対象によって2つのテスト方法があります。ここでは、それぞれの内容について紹介します。

 

①内部ペネトレーションテスト

内部ペネトレーションテストとは、企業の社内ネットワーク内にあるシステムに対して行うセキュリティ検証のことです。主な対象は、アプリケーションサーバー、認証サーバー、データベースサーバーなど、内部で重要な役割を果たすシステムです。

外部からの直接アクセスが難しいシステムであっても、社内の不正利用や、すでに侵入に成功した攻撃者によって悪用されるリスクは完全には排除できません。内部ペネトレーションテストは、こうした内部からの脅威を想定し、侵入後に発生し得る被害の範囲や影響を事前に把握し、被害を最小限に抑えるために実施されます。

②外部ペネトレーションテスト

外部ペネトレーションテストとは、インターネットからアクセス可能な公開サーバーやWebアプリケーション、ネットワーク機器などを対象に実施するセキュリティ検証です。実際に外部から攻撃を受けた場合に、どの程度侵入が可能かを確認し、システムの脆弱性や攻撃リスクを洗い出します。

テストでは、セキュリティの専門技術者が実際にネットワーク越しに侵入を試み、既知の脆弱性の有無や、ファイアウォール・侵入検知システムの突破可能性などを調査します。例えば、標的型メールを用いた擬似的なマルウェア送信、ZIPファイル偽装による従業員の反応確認など、現実に近い攻撃シナリオを再現し、組織の防御体制を実践的に検証できます。

外部ペネトレーションテストは、サーバーやWebサイトだけでなく、VPN機器、リモートアクセス環境、クラウドサービスなども対象となります。

 

ペネトレーションテストの手法

ペネトレーションテストの実施方法の代表例がホワイトボックステストブラックボックステストです。それぞれ事前に得られる情報量や攻撃シナリオが異なり、目的や状況に応じて使い分けられます。

①ホワイトボックステスト

ホワイトボックステストは、テスト対象のシステム構成、ソースコード、設定情報などを事前に提供されたうえで行う手法です。内部構造を把握しているため、網羅的かつ効率的に脆弱性を発見できます。特に認証の仕組みやアクセス制御、ビジネスロジックの欠陥など、外部からでは見えにくい問題の洗い出しに適しています。一方で、事前情報を活用するため、実際の攻撃者が未知の状態から侵入を試みる状況とは異なる点に留意が必要です。

②ブラックボックステスト

ブラックボックステストは、攻撃対象に関する事前情報をほとんど持たず、外部からの攻撃者視点で実施する手法です。公開情報やオープンなサービスを起点に侵入経路を探るため、実際のサイバー攻撃に近いシナリオで脆弱性を検証できます。情報収集から侵入、権限昇格、データ抽出までの一連の流れを確認できるため、外部からの防御力評価に有効です。ただし、情報不足によりテスト範囲が限定され、内部の深部まで検証できない場合もあります。

 

ペネトレーションテストの目的

ペネトレーションテストの様子

ペネトレーションテストを実施する目的を4つ紹介します。

 

目的①システムのセキュリティ対策の強度を評価する

ペネトレーションテストの主な目的は、システムが備えているセキュリティ対策が実際のサイバー攻撃に対してどの程度有効に機能するかを評価し、防御力を可視化することです。

テストでは、ファイアウォール、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)、IDS(侵入検知システム)、IPS(侵入防御システム)などの防御機構に対し、実際の攻撃を模した手法を用いて侵入を試みます。その結果、どの程度攻撃を防げるかが実例や数値で明確になり、経営層やIT部門がセキュリティ強化の優先度を判断する材料になります。

さらに、書類上のチェックや設定確認だけでは見落とされやすい運用面の盲点や、人為的ミスによるセキュリティリスクも浮き彫りになります。これにより、単なる理論上の対策ではなく、現場で実効性のあるセキュリティ強化策を立案することが可能です。

目的②脆弱性を発見する

ペネトレーションテストは、実際のサイバー攻撃手法を模倣することで、システム内部に潜む脆弱性を洗い出すセキュリティ検証手法です。複数の脆弱性を連鎖的に利用した高度な攻撃も再現できるため、一般的なセキュリティ診断では見つけにくい侵入経路の特定に役立ちます。

例えば、Webアプリケーションの設定ミスやネットワーク構成上の隙が攻撃者に悪用されると、認証情報が盗まれたり、通常ではアクセスできない管理者権限が奪われたりする可能性があります。このような重大なリスクを事前に明らかにすることで、実際の攻撃が行われる前に対策を講じることができます。

さらに、ペネトレーションテストでは、攻撃後にどの範囲まで侵入が可能か、どのような経路でデータが不正取得されるかまで詳細に確認できるため、被害発生時の影響範囲を正確に把握できます。テスト結果は、システムの設計やアクセス権限の見直し、パッチ適用など、実践的かつ優先度の高いセキュリティ対策の策定に活用できます。

サイバー攻撃手法は日々進化しており、従来の脆弱性診断ツールだけでは対応しきれない新たな攻撃経路が生まれています。そのため、ペネトレーションテストを定期的に実施し、最新の攻撃パターンを想定した評価を行うことが、システム全体の防御力を高めるうえで重要です。

目的③想定される被害レベルを把握する

ペネトレーションテストを実施することで、万が一攻撃が成功した場合にどの程度の被害が発生するのか、その規模や影響範囲を具体的に把握できます。単に脆弱性が存在するかどうかを確認するだけでなく、情報漏えい、システムの停止、データ改ざん、サービスの長期ダウンなど、実際に起こり得るリスクを可視化できるため、経営層や関係部門にも現実的な危機感を伝えやすくなります。

また、攻撃者が一度侵入に成功した後、社内ネットワーク内でどの程度影響を拡大できるのか(横展開)の評価も可能です。これにより、最初の侵入だけでなく、被害がどこまで拡大し得るかを把握でき、優先度の高い防御策や侵入拡大を防ぐセキュリティ対策を検討する際の判断材料となります。

さらに、この結果はリスク管理やBCP(事業継続計画)の見直しにも有効活用できます。被害想定が具体化されることで、サイバー攻撃を受けた際の影響度を定量的に評価でき、事前に復旧手順や代替手段を整備するなど、被害を最小限に抑える体制を構築できます。

近年は、サプライチェーン攻撃やランサムウェアの被害が拡大しており、外部侵入後の横展開による被害が深刻化しています。そのため、ペネトレーションテストによって侵入後の動きを再現し、実際の攻撃シナリオを想定した防御力評価を行うことは、企業のサイバーセキュリティ強化に欠かせない取り組みとなっています。

目的④セキュリティ対策の強化ポイントを明確にする

ペネトレーションテストの結果は、システム全体のセキュリティ対策をどの部分から優先的に強化すべきかを判断する上で非常に有効です。テストによって発見された侵入経路や脆弱性は、深刻度や攻撃される可能性の高低によって優先度をつけられるため、限られた予算や人員を効率よく配分し、効果的なセキュリティ対策を講じることができます。

報告書には、検出された脆弱性の詳細や攻撃に利用される可能性がある手法だけでなく、具体的な改善策や運用上の見落としやすいポイントも記載されます。これにより、IT部門やセキュリティ担当者だけでなく、経営層とも課題を共有しやすくなり、組織全体でセキュリティリスクに対応できる体制を整えることが可能です。

さらに、報告書をもとに改善策を実行し、再度ペネトレーションテストを行うことで、対策が有効に機能しているかを検証でき、セキュリティレベルを段階的に向上させることができます。こうしたプロセスは、サイバー攻撃手法の進化に対応するうえでも重要であり、継続的なセキュリティ強化の一環として活用されています。

 

ペネトレーションテストのステップ

ここまでペネトレーションテストについて紹介してきましたが、実際はどのような手順で行うとよいのでしょうか。3つのステップに分けて紹介します。

 

ステップ①シナリオの作成

ペネトレーションテストを実施する際には、まず実際のハッカーが仕掛ける可能性のある攻撃を想定し、テスト用のシナリオを作成します。対象となるシステムの構成や利用環境、過去のインシデント事例などを踏まえて、現実的で再現性の高い攻撃手法を選定することが重要です。

例えば、Webアプリケーションに対してはSQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)、ネットワーク機器に対してはポートスキャンや脆弱性を突く侵入試行など、システム特性に応じた複数の攻撃手法が検討されます。

すべての攻撃パターンを網羅する包括的なアプローチもありますが、テスト範囲が広くなる分、準備や実施にかかる時間やコストが増大するのが課題です。そのため、テストの目的や想定するリスクをあらかじめ明確にし、攻撃シナリオを絞り込むことで、限られたリソースの中でも効率的かつ効果的なペネトレーションテストを行うことができます。

さらに、攻撃シナリオの設計段階で事前に経営層やIT部門と連携し、優先的に評価すべき領域を決定することで、ビジネス影響度の高い脆弱性を重点的に洗い出せます。これにより、テスト結果を実際のセキュリティ強化計画に直結させやすくなります。

SQLインジェクションについては、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。

「SQLインジェクションとは? 攻撃の仕組みや被害例、対策方法を解説」

ステップ②ペネトレーションテストの実施

作成した攻撃シナリオに基づいて、ペネトレーションテストを実施します。テストには、自動化ツールを使って大量の脆弱性を効率的に検出する方法と、専門知識を持つセキュリティ技術者が手動で攻撃を再現し、より精密な診断を行う方法があります。実際には両方を組み合わせて実施されることが多く、幅広い攻撃パターンを検証できます。

ただし、使用するツールの性能や精度、テストを担当する技術者のスキルや経験によって、発見できる脆弱性やテスト結果の質には差が出る場合があります。そのため、外部のセキュリティベンダーに依頼する際には、過去の実績、提供されるレポートの内容、インシデント発生時のサポート体制などを事前に確認し、信頼性の高いパートナーを選定することが重要です。

さらに、テスト実施時には、対象システムへの影響やサービス停止リスクを最小限に抑えるため、事前にスケジュールや範囲を明確化し、必要に応じてバックアップや復旧手順を準備しておくことが望まれます。これにより、安全かつ効果的にペネトレーションテストを行い、実際のセキュリティ強化につなげることができます。

ステップ③結果報告の受領

ペネトレーションテストを実施した後は、テスト結果の受領と分析を行います。外部のセキュリティベンダーに委託した場合は、レポートの提出や報告会を通じて結果が共有され、検出された脆弱性の内容や攻撃手法、リスクの深刻度、推奨される改善策が提示されるのが一般的です。一方、自社でテストを実施した場合は、得られたデータを整理し、侵入経路や問題点を明確化して社内共有します。

重要なのは、結果を確認するだけで終わらせず、そこから実際のセキュリティ改善につなげることです。検出された脆弱性の深刻度や影響範囲を評価し、優先順位をつけて対応策を検討・実行することで、効率的かつ効果的な防御力の向上が可能になります。

また、改善策を実施した後には、再度ペネトレーションテストやセキュリティ診断を行い、対策が有効に機能しているかを検証することが推奨されます。これにより、同じ脆弱性の再発防止や、新たな攻撃手法への対応力強化につなげられ、継続的にセキュリティレベルを高めることができます。

ペネトレーションテストに関するよくある質問とその回答

Q:テスト頻度は?

A:ペネトレーションテストは、年1回程度の定期実施が推奨されます。加えて、大規模なシステム改修や新機能追加の際にも行うことで、新たな脆弱性を早期に発見できます。


Q:システムの稼働に影響はある?

A:通常は稼働への影響を最小限に抑えて実施しますが、侵入試験の性質上、一部のサービスに遅延や一時的停止が発生する場合があります。事前に影響範囲を調整することが重要です。


Q:ペネトレーションテストを実施するタイミングは?

A:本番稼働前や重要アップデート後が適しています。特に外部公開前に行うことで、公開時のリスクを大幅に低減できます。


Q:ペネトレーションテストを行うのに必要なものは?

A:テスト環境や対象範囲の情報、アクセス権限、契約書などが必要です。外部委託の場合は秘密保持契約(NDA)の締結も欠かせません。


Q:ペネトレーションテストは違法ではない?

A:正規の契約と許可のもとで実施される限り合法です。無断で行う侵入行為は不正アクセス禁止法に抵触するため、必ず合意を得てから行います。

 

まとめ

ペネトレーションテストは、実際のサイバー攻撃を想定して脆弱性を洗い出し、被害リスクや優先的な対策ポイントを明確にできる有効なセキュリティ手法です。特にクラウド環境の利用が進む今、外部・内部両面からの防御体制を整えることが求められています。

情報漏えいやサービス停止といった重大なリスクを未然に防ぐためにも、自社システムの安全性を定期的に確認し、必要に応じてペネトレーションテストの導入を検討してみましょう。

 

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vulnerability

脆弱性とは?被害例や攻撃手法、セキュリティ対策方法を紹介

IT社会のビジネスにおいて、Webサイトや業務システムは欠かせない存在です。一方、これらを狙ったサイバー攻撃も増えており、セキュリティ対策の重要性はますます高まっています。こうした変化に直面する企業にとって、特に注視すべき課題が「脆弱性」です。

自社の業務システムやWebサイトを脅威から守るためには、まず脆弱性の基本を理解することが不可欠です。本記事では、脆弱性の意味や被害例、有効なセキュリティ対策について解説します。セキュリティに不安を抱える企業の方は、ぜひ参考にしてください。

 

脆弱性とは

ITやセキュリティの分野では「脆弱性」「バグ」「セキュリティホール」といった似た言葉がよく使われます。これらの違いを正しくご存じでしょうか。まずは脆弱性の意味、そして関連する言葉との違いについて整理しましょう。

 

脆弱性の意味

脆弱性(Vulnerability)とは、ソフトウェアやハードウェアが内部的に抱えるセキュリティ上の弱点を指します。サイバー攻撃者による悪意的な行為の起点となりうるリスクです。

たとえば、ソフトウェア内部でユーザーからの入力データを適切に検証していないとします。この場合、不正な入力データをシステム側で不用意に処理し、予期せぬシステム障害を起こしかねません。この「入力データを適切に検証していない」という部分が脆弱性です。

脆弱性の多くは、設計の考慮不足やコーディングのケアレスミスなど、開発段階の落ち度による「内部要因の脆弱性」です。一方、開発者が十分に配慮していたとしても、新たな攻撃手法の出現によって結果的に生じる「外部要因の脆弱性」もあります。

そのため、脆弱性については常に最新のセキュリティ事情を把握し、対策をアップデートしていくことが大切です。

 

バグやセキュリティホールとの違い

脆弱性と似た言葉に「バグ」や「セキュリティホール」があります。それぞれの違いを整理しておきましょう。

バグ(Bug)とは、ソフトウェアやハードウェアに予期せぬ動作を引き起こす欠陥のことです。コンピューターに虫(バグ)が入り、正常に動作しなくなることに由来します。バグは基本的に開発者側の落ち度であり、開発段階で修正されるべきものです。

セキュリティホール(Security Hole)とは、システムが抱えるセキュリティ上の抜け穴を指します。攻撃者はこの抜け穴を利用して不正行為を図ります。セキュリティホールは、脆弱性とほぼ同義と考えて問題ありません。

ただし、技術的な問題に焦点を当てる場合は「セキュリティホール」、より広い意味でセキュリティ上の弱点を指す場合は「脆弱性」が使われることが多いです。

 

脆弱性が引き起こす問題

脆弱性を放置しておくと、企業や個人にさまざまな被害をもたらす恐れがあります。ここでは、脆弱性が引き起こす代表的な4つの問題について見ていきましょう。

 

問題①情報漏えい

脆弱性が悪用されると、ユーザーの個人情報や顧客・自社の機密情報が漏えいする恐れがあります。たとえば「SQLインジェクション」の脆弱性を突かれると、システムのデータベースに保管されたデータを不正に取得されてしまいます。

攻撃者の手に渡ったデータが外部に公開されれば、企業の信頼を損なうだけでなく、ユーザーや顧客にも迷惑をかけかねません。

 

問題②システム障害

脆弱性が悪用されると、システム障害によりWebサイトやサービスが停止する恐れがあります。たとえば「DoS攻撃」の脆弱性を突かれると、攻撃者から送られる大量のリクエストを処理しきれず、サーバーがダウンしてしまいかねません。

システム障害が発生すれば、自社業務の停滞やユーザー満足度の低下、企業の信頼低下につながります。

 

問題③マルウェアの感染

脆弱性が悪用されると、マルウェア(悪意あるソフトウェア)に感染する恐れがあります。たとえば「XSS(クロスサイトスクリプティング)」の脆弱性を突かれると、Webサイトに不正なコードが埋め込まれ、ユーザーの端末で実行されかねません。

また、システム内部に侵入した攻撃者がマルウェアを拡散させるケースもあります。マルウェアはデータの破壊や情報の窃取など、さまざまな被害を引き起こすでしょう。

 

問題④システムの乗っ取り

脆弱性を悪用されると、システム自体が乗っ取られることもあります。たとえば、前述のSQLインジェクションで管理者の認証状態が盗まれた場合、攻撃者はシステム内部で重要な操作を行うことが可能です。

結果として、システム障害や不正メールの拡散、データ改ざんなど、多岐にわたる不正行為が発生する恐れがあります。

 

ITシステム・サービスに潜む脆弱性5選

Webサイトやシステムには、さまざまな種類の脆弱性が潜んでいます。脆弱性に対処するにあたって、どのような脆弱性があるのかを把握することが前提として欠かせません。

ここでは、代表的な5つの脆弱性と、それを悪用するサイバー攻撃を簡単に紹介します。

 

脆弱性①入出力のチェック不足

入出力のチェック不足は、代表的な脆弱性のひとつです。ユーザーから入力されるデータや、システム側が出力するデータの妥当性を十分チェックしていない場合、脆弱性が生じます

具体例として、ユーザー入力をもとにデータベース操作のSQL文を組み立てるケースがあります。入力データにSQLで特殊な意味を持つ記号(;や–など)が含まれていると、意図しないデータベース操作が実行されかねません。

この脆弱性を防ぐためには、入出力データを検証し、不正な文字列は無害化するか処理を中止することが大切です。入出力のチェック不足を突いた代表的なサイバー攻撃は、下表のとおりです。

 

サイバー攻撃名

攻撃手法

SQLインジェクション データベース操作に使われるSQLに不正なコードを紛れ込ませ、システムに不正なデータ処理を行わせる。
XSS(クロスサイトスクリプティング) Webページに悪意のあるスクリプトを埋め込み、訪問者のブラウザ上で不正なコードを実行させる。
OSコマンドインジェクション WindowsやmacOSといったOS上で実行されるコマンドに不正な文字列を紛れ込ませ、サーバー側で不正なファイル操作などを実行させる。

 

脆弱性②認証・認可の不備

認証・認可の不備は、ユーザーの本人確認やアクセス権限の管理にまつわるミスや考慮不足によって生じる脆弱性です。たとえば、ログイン時に認証情報が適切に暗号化されていない、重要なデータや操作が適切に制限されていない、などが挙げられます。

認証・認可に不備があると、攻撃者の不正ログインや重要データ・操作の不正利用を許してしまいます。この脆弱性を防ぐためには、認証や暗号化のルールを厳格化し、ユーザーのアクセス権限を最小限に制限する対策が必要です。

認証・認可の不備を突いた代表的なサイバー攻撃は、下表のとおりです。

 

サイバー攻撃名

攻撃手法

ブルートフォース攻撃 パスワードなどの入力を総当たりで試み、力ずくで不正なログインを図る。
強制ブラウジング ブラウザのアドレスバーに直接URLを入力し、許可されていないWebページやデータへのアクセスを図る。
セッションハイジャック ログイン状態を維持する情報(セッションID)を盗み、正規ユーザーになりすます。

 

脆弱性③不適切なセッション管理

「セッション」とは、ユーザーとのやり取りをサーバー側で管理する仕組みです。一般的に、ログイン状態などはセッションで管理されますが、取り扱いが適切でないと脆弱性が生じます

たとえば、セッションIDが推測されやすい文字列だったり、ブラウザへの保存方法に問題があったりすると危険です。他人のセッションを悪用する、自分が用意したセッションを利用させる、といった不正操作が行われやすくなります。

この脆弱性を防ぐためには、セッションの管理方法を見直し、安全な運用を徹底することが求められます。不適切なセッション管理を突いた代表的なサイバー攻撃は、下表のとおりです。

 

サイバー攻撃名

攻撃手法

セッションハイジャック ログイン状態を維持する情報(セッションID)を盗み、正規ユーザーになりすます。
セッション固定攻撃 攻撃者が用意したセッションIDでユーザーにログインさせた後に、攻撃者がそのセッションIDを悪用して正規ユーザーになりすます。
CSRF(クロスサイトリクエストフォージェリ) ユーザーがログイン中のセッションを悪用し、正規のWebサイトにユーザーが意図しないリクエストを送信させる。Webサイトは正当なリクエストと誤認し、不正な送金や取引を行ってしまう。

 

脆弱性④セキュリティ設定の不備

セキュリティ設定の不備は、システム内部のソフトウェアやハードウェアに対する設定の不足やミスによって生じる脆弱性です。不要な機能が有効状態のまま、適切なフィルタリング設定が行われていない、パスワードが初期設定のまま、など多岐にわたります。

この脆弱性を防ぐためには、導入したツールや機器の設定を見直すことが欠かせません。セキュリティ設定の不備を突いた代表的なサイバー攻撃は、下表のとおりです。

 

サイバー攻撃名

攻撃手法

ディレクトリトラバーサル サーバーに対して不正な文字列を送り、本来アクセスできないファイルの閲覧を図る。アクセス権限や入力処理の設定が不十分だと成功しやすい。
DoS攻撃 大量のデータやリクエストを送りつけ、サーバーを過負荷状態にしてサービスの稼働を妨害する。過剰なアクセスを検知・防御する設定が不十分だと成功しやすい。

 

脆弱性⑤古い技術やツールの使用

システム内部で古い技術やツールを使用することでも脆弱性が生じます。たとえば、セキュリティ強度が低いライブラリでデータを暗号化している、脆弱性のあるOSやデータベースを更新していない、といった場合は危険です。

技術やツールをアップデートしないと、既知の脆弱性が放置されたままになり、攻撃者にとって格好の標的となります。この脆弱性を防ぐためには、システムを構成するすべての要素を定期的に見直し、最新の状態に保つことが大切です。

 

脆弱性への対応策

脆弱性への対策は、Webサイトや業務システムを守るために不可欠です。技術的な対策だけでなく、組織的な取り組みも求められます。ここでは、脆弱性への主な対策方法を4つ紹介します。

対応策①脆弱性診断の実施

自社のWebサイトやシステムにどのような脆弱性が潜んでいるのかを把握するためには、専門のツールやサービスを使った脆弱性診断が効果的です。プログラムや設定ファイルなどの不備をチェックしたり、擬似的なサイバー攻撃を仕掛けて挙動をチェックしたりします。

セキュリティの専門家による信頼性が高い手動診断、ツールによる機械的・効率的な自動診断があります。自社の予算やニーズに合わせて脆弱性診断を取り入れると良いでしょう。

 

対応策②定期的なアップデート

前述のとおり、古い技術やツールをそのまま使い続けるのはセキュリティ上好ましくありません。脆弱性の多くは、既知の欠陥が修正されないまま放置されることで発生します。

こうした脆弱性を抱え込まないためにも、システムを構成するOSやソフトウェア、ライブラリなどを定期的にアップデートしましょう。システムを最新の状態に保つことで、既知の脆弱性を解消し、サイバー攻撃のリスクを低減することが可能です。

 

対応策③セキュリティ教育と社内ルール整備

技術的な対策だけでなく、従業員のセキュリティ意識向上や社内のセキュリティ基盤構築も欠かせません。システムやツールの運用が不適切だと、そこからサイバー攻撃を許すリスクが生じます。

ツールの安全な使い方や不審なメールへの注意喚起など、従業員に対するセキュリティ教育を実施しましょう。また、パスワードの管理方法や情報の取り扱いに関するルールを社内で整備し、組織全体で共有することも大切です。

 

対応策④WAFなどセキュリティ製品の導入

Webサイトをより強固に守るためには、セキュリティ製品の導入が有効です。

特にWAF(Web Application Firewall)は、インターネットを介したサイバー攻撃のリスクを大幅に低減できます。Webアプリの通信を監視し、不正なアクセスや攻撃を自動的に検知してブロックしてくれます。

 

まとめ

Webサイトやシステムには、さまざまな脆弱性が潜んでいます。脆弱性を放置すると、情報漏えいやシステム障害、マルウェア感染、システム乗っ取りといった被害につながる恐れがあります。

脆弱性を防ぐためには、基本を理解し、適切なセキュリティ対策を講じることが欠かせません。特に、インターネットを介したサイバー攻撃への対策として、WAFの導入が効果的です。

なかでも、クラウド型WAF「Cloudbric WAF+」は、最新の脅威に対応しながらWebシステムを保護するセキュリティプラットフォームです。SQLインジェクションやXSSなど、幅広い攻撃への備えとして、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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waf

セキュリティ対策に有効なWAFとは?仕組みや種類、おすすめ製品を紹介

インターネットを通して世界とつながるWebアプリやWebサイトは、日々多くの脅威にさらされています。Webアプリがサイバー攻撃を受ければ、情報漏えいやシステム障害など、さまざまな被害が懸念されます。こうした問題の対策に欠かせないのが「WAF」です。

本記事では、Webセキュリティの基盤となっているWAFとは何か、基本から解説します。Webアプリのセキュリティに不安を抱えている方は、ぜひ参考にしてください。

 

セキュリティ対策において重要なWAFとは

WAF(Web Application Firewall)とは、インターネットを通して行われるサイバー攻撃からWebアプリやWebサイトを守るツールです。ソフトウェアや専用機器、クラウドサービスなど、さまざまな形態で提供されています。

WAFの役割は、インターネットとWebサーバーの間に入り、不審な通信が内部に届かないよう監視することです。不正なリクエストを検知すると遮断し、機密情報の窃取やシステム改ざんといった被害を防ぎます。

通常のファイアウォールは、通信のIPアドレスやポート番号をもとにアクセスを制限します。一方、WAFはWebアプリ特有の攻撃を包括的に防御するのが特徴です。

近年、オンラインでの取引が拡大するにつれて、WAFの重要性はますます高まっています。情報を扱うあらゆる組織にとって、WAFは欠かせないセキュリティ対策のひとつです。

 

WAFによるセキュリティ対策の方式

WAFは、あらかじめ定義された攻撃パターンや信頼できる通信ルールと、実際に届いたリクエストを照合し、安全かどうかを判断する仕組みです。不正と判定された通信は遮断し、正常と判断されたものだけを通過させます。

この照合方法には、主に「ブラックリスト方式」「ホワイトリスト方式」の2種類があります。それぞれの概要について見ていきましょう。

 

①ブラックリスト方式

「ブラックリスト方式」は、既知の攻撃パターンをあらかじめブラックリストに登録しておき、それに一致する通信を遮断する仕組みです。たとえば、不正なスクリプトの埋め込みを図る文字列を登録することで、同様の文字列を含むリクエストを遮断できます。

過去の脅威から得た知見を活用し、広範なサイバー攻撃を防御できるのが強みです。ただし、未知の攻撃や巧妙にパターンを回避する攻撃には対応しづらい弱点もあります。安全性を高めるためには、シグネチャー(攻撃パターンを定義したデータ)を常にアップデートしていくことが大切です。

 

②ホワイトリスト方式

「ホワイトリスト方式」は、あらかじめ信頼できる通信パターンをホワイトリストに登録しておき、それに一致する通信のみを許可する仕組みです。ホワイトリストに登録していない通信は、悪意や危険性がない場合でも遮断されます。

想定外のリクエストはすべて遮断されるため、未知の攻撃に強いのが強みです。一方で、問題がないリクエストを遮断してしまい、通常の業務に支障が出るケースもあります。そのため、仕様や状況の変化にあわせてホワイトリストをアップデートしていくことが大切です。

 

WAFによって防御できるセキュリティリスク

WAFを導入することで、さまざまな脅威からWebアプリやWebサイトを保護できます。ここからは、WAFによって防御できる主なセキュリティリスクについて見ていきましょう。

 

リスク①SQLインジェクション

SQLインジェクションは、Webサイトの入力フォームなどにデータベース操作の命令文(SQL)を注入し、不正なデータベース操作を図る攻撃です。たとえば、データベースのテーブルを削除する命令を送り、システムの稼働を妨害する手口があります。

ほかにも、パスワード認証をすり抜けての不正ログインや、機密情報の不正取得を図る手口も少なくありません。SQLインジェクションの成功を許せば、情報漏えいやシステム乗っ取りなど、さまざまな被害が懸念されます。

WAFを導入すれば、不正なSQLの命令文が含まれる通信を検知・遮断できるため、SQLインジェクションを防止できます。

SQLインジェクションについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。

「SQLインジェクションとは? 攻撃の仕組みや被害例、対策方法を解説」

 

リスク②XSS(クロスサイトスクリプティング)

「XSS(クロスサイトスクリプティング)」は、Webアプリに不正なスクリプトを埋め込み、訪問者のブラウザで実行させる攻撃です。たとえば、コメント欄に悪意あるスクリプトを挿入し、そのコメントを閲覧したユーザーの個人情報を盗み出す手口があります。

XSSが成功すると、ログイン状態を乗っ取られるなど、Webアプリの利用者に深刻な被害が及びます。ユーザーの安全性やWebアプリの信頼性を守るためにも、阻止すべき脅威です。

WAFを導入すれば、通信に含まれる不正なスクリプトを検知・遮断できるため、XSSによる被害を防止できます。

XSSについては、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。

「クロスサイトスクリプティング(XSS)攻撃からWebサイトを守るWAF対策」

 

リスク③DDoS攻撃

「DDoS攻撃」は、大量のデータやリクエストをWebアプリに送り付け、正常な稼働を妨害する攻撃です。サーバーが処理能力を超えると、正規のユーザーもアクセスできなくなります。攻撃に対処できなければ、サービス停止や業務への影響、企業の信頼低下などを招きかねません。

WAFを導入すれば、過剰な回数やデータ量のリクエストを検知・遮断できます。結果として、DDoS攻撃の被害を抑え、システム障害のリスク低減につながります。

DDos攻撃については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。

「DDoS攻撃の種類と企業がとるべき有効な対策とは?」

 

リスク④ディレクトリトラバーサル

「ディレクトリトラバーサル」は、サーバー上のファイルやフォルダを参照するための不正なパス情報を送り、内部データへの不正アクセスを図る攻撃です。ファイルやフォルダへのアクセス権限が適切に制御されていない場合、機密情報の漏えいにつながります。

WAFを導入すれば、リクエストのパス情報を解析し、不正アクセスを狙った通信を検知・遮断できます。結果として、ディレクトリトラバーサルを防止することが可能です。

 

WAFを導入すべき理由

WAFの導入は、WebアプリやWebサイトを扱う全てのビジネスにおいて効果的な施策です。ここでは、WAFを導入すべき重要な理由を2つの観点から解説します。

 

理由①サイバー攻撃から自社サイトを守るため

インターネットの普及にともない、WebアプリやWebサイトを狙ったサイバー攻撃は年々増加しています。増え続けるサイバー攻撃から自社のWebサイトを守るうえで、WAFは重要な防御策です。

総務省「令和6年版 情報通信白書」によると、サイバー攻撃観測網「NICTER」が観測した2023年のサイバー攻撃に関するパケット数は、約6,197億パケットにものぼります。これは2015年の約10倍近くであり、過去最高の観測数を記録しました。

(出典:総務省|令和6年版 情報通信白書|サイバーセキュリティ上の脅威の増大

これだけの通信がインターネットを通して行われている現状では、その矛先が自社のWebサイトへ向いたとしても不思議ではありません。こうした現状を踏まえ、WebサイトやWebアプリの安全を確保するために、WAFの導入を積極的に検討することが求められます。

 

理由②企業のコンプライアンス遵守のため

WAFを導入することは、企業のコンプライアンス遵守と信頼性向上にも直結します。

企業のブランドイメージや信頼性を守るためには、情報漏えいや不正アクセスといったセキュリティリスクへの対策が欠かせません。特に個人情報を扱う企業では、プライバシーマークやISO27001などの認証取得や、個人情報保護法の遵守が求められます。

こうしたリスクや要件に対処し、適切なセキュリティ対策を実施している姿勢を示すことで、企業は社会的な評価を高められるでしょう。Webサイトの安全性を確保するWAFは、Webセキュリティの基本であり、外部からの攻撃を防ぐうえで欠かせない存在です。

 

WAFの種類

WAFは、主に3つの種類に分けられます。ここからは、それぞれの特徴やメリット・デメリットを見ていきましょう。

 

①ソフトウェア型WAF

「ソフトウェア型WAF」は、Webサーバーにインストールして利用するタイプのWAFです。ハードウェアの導入が不要な分、コストを抑えて導入しやすいといえます。

ただし、Webサーバー上でWAFを動作させるため、Webサーバーに負荷をかけやすいのが難点です。また、運用・管理は自社で行う必要があるため、専門知識が要求されます。

 

②ハードウェア型WAF(アプライアンス型WAF)

「ハードウェア型WAF(アプライアンス型WAF)」は、WAF機能を持つ専用機器を設置して利用するタイプのWAFです。高性能で安定した処理を行えるため、大規模なWebサイトや企業システムで広く採用されています。

ただし、機器の購入や設置スペースが必要になる分、導入コストが高めです。また、ソフトウェア型WAFと同様に、専門知識が求められます。

 

③クラウド型WAF(サービス型WAF)

「クラウド型WAF(サービス型WAF)」は、インターネット経由でサービスとして利用するタイプのWAFです。自社で機器を設置したり、ソフトウェアをインストールしたりする必要がありません。

サービス提供元のサーバーを経由して通信を監視・防御するため、手軽に導入できます。ただし、WAFの機能や性能はサービスによって変わるため、自社にとって最適なサービス選びが欠かせません。

 

クラウド型WAFがおすすめな理由

「どの種類のWAFを選べばよいかわからない」という方には、クラウド型WAFがおすすめです。ここからは、クラウド型WAFがおすすめな3つの理由を紹介します。

 

理由①低コストで運用できる

クラウド型WAFは、専用機器の設置やソフトウェアの導入が必要ないため、低コストで導入・運用できます。月額や年額の料金を支払うサブスクリプション方式のサービスが多く、月額数万円程度で導入可能です。大規模なセットアップのために初期コストが高額になる心配もありません。コストを抑えてセキュリティ対策を導入したい企業に適しています。

 

理由②専門知識がなくても利用しやすい

クラウド型WAFは、運用や管理をサービス提供元が担う仕組みです。利用者は自社のWebサイトを普段通り運営するだけで、セキュリティ対策を享受できます。ソフトウェア型やハードウェア型のように専門知識を必要としないため、専任のセキュリティ人材を確保しにくい企業にもおすすめです。

 

理由③最新の脅威に対応できる

クラウド型WAFであれば、常に最新の脅威に対応できます。サービス提供元がサイバー攻撃の動向を日々分析し、新しい対策を反映するためです。利用者は、最新の対策が施されたWAFをインターネット経由で利用でき、手作業で対策を更新する必要がありません。急速に変化する脅威に対応する手段として、クラウド型WAFは非常に有効です。

 

クラウド型WAFなら「Cloudbric WAF+」

クラウド型WAFにはさまざまなサービスがありますが、対応範囲や精度に差があります。なかでもおすすめは「Cloudbric WAF+」です。通常のWAFを超えた多彩な機能を持つクラウド型WAFで、専門知識がなくても運用しやすい点で優れています。

Cloudbric WAF+の主な機能は、下記のとおりです。

 

  • AIを活用した高精度な攻撃検知
  • 最大40Gbpsまで対応するDDoS攻撃対策
  • 無料で自動更新されるSSL証明書の提供
  • 脅威情報に基づくIP・悪性ボットの遮断
  • 専門家による導入・運用サポート

 

高い防御性能と運用のしやすさを兼ね備えたCloudbric WAF+は、安心して導入できるクラウド型WAFと言えるでしょう。

 

まとめ

WebアプリやWebサイトは常にサイバー攻撃の標的となり得るため、セキュリティ対策が欠かせません。なかでもWAFは、幅広いサイバー攻撃を防ぐための有効な手段です。自社のWebサイトを守るため、積極的にWAFの導入を検討すると良いでしょう。

特にクラウド型WAFを選べば、コストを抑えながら最新の脅威にも対応できます。クラウド型WAFの導入を検討する場合は、高い防御力と手厚いサポートを兼ね備えた「Cloudbric WAF+」がおすすめです。

 

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penetration-test

redirect_ペネトレーションテストとは?脆弱性診断との違いや目的・方法について解説

サイバー攻撃の手口が高度化・巧妙化する中、自社システムの防御力を客観的に検証する「ペネトレーションテスト」が注目されています。

この記事では、ペネトレーションテストの基本や脆弱性診断との違い、ペネトレーションテストの目的や実施の流れを紹介します。

 

ペネトレーションテストとは

ペネトレーションテスト(侵入テスト)とは、セキュリティの専門家であるホワイトハッカーが、実際のサイバー攻撃を模した侵入を企業のシステムやネットワークに対して試み、セキュリティ上の弱点(脆弱性)を明らかにする検証手法です。情報漏えいや不正アクセスが多発する現代において、潜在的なリスクを事前に洗い出し、攻撃を未然に防ぐための重要な対策として注目されています。

このテストの最大の特徴は、攻撃者と同じ視点でシステムを評価できることです。机上のセキュリティ診断だけでは見つけにくい盲点や想定外の侵入経路を把握でき、実際の被害につながる前に優先度の高い対策を講じられます。テストの結果は詳細なレポートとして提供され、発見された脆弱性の内容や利用された攻撃手法、修正の優先度、具体的な改善策が提示されるため、実践的なセキュリティ強化に役立ちます。

ペネトレーションテストには、社外からの攻撃を想定した「外部侵入テスト」と、内部ネットワークや社員アカウントの不正利用を想定した「内部侵入テスト」があり、システム導入時や大規模アップデート、クラウド環境への移行時など、セキュリティリスクが増大しやすいタイミングで実施することが効果的です。

ペネトレーションテストと脆弱性診断の違い

ペネトレーションテストとよく似ているサービスに「脆弱性診断」があります。ペネトレーションテストと脆弱性診断の違いは、下表のとおりです。

 

項目 ペネトレーションテスト 脆弱性診断
主な目的 実際の攻撃を模倣して侵入可能性を検証 セキュリティの弱点を網羅的に検出
アプローチ 専門家が攻撃者視点で実演 自動・手動ツールでチェック中心
対象範囲 特定の経路や攻撃シナリオ(限定的) システムやアプリ全体(広範囲)
実施タイミング 高度な防御検証が必要な局面 システム更新時や定期チェックなど
向いている企業 金融・医療・重要インフラ、PCI DSS対象企業等 Webサービス運営企業、取引先の要求対応等
報告内容 攻撃手法・被害範囲・リスク分析 脆弱性リストと推奨対応策
実施者 セキュリティ専門家 ツール+診断者
難易度・コスト 高め(専門性が必要) 中程度(比較的導入しやすい)

 

ペネトレーションテストは、実際に攻撃を試みてシステムへの侵入可否や影響範囲を検証する実践的な手法です。一方、脆弱性診断はツールやチェックリストで既知の脆弱性を洗い出す調査的手法であり、必ずしも侵入は行いません。

それぞれ目的や手法、対象範囲に違いがあり、自社のセキュリティ課題や予算、求められる精度に応じて使い分けることが重要です。両者を適切に使い分けることで、より強固なセキュリティ体制の構築につながります。

Cloudbricでは、既知・未知の脅威に備えるセキュリティ診断サービス「Cloudbric 脆弱性診断」を提供しています。詳細は下記リンクを参照ください。

Cloudbric 脆弱性診断

 

ペネトレーションテストの種類

ペネトレーションテストは、調査対象によって2つのテスト方法があります。ここでは、それぞれの内容について紹介します。

 

①内部ペネトレーションテスト

内部ペネトレーションテストとは、企業の社内ネットワーク内にあるシステムに対して行うセキュリティ検証のことです。主な対象は、アプリケーションサーバー、認証サーバー、データベースサーバーなど、内部で重要な役割を果たすシステムです。

外部からの直接アクセスが難しいシステムであっても、社内の不正利用や、すでに侵入に成功した攻撃者によって悪用されるリスクは完全には排除できません。内部ペネトレーションテストは、こうした内部からの脅威を想定し、侵入後に発生し得る被害の範囲や影響を事前に把握し、被害を最小限に抑えるために実施されます。

②外部ペネトレーションテスト

外部ペネトレーションテストとは、インターネットからアクセス可能な公開サーバーやWebアプリケーション、ネットワーク機器などを対象に実施するセキュリティ検証です。実際に外部から攻撃を受けた場合に、どの程度侵入が可能かを確認し、システムの脆弱性や攻撃リスクを洗い出します。

テストでは、セキュリティの専門技術者が実際にネットワーク越しに侵入を試み、既知の脆弱性の有無や、ファイアウォール・侵入検知システムの突破可能性などを調査します。例えば、標的型メールを用いた擬似的なマルウェア送信、ZIPファイル偽装による従業員の反応確認など、現実に近い攻撃シナリオを再現し、組織の防御体制を実践的に検証できます。

外部ペネトレーションテストは、サーバーやWebサイトだけでなく、VPN機器、リモートアクセス環境、クラウドサービスなども対象となります。

 

ペネトレーションテストの手法

ペネトレーションテストの実施方法の代表例がホワイトボックステストブラックボックステストです。それぞれ事前に得られる情報量や攻撃シナリオが異なり、目的や状況に応じて使い分けられます。

①ホワイトボックステスト

ホワイトボックステストは、テスト対象のシステム構成、ソースコード、設定情報などを事前に提供されたうえで行う手法です。内部構造を把握しているため、網羅的かつ効率的に脆弱性を発見できます。特に認証の仕組みやアクセス制御、ビジネスロジックの欠陥など、外部からでは見えにくい問題の洗い出しに適しています。一方で、事前情報を活用するため、実際の攻撃者が未知の状態から侵入を試みる状況とは異なる点に留意が必要です。

②ブラックボックステスト

ブラックボックステストは、攻撃対象に関する事前情報をほとんど持たず、外部からの攻撃者視点で実施する手法です。公開情報やオープンなサービスを起点に侵入経路を探るため、実際のサイバー攻撃に近いシナリオで脆弱性を検証できます。情報収集から侵入、権限昇格、データ抽出までの一連の流れを確認できるため、外部からの防御力評価に有効です。ただし、情報不足によりテスト範囲が限定され、内部の深部まで検証できない場合もあります。

 

ペネトレーションテストの目的

ペネトレーションテストの様子

ペネトレーションテストを実施する目的を4つ紹介します。

 

目的①システムのセキュリティ対策の強度を評価する

ペネトレーションテストの主な目的は、システムが備えているセキュリティ対策が実際のサイバー攻撃に対してどの程度有効に機能するかを評価し、防御力を可視化することです。

テストでは、ファイアウォール、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)、IDS(侵入検知システム)、IPS(侵入防御システム)などの防御機構に対し、実際の攻撃を模した手法を用いて侵入を試みます。その結果、どの程度攻撃を防げるかが実例や数値で明確になり、経営層やIT部門がセキュリティ強化の優先度を判断する材料になります。

さらに、書類上のチェックや設定確認だけでは見落とされやすい運用面の盲点や、人為的ミスによるセキュリティリスクも浮き彫りになります。これにより、単なる理論上の対策ではなく、現場で実効性のあるセキュリティ強化策を立案することが可能です。

目的②脆弱性を発見する

ペネトレーションテストは、実際のサイバー攻撃手法を模倣することで、システム内部に潜む脆弱性を洗い出すセキュリティ検証手法です。複数の脆弱性を連鎖的に利用した高度な攻撃も再現できるため、一般的なセキュリティ診断では見つけにくい侵入経路の特定に役立ちます。

例えば、Webアプリケーションの設定ミスやネットワーク構成上の隙が攻撃者に悪用されると、認証情報が盗まれたり、通常ではアクセスできない管理者権限が奪われたりする可能性があります。このような重大なリスクを事前に明らかにすることで、実際の攻撃が行われる前に対策を講じることができます。

さらに、ペネトレーションテストでは、攻撃後にどの範囲まで侵入が可能か、どのような経路でデータが不正取得されるかまで詳細に確認できるため、被害発生時の影響範囲を正確に把握できます。テスト結果は、システムの設計やアクセス権限の見直し、パッチ適用など、実践的かつ優先度の高いセキュリティ対策の策定に活用できます。

サイバー攻撃手法は日々進化しており、従来の脆弱性診断ツールだけでは対応しきれない新たな攻撃経路が生まれています。そのため、ペネトレーションテストを定期的に実施し、最新の攻撃パターンを想定した評価を行うことが、システム全体の防御力を高めるうえで重要です。

目的③想定される被害レベルを把握する

ペネトレーションテストを実施することで、万が一攻撃が成功した場合にどの程度の被害が発生するのか、その規模や影響範囲を具体的に把握できます。単に脆弱性が存在するかどうかを確認するだけでなく、情報漏えい、システムの停止、データ改ざん、サービスの長期ダウンなど、実際に起こり得るリスクを可視化できるため、経営層や関係部門にも現実的な危機感を伝えやすくなります。

また、攻撃者が一度侵入に成功した後、社内ネットワーク内でどの程度影響を拡大できるのか(横展開)の評価も可能です。これにより、最初の侵入だけでなく、被害がどこまで拡大し得るかを把握でき、優先度の高い防御策や侵入拡大を防ぐセキュリティ対策を検討する際の判断材料となります。

さらに、この結果はリスク管理やBCP(事業継続計画)の見直しにも有効活用できます。被害想定が具体化されることで、サイバー攻撃を受けた際の影響度を定量的に評価でき、事前に復旧手順や代替手段を整備するなど、被害を最小限に抑える体制を構築できます。

近年は、サプライチェーン攻撃やランサムウェアの被害が拡大しており、外部侵入後の横展開による被害が深刻化しています。そのため、ペネトレーションテストによって侵入後の動きを再現し、実際の攻撃シナリオを想定した防御力評価を行うことは、企業のサイバーセキュリティ強化に欠かせない取り組みとなっています。

目的④セキュリティ対策の強化ポイントを明確にする

ペネトレーションテストの結果は、システム全体のセキュリティ対策をどの部分から優先的に強化すべきかを判断する上で非常に有効です。テストによって発見された侵入経路や脆弱性は、深刻度や攻撃される可能性の高低によって優先度をつけられるため、限られた予算や人員を効率よく配分し、効果的なセキュリティ対策を講じることができます。

報告書には、検出された脆弱性の詳細や攻撃に利用される可能性がある手法だけでなく、具体的な改善策や運用上の見落としやすいポイントも記載されます。これにより、IT部門やセキュリティ担当者だけでなく、経営層とも課題を共有しやすくなり、組織全体でセキュリティリスクに対応できる体制を整えることが可能です。

さらに、報告書をもとに改善策を実行し、再度ペネトレーションテストを行うことで、対策が有効に機能しているかを検証でき、セキュリティレベルを段階的に向上させることができます。こうしたプロセスは、サイバー攻撃手法の進化に対応するうえでも重要であり、継続的なセキュリティ強化の一環として活用されています。

 

ペネトレーションテストのステップ

ここまでペネトレーションテストについて紹介してきましたが、実際はどのような手順で行うとよいのでしょうか。3つのステップに分けて紹介します。

 

ステップ①シナリオの作成

ペネトレーションテストを実施する際には、まず実際のハッカーが仕掛ける可能性のある攻撃を想定し、テスト用のシナリオを作成します。対象となるシステムの構成や利用環境、過去のインシデント事例などを踏まえて、現実的で再現性の高い攻撃手法を選定することが重要です。

例えば、Webアプリケーションに対してはSQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)、ネットワーク機器に対してはポートスキャンや脆弱性を突く侵入試行など、システム特性に応じた複数の攻撃手法が検討されます。

すべての攻撃パターンを網羅する包括的なアプローチもありますが、テスト範囲が広くなる分、準備や実施にかかる時間やコストが増大するのが課題です。そのため、テストの目的や想定するリスクをあらかじめ明確にし、攻撃シナリオを絞り込むことで、限られたリソースの中でも効率的かつ効果的なペネトレーションテストを行うことができます。

さらに、攻撃シナリオの設計段階で事前に経営層やIT部門と連携し、優先的に評価すべき領域を決定することで、ビジネス影響度の高い脆弱性を重点的に洗い出せます。これにより、テスト結果を実際のセキュリティ強化計画に直結させやすくなります。

SQLインジェクションについては、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。

「SQLインジェクションとは? 攻撃の仕組みや被害例、対策方法を解説」

ステップ②ペネトレーションテストの実施

作成した攻撃シナリオに基づいて、ペネトレーションテストを実施します。テストには、自動化ツールを使って大量の脆弱性を効率的に検出する方法と、専門知識を持つセキュリティ技術者が手動で攻撃を再現し、より精密な診断を行う方法があります。実際には両方を組み合わせて実施されることが多く、幅広い攻撃パターンを検証できます。

ただし、使用するツールの性能や精度、テストを担当する技術者のスキルや経験によって、発見できる脆弱性やテスト結果の質には差が出る場合があります。そのため、外部のセキュリティベンダーに依頼する際には、過去の実績、提供されるレポートの内容、インシデント発生時のサポート体制などを事前に確認し、信頼性の高いパートナーを選定することが重要です。

さらに、テスト実施時には、対象システムへの影響やサービス停止リスクを最小限に抑えるため、事前にスケジュールや範囲を明確化し、必要に応じてバックアップや復旧手順を準備しておくことが望まれます。これにより、安全かつ効果的にペネトレーションテストを行い、実際のセキュリティ強化につなげることができます。

ステップ③結果報告の受領

ペネトレーションテストを実施した後は、テスト結果の受領と分析を行います。外部のセキュリティベンダーに委託した場合は、レポートの提出や報告会を通じて結果が共有され、検出された脆弱性の内容や攻撃手法、リスクの深刻度、推奨される改善策が提示されるのが一般的です。一方、自社でテストを実施した場合は、得られたデータを整理し、侵入経路や問題点を明確化して社内共有します。

重要なのは、結果を確認するだけで終わらせず、そこから実際のセキュリティ改善につなげることです。検出された脆弱性の深刻度や影響範囲を評価し、優先順位をつけて対応策を検討・実行することで、効率的かつ効果的な防御力の向上が可能になります。

また、改善策を実施した後には、再度ペネトレーションテストやセキュリティ診断を行い、対策が有効に機能しているかを検証することが推奨されます。これにより、同じ脆弱性の再発防止や、新たな攻撃手法への対応力強化につなげられ、継続的にセキュリティレベルを高めることができます。

ペネトレーションテストに関するよくある質問とその回答

Q:テスト頻度は?

A:ペネトレーションテストは、年1回程度の定期実施が推奨されます。加えて、大規模なシステム改修や新機能追加の際にも行うことで、新たな脆弱性を早期に発見できます。


Q:システムの稼働に影響はある?

A:通常は稼働への影響を最小限に抑えて実施しますが、侵入試験の性質上、一部のサービスに遅延や一時的停止が発生する場合があります。事前に影響範囲を調整することが重要です。


Q:ペネトレーションテストを実施するタイミングは?

A:本番稼働前や重要アップデート後が適しています。特に外部公開前に行うことで、公開時のリスクを大幅に低減できます。


Q:ペネトレーションテストを行うのに必要なものは?

A:テスト環境や対象範囲の情報、アクセス権限、契約書などが必要です。外部委託の場合は秘密保持契約(NDA)の締結も欠かせません。


Q:ペネトレーションテストは違法ではない?

A:正規の契約と許可のもとで実施される限り合法です。無断で行う侵入行為は不正アクセス禁止法に抵触するため、必ず合意を得てから行います。

 

まとめ

ペネトレーションテストは、実際のサイバー攻撃を想定して脆弱性を洗い出し、被害リスクや優先的な対策ポイントを明確にできる有効なセキュリティ手法です。特にクラウド環境の利用が進む今、外部・内部両面からの防御体制を整えることが求められています。

情報漏えいやサービス停止といった重大なリスクを未然に防ぐためにも、自社システムの安全性を定期的に確認し、必要に応じてペネトレーションテストの導入を検討してみましょう。

 

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トロイの木馬ウイルスとは?特徴・症状・感染時の対処法をわかりやすく解説


近年、サイバー攻撃の手口はますます巧妙化しており、中でも「トロイの木馬ウイルス」は危険性の高いマルウェアとして、企業や個人に深刻な脅威を与えています。

本記事では、トロイの木馬について、他のマルウェアとの違いや感染時に起こる主な症状、被害事例や感染後の対処方法について紹介します。

 

トロイの木馬ウイルスとは

トロイの木馬ウイルスとは、一見すると無害に見えるファイルやソフトウェアに偽装し、パソコンやスマートフォン、サーバーなどの端末に侵入して裏で不正な操作を行うマルウェアの一種です。名称は、ギリシャ神話で巨大な木馬の内部に兵士を隠して敵の城内へ侵入した「トロイの木馬」に由来しています。

典型的な感染手口としては、画像ファイルや文書ファイル、無料アプリなどに偽装し、利用者がファイルを開いた瞬間にウイルスを実行させる方法があります。感染すると、端末内の情報を盗み出したり、外部からの遠隔操作を可能にしたりするほか、他のマルウェアを追加でダウンロードさせることもあります。

近年では、偽装すら行わず、ソフトウェアやOSの脆弱性、設定ミスを突いて自動的にインストールされるケースも増加しています。これにより、ユーザーがファイルを開くなどの操作をしなくても感染が広がる危険性が高まっています。

さらに、トロイの木馬はランサムウェアやスパイウェアなど他のマルウェアの侵入口として利用されることも多く、感染した端末がボットネットの一部となってサイバー攻撃に悪用される恐れもあります。このため、セキュリティソフトの導入や最新のパッチ適用、信頼できないファイルやリンクを開かないなど、日常的な予防策が不可欠です。

マルウェアの感染対策については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。

「マルウェア感染の確認方法と即時対処法ガイド」

他のウイルスとの違い

トロイの木馬ウイルスは、コンピュータウイルスやワームといった他のマルウェアと特徴や感染のきっかけ、拡散方法などに違いがあります。主な相違点は、下表のとおりです。

トロイの木馬 コンピュータウイルス ワーム
特徴 正常なソフトに見せかけて侵入し、不正動作を行う 他のプログラムに寄生して不正に動作させる 自己増殖し、単体で動作可能なプログラム
感染のきっかけ ユーザーがファイルを開くなどの操作によって感染 寄生先のプログラムが実行されることで感染 ネットワーク経由で自動的に拡散・感染
拡散方法 自動では拡散しない(拡散機能を持たない) 寄生したプログラムを介して他のファイルに拡散 自律的に他の端末にコピー・拡散されていく

 

トロイの木馬ウイルスは、従来のコンピュータウイルスのように他のプログラムに寄生して感染を広げるわけでも、ワームのように自律的にネットワーク上へ拡散する機能も持ちません。その代わり、見た目を正規のファイルやソフトウェアに偽装し、ユーザー自身に開かせることで感染を成立させる「だまし」の手口が特徴です。システムの脆弱性だけでなく人間の心理を突く点が、トロイの木馬を特に巧妙で危険なマルウェアといえる理由です。

感染すると、情報の盗み出しや外部からの遠隔操作、さらには他のマルウェアの侵入補助など、深刻な被害につながる可能性があります。そのため、トロイの木馬の特性を正しく理解し、不審なファイルやリンクを不用意に開かない習慣を持つことが重要です。

 

トロイの木馬ウイルスの種類

トロイの木馬ウイルスには、以下の3種類があります。

①ダウンローダー型

ダウンローダー型は、感染後に別のマルウェアをダウンロードし、自動的にインストールします。たとえば、ランサムウェアやスパイウェア、キーロガーなどを追加で展開する「ステージング」の役割を果たすこともあります。

②バックドア型

バックドア型は、被害者のシステムに「裏口」を設け、攻撃者が遠隔から不正操作できるようにします。ファイルの送受信、実行、削除など、多様な操作が可能です。

③キーロガー型

キーロガー型は、キーボード入力を記録し、ログイン情報やクレジットカード番号などの機密情報を盗みます。ソフトウェア型のものはルートキット機能を持ち、隠蔽性が高いのが特徴です。

 

他にも「バンカー型(金融情報窃盗)」「ランサム型(身代金要求)」「偽アンチウイルス型(スケアウェア)」など、多様な派生があります。それぞれ手口や目的が異なるため、検出・防御には多層的なセキュリティ対策と教育が重要です。

 

トロイの木馬ウイルスが引き起こす被害

トロイの木馬ウイルスはどのような被害を引き起こすのでしょうか。主な被害を3つ紹介します。

 

被害①機密情報の漏えい

トロイの木馬ウイルスに感染すると、パソコンやスマートフォンに保存されている個人情報や業務データが外部に不正取得される恐れがあります。実際の被害例として、攻撃者が端末に保存されたパスワード、クレジットカード情報、オンラインバンキングの認証情報などを盗み取り、不正利用や不正送金に悪用したケースが報告されています。

また、一部のトロイの木馬には「キーロガー機能」が備わっており、キーボードの入力内容を記録して攻撃者に送信することが可能です。これにより、ユーザーが入力したログイン情報やメールの内容、チャットのやり取りまでが盗み見られる危険があります。

キーロガーについては以下の記事でも詳しく解説しています。参考にしてください。
「キーロガーの対策とは?仕組みや危険性・スマホでも気をつけるべきポイントを解説」

 

被害②パソコンのパフォーマンス低下

トロイの木馬ウイルスに感染すると、ユーザーが気づかない裏側で不正な処理が行われ、パソコンやスマートフォンのCPU、メモリ、ストレージといったシステムリソースを大量に消費することがあります。その結果、端末の動作が極端に遅くなり、アプリケーションの起動や操作に時間がかかるなど、日常利用に支障が出る場合があります。

さらに、トロイの木馬が外部サーバーとの間で大量のデータを送受信することで、ネットワーク負荷が増加し、インターネット接続が不安定になったり、通信速度が著しく低下したりするトラブルが発生することもあります。こうした状態を放置すると、最終的にシステムがフリーズしたり、OSが起動しなくなったりと、端末の使用が困難になる深刻な障害に発展する恐れがあります。

一部のトロイの木馬は、暗号資産のマイニングやボットネットへの参加といった外部攻撃の踏み台として端末を利用するケースもあり、その場合はリソース消費がさらに増大します。これらの動作はユーザーが直接確認しにくく、気づかないうちに被害が拡大することも珍しくありません。

 

被害③経済的な損失

業務システムや生産設備がトロイの木馬ウイルスに感染して制御不能になると、サービス提供の停止や製品の出荷遅延など、企業活動全体に大きな混乱を引き起こす恐れがあります。システムの復旧には、多くの人員や時間、専門的な対応が必要となり、復旧までの間に発生する損害額が膨らむリスクも高くなります。

さらに、感染した端末やサーバーから機密情報や顧客の個人情報が外部に流出した場合、企業の信用は大きく損なわれます。これにより、謝罪会見や顧客への補償対応、訴訟リスクへの備えなど、経済的損失だけでなく、社会的信頼の回復に多大なコストと時間を要する事態に発展しかねません。

トロイの木馬ウイルスの被害事例

ここでは、トロイの木馬ウイルスによって発生した被害事例を紹介します。

 

事例①パソコン遠隔操作事件

「パソコン遠隔操作事件」は、2012年に日本で発生した、トロイの木馬型マルウェアを悪用した重大なサイバー犯罪です。犯人は「iesys.exe」と呼ばれるトロイの木馬を他人のパソコンに感染させ、利用者が気づかないうちにそのパソコンを遠隔操作しました。その結果、所有者とは無関係に、殺人予告や襲撃予告などの犯罪メッセージが掲示板やウェブサイトに投稿されました。

この攻撃により、実際に複数の無関係な人々が容疑者と誤認され、誤認逮捕されるという深刻な事態が発生しました。事件当時、日本ではこのような遠隔操作型のサイバー犯罪がほとんど前例のない手口だったため、社会全体で大きな衝撃と不安が広がりました。

さらに、この事件はサイバーセキュリティ対策の不備や、捜査機関の対応の難しさを浮き彫りにしました。攻撃者が匿名性を利用して第三者のパソコンを踏み台にすることで、真犯人の特定が困難になること、また無実の人物が誤って逮捕される可能性があることが社会問題として強く認識され、以後、日本国内におけるサイバーセキュリティ対策や法制度の見直しにも影響を与えた事件とされています。

 

事例②大学で発生した情報漏えい事件

2022年3月、ある国立大学のパソコンが、トロイの木馬型マルウェアの一種「Emotet(エモテット)」に感染する事案が発生しました。Emotetは、感染した端末を通じてメールを不正送信したり、他のマルウェアを追加で侵入させたりする特徴を持つ危険なマルウェアです。

この感染により、外部から大学のメールサーバーが悪用され、スパムメールや不正アクセスの踏み台として利用される可能性が懸念されました。そのため、大学側は被害拡大を防ぐために、職員や学生のアカウントの認証情報(パスワードなど)を強制的に変更するなどの緊急対応を実施しました。

幸い、重大な情報漏えいや金銭被害は確認されませんでしたが、この事案は教育機関がサイバー攻撃の標的となるリスクが高まっている現状を改めて示す結果となりました。特に大学は、多くの端末が学内外からネットワークに接続され、研究データや個人情報など価値の高い情報を扱うため、攻撃者に狙われやすい環境にあります。

この事例は、教育機関におけるセキュリティ対策の強化、例えば多要素認証の導入、メールの不審リンク対策、Emotetのようなマルウェアを検出・駆除できるセキュリティ製品の導入、利用者へのサイバーセキュリティ教育の徹底が不可欠であることを浮き彫りにしました。

 

トロイの木馬ウイルスに感染した場合の対応

パソコンがトロイの木馬ウイルスに感染した疑いがある場合、どのように対処すればよいのでしょうか。ここでは、感染が判明した際にすぐに実施すべき3つのポイントをご紹介します。

対応①パソコンをネットワークから隔離する

トロイの木馬ウイルスに感染した疑いがある場合は、被害をこれ以上拡大させないために、まずパソコンを速やかにネットワークから切り離すことが重要です。有線接続を利用している場合はLANケーブルを抜き、無線接続であればWi-Fiをオフにし、自動接続の設定も解除しておきましょう。これにより、感染端末から他の端末やサーバーへの不正通信を遮断できます。

この初動対応を行うことで、同じネットワーク内のほかの端末への二次感染を防ぎ、社内ネットワーク全体への被害拡大を最小限に抑えられます。

さらに、感染が疑われる端末は、そのまま電源を切らずにネットワークから隔離した状態で専門家やシステム管理者に引き渡すことが推奨されます。電源を切ると一部の証拠データが消失し、原因調査や被害範囲の特定が難しくなる場合があるためです。

加えて、感染した端末が共有ネットワークドライブやクラウドサービスに接続されていた場合は、該当サービスの利用を一時停止し、管理者に早急に連絡することで被害の広がりを防げます。初動対応の迅速さが、その後の被害規模や復旧にかかる時間を大きく左右します。

 

対応②ウイルス対策ソフトでフルスキャンする

感染した端末をネットワークから切り離した後は、ウイルス対策ソフトを使ってパソコン全体をフルスキャンしましょう。トロイの木馬ウイルスは単独で動作するマルウェアであるため、ウイルス対策ソフトの定義ファイル(ウイルスデータベース)に登録されている場合、自動的に検知・駆除される可能性があります。

また、感染源が特定できない場合や、同じネットワーク内のほかの端末も危険にさらされている可能性がある場合は、すべての端末で同様にフルスキャンを行うことが重要です。これにより、二次感染を防ぎ、被害の拡大を最小限に抑えることができます。

さらに、スキャンを行う際は以下の点に注意してください。

  • ウイルス対策ソフトを最新の状態に更新してからスキャンを実施すること。

  • 重要な業務データはスキャン前にバックアップを作成し、駆除時のデータ消失に備えること。

  • スキャン後に脅威が検出された場合は、駆除ログや検出ファイル情報を記録し、システム管理者やセキュリティ担当者に報告すること。

これらの対応を組み合わせることで、感染拡大の防止と原因特定、今後の再発防止策につなげやすくなります。

 

対応③関係各所に連絡する

トロイの木馬に感染した疑いがある場合は、できるだけ早く社内のセキュリティ担当者や情報システム部門へ報告しましょう。迅速な報告により、感染端末の隔離やネットワーク遮断、影響範囲の調査など、被害拡大を防ぐための初動対応を早急に行うことが可能になります。

もし専門部署がない場合は、日本国内のサイバー攻撃対応機関「JPCERT/CC」や、最寄りの警察(サイバー犯罪相談窓口)へ相談することが推奨されます。特に被害が大きい場合や金銭被害、情報漏えいが懸念される場合は、速やかに外部機関と連携することが重要です。

また、報告・相談を行う際には、以下のような証拠をできるだけ確保しておくと、原因調査や対策がスムーズに進みます。

  • 感染が疑われる端末の通信ログ、セキュリティソフトの検出ログ

  • 感染を引き起こした可能性のあるメールやファイルの情報

  • 画面に表示されたエラーメッセージや不審な挙動のスクリーンショット

これらの情報は、原因特定や被害範囲の把握、法的対応を進める上でも重要な手がかりになります。感染を疑った段階での迅速な報告と証拠保全が、被害を最小限に食い止める鍵となります。

トロイの木馬ウイルスに感染しないための方法

トロイの木馬ウイルスは、正規のファイルやアプリを装って侵入するため、気づかないうちに感染してしまう危険があります。感染を防ぐためには、日常的な対策を徹底することが大切です。

方法①不審なメールや添付ファイルを開かない

攻撃者は、偽装メールにウイルスを仕込んだファイルを添付するケースが多く見られます。送信元が不明なメールや、不自然な日本語表現が含まれるメールは開封せず、添付ファイルやリンクはクリックしないことが基本です。

方法②ソフトウェアを常に最新の状態に保つ

OSやアプリケーションに存在する脆弱性を狙った攻撃も少なくありません。自動更新を有効にし、常に最新のセキュリティパッチを適用しておくことで、侵入リスクを下げられます。

方法③正規のWebサイトやサービスを利用する

非公式サイトからソフトをダウンロードすると、トロイの木馬が仕込まれている可能性があります。アプリやツールは必ず公式サイトや信頼できる配布元から入手し、海賊版や不正ソフトは利用しないようにしましょう。

方法④セキュリティソフトを活用する

信頼性の高いセキュリティソフトを導入し、リアルタイム保護を有効にしておくことで、怪しいファイルの実行を未然に防止できます。定期的なフルスキャンも欠かせません。

これらの基本的な対策を組み合わせることで、トロイの木馬ウイルスへの感染リスクを大幅に減らすことが可能です。

まとめ

この記事では、トロイの木馬ウイルスについて特徴や感染したときの症状、対処方法について紹介しました。トロイの木馬ウイルスは、一度感染すると情報漏えいや業務停止など、企業に大きな損害をもたらすリスクがあります。だからこそ、日頃からの予防対策が不可欠です。

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WAFについては、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。

「セキュリティ対策に有効なWAFとは?仕組みや種類、おすすめ製品を紹介」

 

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ダークウェブとは?ディープウェブとの違いや対策をわかりやすく解説

インターネットの裏側には、検索エンジンではたどり着けない「ダークウェブ」と呼ばれる領域が存在します。近年では、このダークウェブ上で個人情報や企業の機密データが不正に取引されるケースが増えており、企業にとって大きなリスクとなっています。

本記事では、ダークウェブの基本から危険とされている理由、企業が取るべき対策についてわかりやすく解説します。

ダークウェブとは

ダークウェブとは、GoogleやYahoo!など一般的な検索エンジンではアクセスできないインターネット上の領域のことです。もともとはアメリカ海軍が、安全に匿名で通信するために開発した技術が基になっています。「Tor(オニオンルーティング)」という仕組みによって、通信の内容やアクセス元の情報を隠しています。

本来、ダークウェブはプライバシーの保護や情報検閲を回避する目的で使用されることが多かったものの、現在ではその匿名性を悪用し、盗難された個人情報やマルウェア、違法薬物、武器などの不正な売買が横行する危険な市場としても知られています。そのため、ダークウェブへのアクセスには法的リスクや情報セキュリティ上の危険が伴うことを理解しておく必要があります。

 

ディープウェブとの違い

インターネットは、よく「氷山」に例えられます。私たちが日常的に利用しているインターネットは、海面から見えている氷山の一角のようなものです。この部分を「サーフェスウェブ」といい、検索エンジン(GoogleやYahoo!など)で表示されるWebサイト、SNS、ニュースサイト、オンラインショップなど、誰でも自由に閲覧できる情報が含まれます。

氷山の海面下には「ディープウェブ」という領域があります。これは検索エンジンに表示されないエリアで、例えばオンラインバンキングや医療記録、会社の内部ポータル、学術論文などが含まれます。これらはID・パスワード認証や有料購読が必要など、特定の人のみが閲覧できる仕組みになっており、一般には公開されません。

さらに深いところにあるのが「ダークウェブ」です。ここには専用ブラウザ(Torブラウザなど)を使わなければアクセスできません。本来は匿名性の高い安全な通信を目的として作られましたが、現在では匿名性を悪用した違法取引(個人情報、薬物、武器など)の場として問題になっています。

なお、「ディープウェブ」と「ダークウェブ」は混同されがちですが、ディープウェブは正規の目的で使われているものがほとんどであり、ダークウェブのような危険性はありません。この違いを理解しておくことが重要です。

 

ダークウェブには何がある?取引されているものとは

ダークウェブではどのようなものが取引されているのでしょうか。以下で代表的な3点を紹介します。

 

①ID・パスワードのリストや個人情報

ダークウェブでは、盗まれたID・パスワードのリストや、氏名、住所、電話番号、マイナンバーなどの個人情報が違法に売買されています。これらの情報を手に入れた第三者は、本人になりすまして業務システムやクラウドサービスにログインし、不正アクセスを行う可能性があります。

また、こうした情報は標的型攻撃(特定の企業や組織を狙ったサイバー攻撃)の準備段階でも利用されることがあります。不正アクセスをきっかけに、社内情報の窃取、システム改ざん、業務妨害などの被害が発生する恐れがあります。

さらに、ダークウェブに出回る情報の多くは、フィッシング詐欺やマルウェア感染、過去の情報漏えい事件などで流出したデータです。一度流出した情報は、ダークウェブ上で完全に削除することがほぼ不可能で、長期間にわたって不正利用され続ける危険があります。

このため、企業や個人は、アカウント情報の使い回しを避ける、二要素認証を導入するなどの基本対策に加えて、流出情報がダークウェブ上で取引されていないかを確認できる「ダークウェブ監視サービス」を活用し、早期に対処できる体制を整えることが重要です。

 

②クレジットカード情報

ダークウェブでは、スキミング(カード情報を不正に読み取る行為)やハッキングによって盗まれたクレジットカード情報が違法に取引されています。これらの情報が第三者に渡ると、本人になりすまして高額な買い物をされたり、不正送金が行われたりするなど、深刻な金銭被害につながる恐れがあります。

さらに、盗まれた情報が偽造カードの作成に利用されることもあり、本人が気づかないうちに被害が拡大するケースもあります。こうした不正利用は海外のオンラインショップや暗号資産取引などにも悪用され、複数の国やサービスにまたがって被害が発生する場合もあります。

加えて、クレジットカード情報はダークウェブ上で1件あたり数ドルから数十ドル程度で売買されることが多く、複数の被害者情報がまとめて取引されるケースもあります。一度流出した情報は完全に削除されることが難しく、長期間にわたって不正利用が続く可能性があります。

こうした被害を防ぐには、カード利用明細を定期的に確認し、不審な取引を早期に発見できるよう利用通知メールを設定することが有効です。万が一、不正利用の疑いがあれば、速やかにカード会社へ連絡し、利用停止や再発行の手続きを行うことが重要です。

 

③ランサムウェアなどの不正ソフト

ダークウェブでは、ランサムウェアと呼ばれる身代金要求型ウイルスが活発に取引されています。ランサムウェアは、感染した端末やサーバーのデータを暗号化し、元に戻すことと引き換えに金銭(身代金)を要求する悪質なマルウェアです。

近年は「RaaS(Ransomware as a Service)」と呼ばれるサービス型の仕組みが普及しており、攻撃ツールやマニュアルがパッケージ化され、専門的な技術がない人物でも購入すれば容易に攻撃を実行できるようになっています。その結果、サイバー攻撃の敷居が大幅に下がり、企業や団体、さらには個人にまで被害が拡大しています。

特に近年は、データを暗号化するだけでなく、盗み出した情報を公開すると脅迫する「二重恐喝型攻撃」も増加しており、被害の深刻度が高まっています。ランサムウェアによる被害は、業務停止やデータ喪失、金銭的損失だけでなく、企業の信用失墜や法的責任の追及にもつながる可能性があります。

こうしたリスクに備えるには、OSやソフトウェアを常に最新の状態に保つこと、重要データのバックアップを定期的に取得すること、不審なメールの添付ファイルやリンクを開かないことが基本対策となります。さらに、侵入を早期に検知し、攻撃を未然に防ぐためのセキュリティ対策ツールやSOC(セキュリティオペレーションセンター)などの導入が有効です。

ダークウェブが危険である理由

ダークウェブへのアクセスは、危険性が高いことから避けるべきと言われています。なぜダークウェブは危険とされているのでしょうか?ここでは、主な3つの理由を紹介します。

 

理由①犯罪に巻き込まれる可能性がある

ダークウェブは匿名性が非常に高く、通常のインターネットとは異なり安全性が保証されていません。そのため、利用者が意図せず違法なWebサイトやサービスにアクセスしてしまい、結果として犯罪に関与したと見なされる危険があります。ダークウェブ上には、違法薬物や武器、児童ポルノ、ハッキングツールなど、法律で禁止されているコンテンツが多く存在しており、たとえ意図がなかった場合でも、違法情報を閲覧したり取引したりすれば法的責任を問われる可能性があります。

さらに、ダークウェブ利用中には個人情報が盗まれるリスクもあります。アクセスしたサイトやダウンロードしたファイルを経由して、氏名や住所、ログイン情報、クレジットカード情報などが流出すると、第三者による不正利用やなりすまし被害が発生する恐れがあります。その被害は本人だけにとどまらず、家族や知人が詐欺や迷惑行為の標的になるなど、周囲にまで影響が及ぶケースもあります。

加えて、ダークウェブにはウイルスやスパイウェアが仕込まれたページも多く、アクセスしただけで端末が感染することもあります。多くの国では、違法サイトへのアクセスや違法取引を行った場合、故意でなくても捜査対象となる可能性があります。

こうした危険性の高さから、ダークウェブを一般利用者が安全に使うのは非常に難しく、利用は強く注意が必要です。セキュリティやプライバシー保護を目的とする正当な利用方法も存在しますが、専門知識やセキュリティ対策が不十分なままアクセスすると、大きなリスクを負う可能性があります。

 

理由②マルウェアに感染するリスクがある

ダークウェブにアクセスすると、マルウェアやウイルスに感染するリスクが高まります。悪意のあるサイトやファイルを開いてしまうと、デバイスが不正プログラムに侵入され、個人情報が盗まれたり、保存しているデータが破損・削除されたりする恐れがあります

特にランサムウェアに感染した場合、端末内のファイルが暗号化され、元に戻す条件として金銭を要求される「身代金要求型被害」に発展することがあります。これにより、個人や企業の重要データが使えなくなり、業務停止や大きな金銭的損失、さらには情報漏えいによる法的トラブルにつながる可能性もあります。

さらに、ダークウェブ上には、サイトを閲覧しただけで自動的にマルウェアを仕込む「ドライブバイダウンロード攻撃」を行うページも存在します。感染した端末は、パスワードや金融情報を盗む「スパイウェア」や、外部から遠隔操作される「バックドア型マルウェア」の被害を受けることもあります。

一度感染すると、データの完全復旧が難しかったり、被害調査や復旧作業に多大な時間と費用がかかったりするケースが多く見られます。そのため、セキュリティ対策や専門知識が不十分な状態でダークウェブにアクセスすることは、非常に大きなリスクを伴います。

マルウェアのひとつ、トロイの木馬については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。

「トロイの木馬ウイルスとは?特徴・症状・感染時の対処法をわかりやすく解説」

 

理由③詐欺被害に遭うリスクがある

ダークウェブでは、偽のサービスや商品の取引が数多く行われており、利用者が詐欺被害に巻き込まれるリスクが非常に高い環境です。たとえば、存在しない商品を販売すると偽って代金だけを騙し取られる、粗悪な偽造品を送りつけられる、入力した個人情報やクレジットカード情報が不正利用されるといった被害が多発しています。

ダークウェブは匿名性が極めて高く、取引相手の身元や信頼性を確認する手段がほとんどないため、詐欺や情報漏えいが起きやすく、トラブルが深刻化しやすいのが特徴です。また、詐欺被害が発生しても、取引の追跡や犯人の特定が困難で、返金が期待できないケースがほとんどです。

さらに、詐欺サイトにはマルウェアが仕込まれていることも多く、金銭被害に加えて端末がウイルス感染し、個人情報が抜き取られる二次被害が発生するリスクもあります。ダークウェブは違法取引の温床となっているため、利用そのものが法的リスクを伴うこともあり、安易なアクセスは非常に危険です。

 

ダークウェブの被害事例

ダークウェブでは、流出した個人情報が匿名で取引され、被害の拡大を招くケースが多数報告されています。以下に、注目すべき実例を2つ紹介します。

 

事例①AT&Tにおける個人情報の漏えいと暗号ウェブでの販売

2024年3月、米国の通信大手AT&Tでは、約7,000万人の顧客を対象とした個人情報が漏えいし、ダークウェブ上で販売されました。流出内容には氏名、メールアドレス、住所、社会保障番号(SSN)などが含まれていたとされ、巨大被害として注目を集めました。シニア・グループ「ShinyHunters」が関与していたとされ、法的訴訟やクレジットモニタリングの提供などの対応が進められています。

 

事例②フィンランドの心理クリニック「Vastaamo」での公開脅迫

フィンランドの心理療法クリニック Vastaamo(ヴァスタアモ)では、クライアントの診療記録がハッキングにより流出し、治療内容や個人特定情報がTor上の掲示板に掲載されました。不払いや支払い拒否の場合には患者に直接脅迫メールが送りつけられ、多くの被害者に精神的被害が及びました。この事件は「ダブルエクストーション(二重脅迫)」攻撃の典型として、国際的にも大きな衝撃を与えました。

 

ダークウェブでの情報掲載を防ぐ方法

会社でセキュリティ教育を受ける女性

企業の情報がダークウェブに掲載されないようにするには、どのような対策を講じたらよいのでしょうか。以下の3つの方法を推奨します。

 

方法①セキュリティパッチの適用

ネットワーク機器やソフトウェアには、設計上の不備や設定ミスなどに起因する「脆弱性」と呼ばれるウィークポイントのような部分が必ず存在します。

脆弱性を修正せずに放置し続けると、悪意のある攻撃者にとって侵入口となり、ゼロデイ攻撃やランサムウェアなどのサイバー攻撃に悪用される可能性が高まります。これらの攻撃は、機密情報の漏えいや業務の停止といった深刻な被害をもたらす可能性があるため、メーカーから脆弱性を修正するために定期的に提供される「セキュリティパッチ(修正プログラム)」を、公開され次第速やかに適用することが重要です。

管理対象の機器やソフトウェアが多い企業では、パッチ適用管理ツールの活用により、適用状況の可視化や一元管理が可能になります。これにより、対応漏れを防ぎながら効率的な運用が実現できます。

 

方法②社員教育の実施

ダークウェブへの情報流出を防ぐには、技術的なセキュリティ対策だけでなく、情報を扱う従業員一人ひとりの意識向上が不可欠です。知識や警戒心が不足していると、不審なメールの添付ファイルや危険なリンクを誤って開き、マルウェア感染やアカウント情報の窃取、結果としてダークウェブ上での情報売買につながる重大な被害が発生する恐れがあります。

このリスクを減らすには、定期的な社内研修やeラーニングを通じて、最新のサイバー攻撃手口や安全なデータの取り扱い方法を学び、情報セキュリティリテラシーを高めることが重要です。標的型攻撃メールを想定した模擬訓練などを行えば、従業員が実際の攻撃に素早く気づき、被害拡大を防ぐ対応力を身につけられます。

また、セキュリティポリシーやデータ管理ルールを明確に定め、全従業員に徹底周知することも有効です。これらの教育・訓練を一度きりではなく継続的に行うことで、組織全体の防御力を強化し、ダークウェブに自社の情報が流出するリスクを大幅に低減できます。

 

方法③マネージドサービスの活用

情報セキュリティを担う専門人材の確保が難しい企業にとって、「マネージドサービス」を活用することは有効な対策のひとつです。マネージドサービスとは、セキュリティ監視や脆弱性管理、ソフトウェアのパッチ適用、ログ分析などのITセキュリティ業務を、外部の専門業者に委託できるサービスを指します

このサービスを利用することで、最新の攻撃手口や脅威動向に精通したセキュリティ専門家が、24時間365日体制でシステムを監視し、インシデント発生時には迅速な対応を行います。これにより、自社で人材や設備を整えるよりも低コストで、高度なセキュリティ対策を実現でき、社内担当者の負担を大幅に軽減できます。

さらに、マネージドサービスにはファイアウォールやEDR(Endpoint Detection and Response)の運用、脅威インテリジェンスの提供、セキュリティポリシー策定の支援など、幅広いサービスが含まれる場合があります。特に専門部署を持たない中小企業にとっては、こうした外部リソースの活用が、サイバー攻撃の高度化に対応するための重要な手段となります。

ただし、導入にあたっては、委託先の信頼性やサポート体制、対応範囲、インシデント発生時の責任分担などを事前に明確にしておくことが重要です。これにより、外部委託のメリットを最大限に活かしつつ、安全で効率的な情報セキュリティ体制を構築できます。

 

まとめ

本記事では、ダークェブの基本から危険とされている理由、企業が取るべき対策についてわかりやすく解説しました。

ダークウェブは匿名性が高く、違法な取引やサイバー攻撃の温床にもなり得る危険な領域です。企業としては、情報漏えいやシステム侵害といった被害を未然に防ぐためにも、日頃から情報セキュリティ対策を強化しておくことが重要です。

特に、不正アクセスやDDoS攻撃の対策には、WAFなどの導入がおすすめです。中でも「Cloudbric WAF+」は、専門知識がなくても導入しやすく、日々進化する攻撃にも対応可能なクラウド型セキュリティサービスです。24時間365日いつでも電話やメールでサポートできるため、セキュリティに特化した人材がいなくても安心して運用することができます。
「Cloudbric WAF+」については以下のWebサイトで詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

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WAFについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。

「セキュリティ対策に有効なWAFとは?仕組みや種類、おすすめ製品を紹介」

 

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ハッカーとは?クラッカーやホワイトハッカーなどの種類と役割


情報システム部門の担当者にとって、「自社がハッカーの標的となった場合、どのような影響があるのか」を想定することは重要です。実際に被害を受けた際には、緊急対応や原因調査に追われるだけでなく、経営層や関係部署からの説明責任を求められる場面も少なくありません。

とはいえ、ハッカーの攻撃手法や近年の動向について、日常的に把握している担当者は多くないのが実情です。そこで本記事では、ハッカーの基本的な定義を整理したうえで、企業として講じるべきセキュリティ対策について解説します。

 

ハッカーとは?基本的な定義

「ハッカー」と聞くと、コンピューターなどから情報を盗み取る犯罪者を想像する人が少なくありません。しかし、そもそもハッキングとは、コンピューター関連の知識に精通した人がシステムやプログラムのチェックや改善を行うことであり、ハッカーの基本的定義は「コンピューターに精通した技術者」です。そのため、「ハッカー」という言葉には本来、悪事や犯罪を行う人といった意味はありません。

また、企業や公共機関のプラスになるようシステムの問題点を改善する「ホワイトハッカー」の存在もあるため、近年は悪意のあるハッカーを単に「ハッカー」と呼ばず、「ブラックハッカー」や「クラッカー」と区別がつくように呼ぶ傾向も強くなっています。

 

・ハッカーの特徴

前述したように、ハッカーとはコンピューターやネットワーク、暗号技術やプログラム解析などに関して高度なスキルをもつ存在です。それらの知識や技術を犯罪や社会の害になる使い方をするハッカーが存在する一方、システムやプログラムの脆弱性の発見やセキュリティ強化などに貢献するハッカーも存在します。

また、善悪や利益を目的とせず、純粋に技術的な興味からハッキングを行うハッカーも存在します。そのため「ハッカーの特徴」は善悪によって区別されるものではなく、あくまでハッキングのスキルをもつ人物であると理解してください。

 

・ハッカーの歴史と有名なハッカー

世界で初めてのハッキングを、いつ、だれが行ったのかは明確ではありません。しかし1960年代前半に、MIT(マサチューセッツ工科大学)にコンピューターに精通した集団が存在し、ハッカー文化の始祖となったと言われています。

また、「ハッカー」は姿や名前を知られないように行動しているイメージもあるかと思われますが、世界的に有名なハッカーも多数存在します。例えば、ケビン・ミトニックは10代からハッカーとして活動し、1982年に北米防空総指令部へのハッキングを行ったことは、映画の題材にもなっています。

また、エドワード・スノーデンは米国軍やCIA(米国中央情報局)で勤務した経歴をもちつつ、米国の公的機関の問題点を世界中に知らせたことで有名です。スノーデンは、米国政府が監視活動によって市民のプライバシーや自由を侵害していることを知り、政府に対して強い反感をもったことから、世界史に残るような告発を行っています。

 

ハッカーの種類

ひと口にハッカーと言っても、さまざまな種類があります。以下では、その種類と概要について解説します。

 

・ホワイトハッカー

民間企業や公共機関の立場から、システムの脆弱性を発見・修正する役割を担うハッカーです。企業に雇用されている場合もあれば、フリーランスとして活動している場合もありますが、いずれも正当な報酬を得て業務に従事しており、いわゆるアウトローではありません。

その行動から、エシカルハッカー(エシカルは「倫理的な」「道徳的に正しい」などの意味)や、正義のハッカーと表現されることもあります。

ホワイトハッカーは、システムの監視やサイバー攻撃の防止、対応、ペネトレーションテスト(侵入テスト)によるセキュリティ強化などを行います。また、バグバウンティ(企業や組織が特定のシステムの脆弱性を発見した人に報奨金を払う仕組み)に参加することもあります。

 

・ブラックハッカー

ブラックハッカーとは、企業や公的機関、個人のシステムに対して不正にアクセスし、重要情報の窃取やシステムの破壊・改ざんなどを行う悪意ある存在です。一般的に「ハッカー」という言葉を使う場合、このブラックハッカーを指します。

ブラックハッカーは、ウイルスやマルウェアを作り出したり、システムへの攻撃を行ったりします。近年は、DDoS攻撃やランサムウェア攻撃(攻撃の解除と引き換えに金銭を要求する)、フィッシング詐欺(偽のメールなどで悪意のあるサイトに誘導し金銭などを得る)などを行うブラックハッカーが増えています。

ブラックハッカーの行動原理は悪意や自分たちの利益であり、社会的に害を及ぼすことが特徴です。攻撃対象者は少なからずダメージを受け、巨額の損失を伴うこともあります。

 

・グレーハッカー

グレーハッカーは、ブラックハッカーとホワイトハッカーの中間的存在です。企業や個人が運営するシステムに許可なく侵入し、脆弱性を発見したうえで報告する場合もありますが、悪用するケースも見られます。

善意による報告を行い、システムを改善できる結果になったとしても、許可なくシステムに侵入する時点で違法性が高いとみなされます。そのため、分類上はブラックハッカーに分類されることも少なくありません。

行動としては、システム運営者が許可しないペネトレーションテスト(侵入テスト)を行い、セキュリティホールや脆弱性を発見して報酬を要求することが一般的です。

 

・クラッカー(Cracker)

クラッカーは、企業のサーバーに侵入して情報を盗んだり、不正にコピーを作成したりするなど、悪意のある行動をとる存在です。そのため、ブラックハッカーとほぼ同じ意味で使われることもありますが、明確に区別する場合は、クラッカーのほうが違法行為に特化した存在とされます。

また、ソフトウェアを不正に改造してチートを可能にする、著作権を侵害する、違法ダウンロードサイトを運営することなどもクラッカーの活動に含まれます。

 

ハッカーの主な手法

ハッカーが使う手口は多数存在しますが、大きくは人の心理を利用する攻撃手法、マルウェア攻撃、ゼロデイ攻撃に分類されます。

 

・人の心理を利用する攻撃手法

なりすましメールやスピアフィッシング(特定の対象に向けて行うフィッシング)、偽のサポート窓口を装った詐欺などがあります。

偽のメールやフィッシングなどの手口は、技術的な攻撃ではなく、人の思い込みや行動パターンを悪用する点が特徴です。これらの手法をソーシャルエンジニアリングと呼ぶこともあります。ソーシャルエンジニアリングという名称は一般的な業務名に見えるかもしれませんが、情報を盗む手口のひとつです。

 

・マルウェア攻撃

マルウェアとは、悪意あるソフトウェアやコードの総称で、ウイルスやワーム、スパイウェア、トロイの木馬などを含みます。データの消去や改ざん、外部ネットワークへの流出や外部への攻撃など、種類は無数に存在し、DDoS攻撃やランサムウェア攻撃などにも利用されます。

 

・ゼロデイ攻撃

まだ対応策が発表されていないシステムの脆弱性を狙って行う攻撃です。根本的な対策が難しいため、こうした攻撃を受けた場合、非常に大きな被害につながる可能性があります。

そのため、該当するソフトウェアの使用を一時的に中止したり、ゼロデイ攻撃に関連する不審な通信を遮断したりするなど、被害を最小限に抑えるための緊急対応が求められます。

 

企業が取るべきハッカーへの対策

ブラックハッカーやクラッカーによる攻撃はいつ行われるかわからないので、企業としては日ごろから対策を講じておく必要があります。企業が取るべき対応として、主に以下が挙げられます。

  • 強力なパスワードと多要素認証(MFA)の導入
    パスワードは使いまわしを避け、できるだけ強化することが重要です。近年は、パスフレーズと呼ばれる複数の単語を組み合わせた文章を使うことで、安全性を強化する動きもあります。また、パスワードと指紋認証など、複数の手法を併用する多要素認証(MFA)も有効です。
  • OSやソフトウェアの定期的な更新
    OSやソフトウェアには、システムの脆弱性を修正するために、管理元から随時アップデートが提供されています。
    そのため、常に最新のバージョンを適用し、OSやソフトウェアを最新の状態に保つことが重要です。
  • 従業員教育
    従業員にマルウェアやフィッシング詐欺などの存在や手口、大きな被害を受けた企業の実例などを紹介し、日常から気をつけるべきことや、取ってはいけない行動などを教育しましょう。
  • 必要のないソフトウェアをインストールしない
    ソフトウェアのインストールをきっかけに、マルウェアなどの脅威が侵入するケースは少なくありません。
    そのため、不要なソフトウェアや、提供元が不明確なソフトウェアのインストールは避けることが推奨されます。
  • 信頼できるクラウド環境にデータを保存する
    クラウドサービスにはさまざまな提供元があり、信頼性にも大きな差があります。
    そのため、サービスの選定にあたっては、セキュリティ対策や運用実績などを確認し、信頼性の高いクラウド環境を選ぶことが重要です。
  • ファイアウォール・クラウドWAF(Web Application Firewall)の活用
    Webサイトやアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃には、ファイアウォールやクラウドWAFが有効な対策となります。クラウドWAFの導入を検討されるのであれば、「Cloudbric WAF+」がおすすめです。

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ホワイトハッカーの必要性

ブラックハッカーやクラッカーによる悪意ある攻撃のリスクは、企業の大小によらず存在します。そのため、日本政府もホワイトハッカーの育成に力を入れており、企業単位でもホワイトハッカーを雇用する例が増えています。

被害を受けてからでは取り返しがつかないケースもあるので、この機会にホワイトハッカーの必要性を確認し、雇用や依頼などを検討することを推奨します。

 

ハッカーによる攻撃の最新動向と今後のセキュリティ対策

近年、AIはさまざまな分野で活用が進んでいますが、ブラックハッカーやクラッカーもAIを活用し、サイバー攻撃の高度化を図っています。
また、ディープラーニング技術の進展により、偽物と見分けがつきにくい音声や画像を用いた詐欺行為も増加しています。

このように、攻撃者側は次々と最新技術を取り入れ、サイバー攻撃を高度化させているのが現状です。一方で、防御側でも新たなセキュリティ技術の開発が進められています。

たとえば、ブロックチェーンはもともと暗号技術を基盤とした仕組みであり、セキュリティ対策にも活用されています。さらに、複数の秘密鍵の利用や、インターネットから隔離されたオフライン鍵の活用、2段階認証の導入などにより、安全性が一層強化されています。

今後も悪意あるハッカーとセキュリティ対策の攻防は続いていくため、新しい情報に常にアンテナを張ることを心がけましょう。

 

まとめ

世の中には多数の悪意あるハッカーが存在しており、ランサムウェア攻撃やDDoS攻撃、ゼロデイ攻撃など手法も多様化しています。日本の企業が被害を受けた実例もあり、個人や企業としてセキュリティ対策を行うことは必須です。そのため、この機会に悪意ある攻撃への対策強化を図ることをおすすめします。

クラウドWAFは、悪意をもったハッカーからの攻撃をリアルタイムでブロックし、Webサイトやアプリケーションを守るセキュリティ対策として有効です。企業のWebシステムの安全性向上に資する「Cloudbric WAF+」について詳しく知りたい方は、以下のサイトをご参照ください。

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シグネチャーとは?セキュリティ分野での役割と重要性を解説


企業の情報システムを管理するうえで、Webアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃は深刻な脅威です。サイバー攻撃の手法が高度化・多様化する中、システム担当者は常に最新のセキュリティ対策を検討し、適切な防御策を講じる必要があります。その中でも、シグネチャー方式のWAFは広く採用されているセキュリティ対策のひとつです。

本記事では、セキュリティ分野におけるシグネチャー(シグネチャ)の定義や種類、重要性について解説します。活用例や導入時の流れにも触れ、シグネチャー方式の課題を解決するサービスにも言及します。

 

シグネチャーとは?セキュリティ分野での役割

シグネチャー(シグネチャ、signature)は、もともと「署名」や「サイン」を意味する英単語です。近年では、以下のような意味で使われることも増えています。

  • 電子メールやSNS:送信者の名前や所属などの情報を文末に自動で挿入する機能
  • プログラミング:メソッドや関数の名前、データの型、引数の数などを示す情報
  • セキュリティ:不正アクセスやマルウェアを検知するための特徴的なデータやルール

本記事では、特にセキュリティ分野に関連して使われるシグネチャーに着目して解説します。

セキュリティ分野でのシグネチャーは、攻撃パターンやマルウェアの特徴を識別するためのデータセットや条件定義のことを指します。たとえば、WAF(Web Application Firewall)では、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングといった脅威度の高い攻撃を検知・防御するために利用します。

なお、WAFとは、Webアプリケーションへの不正アクセスを防ぐためのセキュリティ対策です。Webサイトとユーザーの間の通信を監視・解析し、攻撃パターンに一致するリクエストをブロックすることで、Webアプリケーションの脆弱性を悪用した攻撃から保護します。

 

シグネチャーの種類

シグネチャーには以下のような種類があります。

  • 電子署名(Digital Signature)
    暗号技術によって生成され、文書やデジタルデータの送付者の真正性認証、改ざん検出に役立ちます。
  • ウイルスを検出するシグネチャー(Virus Signature)
    ウイルスやマルウェアを特定するための識別情報で、セキュリティソフトに利用されます。既知のウイルスの特徴的なパターンと照合することで脅威を迅速に検出できます。
  • ネットワークシグネチャー(Network Signature)
    通信パターンを確認することで、ネットワーク経由の不正な動きを検出します。SQLインジェクションやDDoS攻撃の防止に役立ちます。IPS(侵入防止システム)やIDS(侵入検知システム)に利用されます。
  • データの改ざんや破損を検出する(Data Signature)
    公開鍵暗号やハッシュ関数などの技術を利用して生成される識別情報です。データ作成者の証明や改ざんの有無を確認するために使用されます。

 

シグネチャーの重要性

セキュリティ分野において、シグネチャーはデータの安全性や信頼性を確保するために不可欠な技術です。サイバー攻撃の増加や電子取引の普及に伴い、その重要性はますます高まっています。

 

・データ改ざんやなりすましの防止になる

悪意ある第三者によってデータを改ざんされてしまうと、業務の運用やデータの管理などに深刻な影響をおよぼす可能性があります。シグネチャーを適用すると、データのハッシュ値を検証し、改ざんの有無を迅速に特定することが可能です。そのためシグネチャーは通信の安全性確保や向上に貢献します。

また、フィッシングメールなどのなりすましメールは、人間の目では見分けにくいケースも多く、さまざまな被害が報告されています。シグネチャーを用いた電子署名によって送信元の真正性を確認できるため、なりすましメールによる詐欺や攻撃のリスクを軽減できます。

 

・マルウェアやサイバー攻撃を検知できる

マルウェアやサイバー攻撃は年々手口の巧妙化が進んでいるため、既知の脅威を迅速に検出し、適切な対策を講じることが不可欠です。シグネチャーを活用することで、マルウェアのコードや挙動をデータベースに登録し、一致するパターンを検知して脅威を素早くブロックできます。

また、パターンファイルを定期的に更新することで、新たなウイルスや攻撃手法にも迅速に対応できます。

 

・法律面やビジネス面で信頼性の向上につながる

電子契約やデジタル取引が普及する中、取引における契約の真正性を保証することは企業にとって重要な課題です。シグネチャーは電子署名として機能し、契約の証拠能力を向上させます。これにより、契約時のトラブル回避や法的な証拠の確保が可能です。クライアントやユーザーからの信頼性が向上し、企業の競争力強化にもつながります。

 

シグネチャーの活用例

シグネチャーは、WAFでの攻撃探知やウイルス対策ソフトのパターンファイル、電子契約サービスでの応用などのシーンで活用されています。

 

・WAFでの攻撃検知

多くのWAFは、Webアプリケーションへの攻撃を防ぐために名簿状に登録されたシグネチャーを参照し、通信を検査します。過去に発見された攻撃のパターンを記録し、リクエストやサーバの応答を照合することで不正なアクセスを検知・遮断する仕組みです。一致するパターンが見つかった場合、あらかじめ設定されたセキュリティポリシーに基づいて警告を出したり、通信を遮断したりといった対策を講じます。

シグネチャー方式の強みは、既知の攻撃に対して高い精度で防御できる点です。特定の攻撃パターンのみを定義するため、誤検知率を抑えることができます。

シグネチャー方式以外には、ロジックベースと呼ばれる方式があります。シグネチャー方式が「名簿を見て判断する」のに対し、ロジックベース方式は「事前に定めたルール(ロジック)をもとに攻撃を検知する」仕組みです。シグネチャー方式では過去に発見された攻撃をもとにパターンを登録しますが、ロジックベース方式では攻撃ごとの個別のパターンを記録せず共通する特徴を分析してルールを導き出します。そのため、ひとつのルールが多数の攻撃パターンをカバーできるという特徴があります。

 

・ウイルス対策ソフトのパターンファイルとして活用

シグネチャーはマルウェアやウイルスのパターンファイル(識別情報)として活用できます。マルウェアやウイルスは日々新たに生み出されており、従来の防御策だけでは対応しきれません。

しかし、パターンファイルを定期的に更新しておけば、新たに生み出された脅威にも素早く対応することが可能です。具体的には、既知のマルウェアの特徴をデータベース化し、それに基づいてスキャンを行うことで、パターンに一致する脅威を高精度で検知できます。この仕組みにより、万が一ウイルスが侵入したとしても、被害を最小限に抑えることが可能です。

 

・電子契約サービスなどでの応用

近年、電子契約はさまざまな場所で利用されていますが、データの改ざんリスクも存在します。その対策として有効なのが、シグネチャーを活用した電子署名です。電子署名は、契約文書のデータから生成されたハッシュ値を暗号化して付与することで、内容の改ざんを防ぎ、契約の真正性を保証します。万が一、契約文書が改ざんされた場合でも、署名の検証時に一致しないため、不正な変更を即座に検出できます。

また、電子署名を活用することで、リモートワーク環境でも安全に契約手続きを進めることが可能です。対面での押印や書類の郵送が不要となり、契約の迅速化にもつながるため、業務効率化に貢献します。

 

シグネチャー導入の流れ

一般的に、以下のような流れでシグネチャーを導入します。

  • 自社のセキュリティ要件を洗い出す
  • シグネチャーの運用設計を実施し、関係者と共有する
  • 導入後の保守・運用を見据え、外部ベンダーとの連携や監視体制を整備する

まず、自社のシステム構成や想定されるリスクを明確にし、セキュリティ要件を洗い出します。どのような脅威に対応する必要があるのかを把握することで、適切な製品の選定が可能です。

次に、シグネチャーの運用設計を行い、適切な運用フローを構築します。シグネチャーの適用範囲や管理・更新のルールを策定し、社内のIT部門やセキュリティ担当者、経営層などと情報を共有しましょう。

最後に、導入後の運用を想定し、外部ベンダーとの連携や監視体制を整備します。社内にセキュリティの専門家がいない場合、シグネチャーの適切な設定や継続的な更新を自社内だけで行うのは困難です。信頼できるベンダーを選定し、監視体制を強化することで、長期的なセキュリティの維持につなげましょう。

 

シグネチャー導入の注意点

シグネチャーの導入や運用にあたっては以下のような注意点も存在します。

  • 誤検知リスク
  • 適切な更新が必要
  • 運用コストの上昇

シグネチャーは数が増えるほど誤検知のリスクが高まります。シグネチャー方式では、新たな攻撃が発見される度にシグネチャーを追加しなければならず、頻繁なアップデートが必要です。しかし不要なシグネチャーが蓄積されると正常な通信まで遮断してしまう可能性があるため、必要なシグネチャーのみを維持しなければなりません。

適切な更新が必要になる点も重要です。攻撃手法は日々進化しており、シグネチャーの更新が滞ると新たな脅威に対応できません。また、シグネチャーが作成されていない「ゼロデイ攻撃」には対処が難しく、シグネチャー方式だけでは完全な防御が難しいことを理解しておく必要があります。

運用コストも無視できません。一部のベンダーでは機械学習を活用して不要なシグネチャーを最適化する取り組みも行われています。しかし、必ずしも最適な結果が得られるわけではなく、コストが上昇する場合もあります。

それでも、既知の脅威への確実な防御手段として、シグネチャーの導入は依然として有効です。

 

まとめ

シグネチャー方式は既知の攻撃への有効な対策ですが、新たな攻撃が次々に登場する中ですべての攻撃を記録するのは困難です。ゼロデイ攻撃への対応が難しいという課題もあります。

こうした課題を解決する手段としておすすめなのが、クラウド型Webセキュリティプラットフォームの「Cloudbirc WAF+」です。シグネチャーベースの検知に加え、AIや機械学習を活用したロジックベースの分析を併用することで、未知の攻撃にも柔軟に対応可能です。WAFによるセキュリティ対策を検討する際には、ぜひCloudbric WAF+をご活用ください。

 
シグネチャーとロジックの違いに関しては、こちらの記事も併せてお読みください。

WAF、シグネチャー方式とロジックベースの違いとは?

 

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