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ペネトレーションテストとは?脆弱性診断との違いや目的・方法について解説

サイバー攻撃の手口が高度化・巧妙化する中、自社システムの防御力を客観的に検証する「ペネトレーションテスト」が注目されています。

この記事では、ペネトレーションテストの基本や脆弱性診断との違い、ペネトレーションテストの目的や実施の流れを紹介します。

 

ペネトレーションテストとは

ペネトレーションテスト(侵入テスト)とは、セキュリティの専門家であるホワイトハッカーが、実際のサイバー攻撃を模した侵入を企業のシステムやネットワークに対して試み、セキュリティ上の弱点(脆弱性)を明らかにする検証手法です。情報漏えいや不正アクセスが多発する現代において、潜在的なリスクを事前に洗い出し、攻撃を未然に防ぐための重要な対策として注目されています。

このテストの最大の特徴は、攻撃者と同じ視点でシステムを評価できることです。机上のセキュリティ診断だけでは見つけにくい盲点や想定外の侵入経路を把握でき、実際の被害につながる前に優先度の高い対策を講じられます。テストの結果は詳細なレポートとして提供され、発見された脆弱性の内容や利用された攻撃手法、修正の優先度、具体的な改善策が提示されるため、実践的なセキュリティ強化に役立ちます。

ペネトレーションテストには、社外からの攻撃を想定した「外部侵入テスト」と、内部ネットワークや社員アカウントの不正利用を想定した「内部侵入テスト」があり、システム導入時や大規模アップデート、クラウド環境への移行時など、セキュリティリスクが増大しやすいタイミングで実施することが効果的です。

ペネトレーションテストと脆弱性診断の違い

ペネトレーションテストとよく似ているサービスに「脆弱性診断」があります。ペネトレーションテストと脆弱性診断の違いは、下表のとおりです。

 

項目 ペネトレーションテスト 脆弱性診断
主な目的 実際の攻撃を模倣して侵入可能性を検証 セキュリティの弱点を網羅的に検出
アプローチ 専門家が攻撃者視点で実演 自動・手動ツールでチェック中心
対象範囲 特定の経路や攻撃シナリオ(限定的) システムやアプリ全体(広範囲)
実施タイミング 高度な防御検証が必要な局面 システム更新時や定期チェックなど
向いている企業 金融・医療・重要インフラ、PCI DSS対象企業等 Webサービス運営企業、取引先の要求対応等
報告内容 攻撃手法・被害範囲・リスク分析 脆弱性リストと推奨対応策
実施者 セキュリティ専門家 ツール+診断者
難易度・コスト 高め(専門性が必要) 中程度(比較的導入しやすい)

 

ペネトレーションテストは、実際に攻撃を試みてシステムへの侵入可否や影響範囲を検証する実践的な手法です。一方、脆弱性診断はツールやチェックリストで既知の脆弱性を洗い出す調査的手法であり、必ずしも侵入は行いません。

それぞれ目的や手法、対象範囲に違いがあり、自社のセキュリティ課題や予算、求められる精度に応じて使い分けることが重要です。両者を適切に使い分けることで、より強固なセキュリティ体制の構築につながります。

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ペネトレーションテストの種類

ペネトレーションテストは、調査対象によって2つのテスト方法があります。ここでは、それぞれの内容について紹介します。

 

①内部ペネトレーションテスト

内部ペネトレーションテストとは、企業の社内ネットワーク内にあるシステムに対して行うセキュリティ検証のことです。主な対象は、アプリケーションサーバー、認証サーバー、データベースサーバーなど、内部で重要な役割を果たすシステムです。

外部からの直接アクセスが難しいシステムであっても、社内の不正利用や、すでに侵入に成功した攻撃者によって悪用されるリスクは完全には排除できません。内部ペネトレーションテストは、こうした内部からの脅威を想定し、侵入後に発生し得る被害の範囲や影響を事前に把握し、被害を最小限に抑えるために実施されます。

②外部ペネトレーションテスト

外部ペネトレーションテストとは、インターネットからアクセス可能な公開サーバーやWebアプリケーション、ネットワーク機器などを対象に実施するセキュリティ検証です。実際に外部から攻撃を受けた場合に、どの程度侵入が可能かを確認し、システムの脆弱性や攻撃リスクを洗い出します。

テストでは、セキュリティの専門技術者が実際にネットワーク越しに侵入を試み、既知の脆弱性の有無や、ファイアウォール・侵入検知システムの突破可能性などを調査します。例えば、標的型メールを用いた擬似的なマルウェア送信、ZIPファイル偽装による従業員の反応確認など、現実に近い攻撃シナリオを再現し、組織の防御体制を実践的に検証できます。

外部ペネトレーションテストは、サーバーやWebサイトだけでなく、VPN機器、リモートアクセス環境、クラウドサービスなども対象となります。

 

ペネトレーションテストの手法

ペネトレーションテストの実施方法の代表例がホワイトボックステストブラックボックステストです。それぞれ事前に得られる情報量や攻撃シナリオが異なり、目的や状況に応じて使い分けられます。

①ホワイトボックステスト

ホワイトボックステストは、テスト対象のシステム構成、ソースコード、設定情報などを事前に提供されたうえで行う手法です。内部構造を把握しているため、網羅的かつ効率的に脆弱性を発見できます。特に認証の仕組みやアクセス制御、ビジネスロジックの欠陥など、外部からでは見えにくい問題の洗い出しに適しています。一方で、事前情報を活用するため、実際の攻撃者が未知の状態から侵入を試みる状況とは異なる点に留意が必要です。

②ブラックボックステスト

ブラックボックステストは、攻撃対象に関する事前情報をほとんど持たず、外部からの攻撃者視点で実施する手法です。公開情報やオープンなサービスを起点に侵入経路を探るため、実際のサイバー攻撃に近いシナリオで脆弱性を検証できます。情報収集から侵入、権限昇格、データ抽出までの一連の流れを確認できるため、外部からの防御力評価に有効です。ただし、情報不足によりテスト範囲が限定され、内部の深部まで検証できない場合もあります。

 

ペネトレーションテストの目的

ペネトレーションテストの様子

ペネトレーションテストを実施する目的を4つ紹介します。

 

目的①システムのセキュリティ対策の強度を評価する

ペネトレーションテストの主な目的は、システムが備えているセキュリティ対策が実際のサイバー攻撃に対してどの程度有効に機能するかを評価し、防御力を可視化することです。

テストでは、ファイアウォール、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)、IDS(侵入検知システム)、IPS(侵入防御システム)などの防御機構に対し、実際の攻撃を模した手法を用いて侵入を試みます。その結果、どの程度攻撃を防げるかが実例や数値で明確になり、経営層やIT部門がセキュリティ強化の優先度を判断する材料になります。

さらに、書類上のチェックや設定確認だけでは見落とされやすい運用面の盲点や、人為的ミスによるセキュリティリスクも浮き彫りになります。これにより、単なる理論上の対策ではなく、現場で実効性のあるセキュリティ強化策を立案することが可能です。

目的②脆弱性を発見する

ペネトレーションテストは、実際のサイバー攻撃手法を模倣することで、システム内部に潜む脆弱性を洗い出すセキュリティ検証手法です。複数の脆弱性を連鎖的に利用した高度な攻撃も再現できるため、一般的なセキュリティ診断では見つけにくい侵入経路の特定に役立ちます。

例えば、Webアプリケーションの設定ミスやネットワーク構成上の隙が攻撃者に悪用されると、認証情報が盗まれたり、通常ではアクセスできない管理者権限が奪われたりする可能性があります。このような重大なリスクを事前に明らかにすることで、実際の攻撃が行われる前に対策を講じることができます。

さらに、ペネトレーションテストでは、攻撃後にどの範囲まで侵入が可能か、どのような経路でデータが不正取得されるかまで詳細に確認できるため、被害発生時の影響範囲を正確に把握できます。テスト結果は、システムの設計やアクセス権限の見直し、パッチ適用など、実践的かつ優先度の高いセキュリティ対策の策定に活用できます。

サイバー攻撃手法は日々進化しており、従来の脆弱性診断ツールだけでは対応しきれない新たな攻撃経路が生まれています。そのため、ペネトレーションテストを定期的に実施し、最新の攻撃パターンを想定した評価を行うことが、システム全体の防御力を高めるうえで重要です。

目的③想定される被害レベルを把握する

ペネトレーションテストを実施することで、万が一攻撃が成功した場合にどの程度の被害が発生するのか、その規模や影響範囲を具体的に把握できます。単に脆弱性が存在するかどうかを確認するだけでなく、情報漏えい、システムの停止、データ改ざん、サービスの長期ダウンなど、実際に起こり得るリスクを可視化できるため、経営層や関係部門にも現実的な危機感を伝えやすくなります。

また、攻撃者が一度侵入に成功した後、社内ネットワーク内でどの程度影響を拡大できるのか(横展開)の評価も可能です。これにより、最初の侵入だけでなく、被害がどこまで拡大し得るかを把握でき、優先度の高い防御策や侵入拡大を防ぐセキュリティ対策を検討する際の判断材料となります。

さらに、この結果はリスク管理やBCP(事業継続計画)の見直しにも有効活用できます。被害想定が具体化されることで、サイバー攻撃を受けた際の影響度を定量的に評価でき、事前に復旧手順や代替手段を整備するなど、被害を最小限に抑える体制を構築できます。

近年は、サプライチェーン攻撃やランサムウェアの被害が拡大しており、外部侵入後の横展開による被害が深刻化しています。そのため、ペネトレーションテストによって侵入後の動きを再現し、実際の攻撃シナリオを想定した防御力評価を行うことは、企業のサイバーセキュリティ強化に欠かせない取り組みとなっています。

目的④セキュリティ対策の強化ポイントを明確にする

ペネトレーションテストの結果は、システム全体のセキュリティ対策をどの部分から優先的に強化すべきかを判断する上で非常に有効です。テストによって発見された侵入経路や脆弱性は、深刻度や攻撃される可能性の高低によって優先度をつけられるため、限られた予算や人員を効率よく配分し、効果的なセキュリティ対策を講じることができます。

報告書には、検出された脆弱性の詳細や攻撃に利用される可能性がある手法だけでなく、具体的な改善策や運用上の見落としやすいポイントも記載されます。これにより、IT部門やセキュリティ担当者だけでなく、経営層とも課題を共有しやすくなり、組織全体でセキュリティリスクに対応できる体制を整えることが可能です。

さらに、報告書をもとに改善策を実行し、再度ペネトレーションテストを行うことで、対策が有効に機能しているかを検証でき、セキュリティレベルを段階的に向上させることができます。こうしたプロセスは、サイバー攻撃手法の進化に対応するうえでも重要であり、継続的なセキュリティ強化の一環として活用されています。

 

ペネトレーションテストのステップ

ここまでペネトレーションテストについて紹介してきましたが、実際はどのような手順で行うとよいのでしょうか。3つのステップに分けて紹介します。

 

ステップ①シナリオの作成

ペネトレーションテストを実施する際には、まず実際のハッカーが仕掛ける可能性のある攻撃を想定し、テスト用のシナリオを作成します。対象となるシステムの構成や利用環境、過去のインシデント事例などを踏まえて、現実的で再現性の高い攻撃手法を選定することが重要です。

例えば、Webアプリケーションに対してはSQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)、ネットワーク機器に対してはポートスキャンや脆弱性を突く侵入試行など、システム特性に応じた複数の攻撃手法が検討されます。

すべての攻撃パターンを網羅する包括的なアプローチもありますが、テスト範囲が広くなる分、準備や実施にかかる時間やコストが増大するのが課題です。そのため、テストの目的や想定するリスクをあらかじめ明確にし、攻撃シナリオを絞り込むことで、限られたリソースの中でも効率的かつ効果的なペネトレーションテストを行うことができます。

さらに、攻撃シナリオの設計段階で事前に経営層やIT部門と連携し、優先的に評価すべき領域を決定することで、ビジネス影響度の高い脆弱性を重点的に洗い出せます。これにより、テスト結果を実際のセキュリティ強化計画に直結させやすくなります。

ステップ②ペネトレーションテストの実施

作成した攻撃シナリオに基づいて、ペネトレーションテストを実施します。テストには、自動化ツールを使って大量の脆弱性を効率的に検出する方法と、専門知識を持つセキュリティ技術者が手動で攻撃を再現し、より精密な診断を行う方法があります。実際には両方を組み合わせて実施されることが多く、幅広い攻撃パターンを検証できます。

ただし、使用するツールの性能や精度、テストを担当する技術者のスキルや経験によって、発見できる脆弱性やテスト結果の質には差が出る場合があります。そのため、外部のセキュリティベンダーに依頼する際には、過去の実績、提供されるレポートの内容、インシデント発生時のサポート体制などを事前に確認し、信頼性の高いパートナーを選定することが重要です。

さらに、テスト実施時には、対象システムへの影響やサービス停止リスクを最小限に抑えるため、事前にスケジュールや範囲を明確化し、必要に応じてバックアップや復旧手順を準備しておくことが望まれます。これにより、安全かつ効果的にペネトレーションテストを行い、実際のセキュリティ強化につなげることができます。

ステップ③結果報告の受領

ペネトレーションテストを実施した後は、テスト結果の受領と分析を行います。外部のセキュリティベンダーに委託した場合は、レポートの提出や報告会を通じて結果が共有され、検出された脆弱性の内容や攻撃手法、リスクの深刻度、推奨される改善策が提示されるのが一般的です。一方、自社でテストを実施した場合は、得られたデータを整理し、侵入経路や問題点を明確化して社内共有します。

重要なのは、結果を確認するだけで終わらせず、そこから実際のセキュリティ改善につなげることです。検出された脆弱性の深刻度や影響範囲を評価し、優先順位をつけて対応策を検討・実行することで、効率的かつ効果的な防御力の向上が可能になります。

また、改善策を実施した後には、再度ペネトレーションテストやセキュリティ診断を行い、対策が有効に機能しているかを検証することが推奨されます。これにより、同じ脆弱性の再発防止や、新たな攻撃手法への対応力強化につなげられ、継続的にセキュリティレベルを高めることができます。

ペネトレーションテストに関するよくある質問とその回答

Q:テスト頻度は?

A:ペネトレーションテストは、年1回程度の定期実施が推奨されます。加えて、大規模なシステム改修や新機能追加の際にも行うことで、新たな脆弱性を早期に発見できます。


Q:システムの稼働に影響はある?

A:通常は稼働への影響を最小限に抑えて実施しますが、侵入試験の性質上、一部のサービスに遅延や一時的停止が発生する場合があります。事前に影響範囲を調整することが重要です。


Q:ペネトレーションテストを実施するタイミングは?

A:本番稼働前や重要アップデート後が適しています。特に外部公開前に行うことで、公開時のリスクを大幅に低減できます。


Q:ペネトレーションテストを行うのに必要なものは?

A:テスト環境や対象範囲の情報、アクセス権限、契約書などが必要です。外部委託の場合は秘密保持契約(NDA)の締結も欠かせません。


Q:ペネトレーションテストは違法ではない?

A:正規の契約と許可のもとで実施される限り合法です。無断で行う侵入行為は不正アクセス禁止法に抵触するため、必ず合意を得てから行います。

 

まとめ

ペネトレーションテストは、実際のサイバー攻撃を想定して脆弱性を洗い出し、被害リスクや優先的な対策ポイントを明確にできる有効なセキュリティ手法です。特にクラウド環境の利用が進む今、外部・内部両面からの防御体制を整えることが求められています。

情報漏えいやサービス停止といった重大なリスクを未然に防ぐためにも、自社システムの安全性を定期的に確認し、必要に応じてペネトレーションテストの導入を検討してみましょう。

 

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トロイの木馬ウイルスとは?特徴・症状・感染時の対処法をわかりやすく解説


近年、サイバー攻撃の手口はますます巧妙化しており、中でも「トロイの木馬ウイルス」は危険性の高いマルウェアとして、企業や個人に深刻な脅威を与えています。

本記事では、トロイの木馬について、他のマルウェアとの違いや感染時に起こる主な症状、被害事例や感染後の対処方法について紹介します。

 

トロイの木馬ウイルスとは

トロイの木馬ウイルスとは、一見すると無害に見えるファイルやソフトウェアに偽装し、パソコンやスマートフォン、サーバーなどの端末に侵入して裏で不正な操作を行うマルウェアの一種です。名称は、ギリシャ神話で巨大な木馬の内部に兵士を隠して敵の城内へ侵入した「トロイの木馬」に由来しています。

典型的な感染手口としては、画像ファイルや文書ファイル、無料アプリなどに偽装し、利用者がファイルを開いた瞬間にウイルスを実行させる方法があります。感染すると、端末内の情報を盗み出したり、外部からの遠隔操作を可能にしたりするほか、他のマルウェアを追加でダウンロードさせることもあります。

近年では、偽装すら行わず、ソフトウェアやOSの脆弱性、設定ミスを突いて自動的にインストールされるケースも増加しています。これにより、ユーザーがファイルを開くなどの操作をしなくても感染が広がる危険性が高まっています。

さらに、トロイの木馬はランサムウェアやスパイウェアなど他のマルウェアの侵入口として利用されることも多く、感染した端末がボットネットの一部となってサイバー攻撃に悪用される恐れもあります。このため、セキュリティソフトの導入や最新のパッチ適用、信頼できないファイルやリンクを開かないなど、日常的な予防策が不可欠です。

 

他のウイルスとの違い

トロイの木馬ウイルスは、コンピュータウイルスやワームといった他のマルウェアと特徴や感染のきっかけ、拡散方法などに違いがあります。主な相違点は、下表のとおりです。

トロイの木馬 コンピュータウイルス ワーム
特徴 正常なソフトに見せかけて侵入し、不正動作を行う 他のプログラムに寄生して不正に動作させる 自己増殖し、単体で動作可能なプログラム
感染のきっかけ ユーザーがファイルを開くなどの操作によって感染 寄生先のプログラムが実行されることで感染 ネットワーク経由で自動的に拡散・感染
拡散方法 自動では拡散しない(拡散機能を持たない) 寄生したプログラムを介して他のファイルに拡散 自律的に他の端末にコピー・拡散されていく

 

トロイの木馬ウイルスは、従来のコンピュータウイルスのように他のプログラムに寄生して感染を広げるわけでも、ワームのように自律的にネットワーク上へ拡散する機能も持ちません。その代わり、見た目を正規のファイルやソフトウェアに偽装し、ユーザー自身に開かせることで感染を成立させる「だまし」の手口が特徴です。システムの脆弱性だけでなく人間の心理を突く点が、トロイの木馬を特に巧妙で危険なマルウェアといえる理由です。

感染すると、情報の盗み出しや外部からの遠隔操作、さらには他のマルウェアの侵入補助など、深刻な被害につながる可能性があります。そのため、トロイの木馬の特性を正しく理解し、不審なファイルやリンクを不用意に開かない習慣を持つことが重要です。

 

トロイの木馬ウイルスの種類

トロイの木馬ウイルスには以下の3種類があります。

 

①ダウンローダー型

ダウンローダー型は、感染後に別のマルウェアをダウンロードし、自動的にインストールします。たとえば、ランサムウェアやスパイウェア、キーロガーなどを追加で展開する「ステージング」の役割を果たすこともあります。

②バックドア型

バックドア型は、被害者のシステムに「裏口」を設け、攻撃者が遠隔から不正操作できるようにします。ファイルの送受信、実行、削除など、多様な操作が可能です。

③キーロガー型

キーロガー型は、キーボード入力を記録し、ログイン情報やクレジットカード番号などの機密情報を盗みます。ソフトウェア型のものはルートキット機能を持ち、隠蔽性が高いのが特徴です。

 

他にも「バンカー型(金融情報窃盗)」「ランサム型(身代金要求)」「偽アンチウイルス型(スケアウェア)」など、多様な派生があります。それぞれ手口や目的が異なるため、検出・防御には多層的なセキュリティ対策と教育が重要です。

 

トロイの木馬ウイルスが引き起こす被害

トロイの木馬ウイルスはどのような被害を引き起こすのでしょうか。主な被害を3つ紹介します。

 

被害①機密情報の漏えい

トロイの木馬ウイルスに感染すると、パソコンやスマートフォンに保存されている個人情報や業務データが外部に不正取得される恐れがあります。実際の被害例として、攻撃者が端末に保存されたパスワード、クレジットカード情報、オンラインバンキングの認証情報などを盗み取り、不正利用や不正送金に悪用したケースが報告されています。

また、一部のトロイの木馬には「キーロガー機能」が備わっており、キーボードの入力内容を記録して攻撃者に送信することが可能です。これにより、ユーザーが入力したログイン情報やメールの内容、チャットのやり取りまでが盗み見られる危険があります。

キーロガーについては以下の記事でも詳しく解説しています。参考にしてください。
「キーロガーの対策とは?仕組みや危険性・スマホでも気をつけるべきポイントを解説」

 

被害②パソコンのパフォーマンス低下

トロイの木馬ウイルスに感染すると、ユーザーが気づかない裏側で不正な処理が行われ、パソコンやスマートフォンのCPU、メモリ、ストレージといったシステムリソースを大量に消費することがあります。その結果、端末の動作が極端に遅くなり、アプリケーションの起動や操作に時間がかかるなど、日常利用に支障が出る場合があります。

さらに、トロイの木馬が外部サーバーとの間で大量のデータを送受信することで、ネットワーク負荷が増加し、インターネット接続が不安定になったり、通信速度が著しく低下したりするトラブルが発生することもあります。こうした状態を放置すると、最終的にシステムがフリーズしたり、OSが起動しなくなったりと、端末の使用が困難になる深刻な障害に発展する恐れがあります。

一部のトロイの木馬は、暗号資産のマイニングやボットネットへの参加といった外部攻撃の踏み台として端末を利用するケースもあり、その場合はリソース消費がさらに増大します。これらの動作はユーザーが直接確認しにくく、気づかないうちに被害が拡大することも珍しくありません。

 

被害③経済的な損失

業務システムや生産設備がトロイの木馬ウイルスに感染して制御不能になると、サービス提供の停止や製品の出荷遅延など、企業活動全体に大きな混乱を引き起こす恐れがあります。システムの復旧には、多くの人員や時間、専門的な対応が必要となり、復旧までの間に発生する損害額が膨らむリスクも高くなります。

さらに、感染した端末やサーバーから機密情報や顧客の個人情報が外部に流出した場合、企業の信用は大きく損なわれます。これにより、謝罪会見や顧客への補償対応、訴訟リスクへの備えなど、経済的損失だけでなく、社会的信頼の回復に多大なコストと時間を要する事態に発展しかねません。

トロイの木馬ウイルスの被害事例

ここでは、トロイの木馬ウイルスによって発生した被害事例を紹介します。

 

事例①パソコン遠隔操作事件

「パソコン遠隔操作事件」は、2012年に日本で発生した、トロイの木馬型マルウェアを悪用した重大なサイバー犯罪です。犯人は「iesys.exe」と呼ばれるトロイの木馬を他人のパソコンに感染させ、利用者が気づかないうちにそのパソコンを遠隔操作しました。その結果、所有者とは無関係に、殺人予告や襲撃予告などの犯罪メッセージが掲示板やウェブサイトに投稿されました。

この攻撃により、実際に複数の無関係な人々が容疑者と誤認され、誤認逮捕されるという深刻な事態が発生しました。事件当時、日本ではこのような遠隔操作型のサイバー犯罪がほとんど前例のない手口だったため、社会全体で大きな衝撃と不安が広がりました。

さらに、この事件はサイバーセキュリティ対策の不備や、捜査機関の対応の難しさを浮き彫りにしました。攻撃者が匿名性を利用して第三者のパソコンを踏み台にすることで、真犯人の特定が困難になること、また無実の人物が誤って逮捕される可能性があることが社会問題として強く認識され、以後、日本国内におけるサイバーセキュリティ対策や法制度の見直しにも影響を与えた事件とされています。

 

事例②大学で発生した情報漏えい事件

2022年3月、ある国立大学のパソコンが、トロイの木馬型マルウェアの一種「Emotet(エモテット)」に感染する事案が発生しました。Emotetは、感染した端末を通じてメールを不正送信したり、他のマルウェアを追加で侵入させたりする特徴を持つ危険なマルウェアです。

この感染により、外部から大学のメールサーバーが悪用され、スパムメールや不正アクセスの踏み台として利用される可能性が懸念されました。そのため、大学側は被害拡大を防ぐために、職員や学生のアカウントの認証情報(パスワードなど)を強制的に変更するなどの緊急対応を実施しました。

幸い、重大な情報漏えいや金銭被害は確認されませんでしたが、この事案は教育機関がサイバー攻撃の標的となるリスクが高まっている現状を改めて示す結果となりました。特に大学は、多くの端末が学内外からネットワークに接続され、研究データや個人情報など価値の高い情報を扱うため、攻撃者に狙われやすい環境にあります。

この事例は、教育機関におけるセキュリティ対策の強化、例えば多要素認証の導入、メールの不審リンク対策、Emotetのようなマルウェアを検出・駆除できるセキュリティ製品の導入、利用者へのサイバーセキュリティ教育の徹底が不可欠であることを浮き彫りにしました。

 

トロイの木馬ウイルスに感染した場合の対応

パソコンがトロイの木馬ウイルスに感染した疑いがある場合、どのように対処すればよいのでしょうか。ここでは、感染が判明した際にすぐに実施すべき3つのポイントをご紹介します。

 

対応①ネットワークから隔離する

トロイの木馬ウイルスに感染した疑いがある場合は、被害をこれ以上拡大させないために、まずパソコンを速やかにネットワークから切り離すことが重要です。有線接続を利用している場合はLANケーブルを抜き、無線接続であればWi-Fiをオフにし、自動接続の設定も解除しておきましょう。これにより、感染端末から他の端末やサーバーへの不正通信を遮断できます。

この初動対応を行うことで、同じネットワーク内のほかの端末への二次感染を防ぎ、社内ネットワーク全体への被害拡大を最小限に抑えられます。

さらに、感染が疑われる端末は、そのまま電源を切らずにネットワークから隔離した状態で専門家やシステム管理者に引き渡すことが推奨されます。電源を切ると一部の証拠データが消失し、原因調査や被害範囲の特定が難しくなる場合があるためです。

加えて、感染した端末が共有ネットワークドライブやクラウドサービスに接続されていた場合は、該当サービスの利用を一時停止し、管理者に早急に連絡することで被害の広がりを防げます。初動対応の迅速さが、その後の被害規模や復旧にかかる時間を大きく左右します。

 

対応②ウイルス対策ソフトでフルスキャンする

感染した端末をネットワークから切り離した後は、ウイルス対策ソフトを使ってパソコン全体をフルスキャンしましょう。トロイの木馬ウイルスは単独で動作するマルウェアであるため、ウイルス対策ソフトの定義ファイル(ウイルスデータベース)に登録されている場合、自動的に検知・駆除される可能性があります。

また、感染源が特定できない場合や、同じネットワーク内のほかの端末も危険にさらされている可能性がある場合は、すべての端末で同様にフルスキャンを行うことが重要です。これにより、二次感染を防ぎ、被害の拡大を最小限に抑えることができます。

さらに、スキャンを行う際は以下の点に注意してください。

  • ウイルス対策ソフトを最新の状態に更新してからスキャンを実施すること。

  • 重要な業務データはスキャン前にバックアップを作成し、駆除時のデータ消失に備えること。

  • スキャン後に脅威が検出された場合は、駆除ログや検出ファイル情報を記録し、システム管理者やセキュリティ担当者に報告すること。

これらの対応を組み合わせることで、感染拡大の防止と原因特定、今後の再発防止策につなげやすくなります。

 

対応③関係各所に連絡する

トロイの木馬に感染した疑いがある場合は、できるだけ早く社内のセキュリティ担当者や情報システム部門へ報告しましょう。迅速な報告により、感染端末の隔離やネットワーク遮断、影響範囲の調査など、被害拡大を防ぐための初動対応を早急に行うことが可能になります。

もし専門部署がない場合は、日本国内のサイバー攻撃対応機関「JPCERT/CC」や、最寄りの警察(サイバー犯罪相談窓口)へ相談することが推奨されます。特に被害が大きい場合や金銭被害、情報漏えいが懸念される場合は、速やかに外部機関と連携することが重要です。

また、報告・相談を行う際には、以下のような証拠をできるだけ確保しておくと、原因調査や対策がスムーズに進みます。

  • 感染が疑われる端末の通信ログ、セキュリティソフトの検出ログ

  • 感染を引き起こした可能性のあるメールやファイルの情報

  • 画面に表示されたエラーメッセージや不審な挙動のスクリーンショット

これらの情報は、原因特定や被害範囲の把握、法的対応を進める上でも重要な手がかりになります。感染を疑った段階での迅速な報告と証拠保全が、被害を最小限に食い止める鍵となります。

 

まとめ

この記事では、トロイの木馬ウイルスについて特徴や感染したときの症状、対処方法について紹介しました。トロイの木馬ウイルスは、一度感染すると情報漏えいや業務停止など、企業に大きな損害をもたらすリスクがあります。だからこそ、日頃からの予防対策が不可欠です。

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ダークウェブとは?ディープウェブとの違いや対策をわかりやすく解説

インターネットの裏側には、検索エンジンではたどり着けない「ダークウェブ」と呼ばれる領域が存在します。近年では、このダークウェブ上で個人情報や企業の機密データが不正に取引されるケースが増えており、企業にとって大きなリスクとなっています。

本記事では、ダークウェブの基本から危険とされている理由、企業が取るべき対策についてわかりやすく解説します。

ダークウェブとは

ダークウェブとは、GoogleやYahoo!など一般的な検索エンジンではアクセスできないインターネット上の領域のことです。もともとはアメリカ海軍が、安全に匿名で通信するために開発した技術が基になっています。「Tor(オニオンルーティング)」という仕組みによって、通信の内容やアクセス元の情報を隠しています。

本来、ダークウェブはプライバシーの保護や情報検閲を回避する目的で使用されることが多かったものの、現在ではその匿名性を悪用し、盗難された個人情報やマルウェア、違法薬物、武器などの不正な売買が横行する危険な市場としても知られています。そのため、ダークウェブへのアクセスには法的リスクや情報セキュリティ上の危険が伴うことを理解しておく必要があります。

 

ディープウェブとの違い

インターネットは、よく「氷山」に例えられます。私たちが日常的に利用しているインターネットは、海面から見えている氷山の一角のようなものです。この部分を「サーフェスウェブ」といい、検索エンジン(GoogleやYahoo!など)で表示されるWebサイト、SNS、ニュースサイト、オンラインショップなど、誰でも自由に閲覧できる情報が含まれます。

氷山の海面下には「ディープウェブ」という領域があります。これは検索エンジンに表示されないエリアで、例えばオンラインバンキングや医療記録、会社の内部ポータル、学術論文などが含まれます。これらはID・パスワード認証や有料購読が必要など、特定の人のみが閲覧できる仕組みになっており、一般には公開されません。

さらに深いところにあるのが「ダークウェブ」です。ここには専用ブラウザ(Torブラウザなど)を使わなければアクセスできません。本来は匿名性の高い安全な通信を目的として作られましたが、現在では匿名性を悪用した違法取引(個人情報、薬物、武器など)の場として問題になっています。

なお、「ディープウェブ」と「ダークウェブ」は混同されがちですが、ディープウェブは正規の目的で使われているものがほとんどであり、ダークウェブのような危険性はありません。この違いを理解しておくことが重要です。

 

ダークウェブには何がある?取引されているものとは

ダークウェブではどのようなものが取引されているのでしょうか。以下で代表的な3点を紹介します。

 

①ID・パスワードのリストや個人情報

ダークウェブでは、盗まれたID・パスワードのリストや、氏名、住所、電話番号、マイナンバーなどの個人情報が違法に売買されています。これらの情報を手に入れた第三者は、本人になりすまして業務システムやクラウドサービスにログインし、不正アクセスを行う可能性があります。

また、こうした情報は標的型攻撃(特定の企業や組織を狙ったサイバー攻撃)の準備段階でも利用されることがあります。不正アクセスをきっかけに、社内情報の窃取、システム改ざん、業務妨害などの被害が発生する恐れがあります。

さらに、ダークウェブに出回る情報の多くは、フィッシング詐欺やマルウェア感染、過去の情報漏えい事件などで流出したデータです。一度流出した情報は、ダークウェブ上で完全に削除することがほぼ不可能で、長期間にわたって不正利用され続ける危険があります。

このため、企業や個人は、アカウント情報の使い回しを避ける、二要素認証を導入するなどの基本対策に加えて、流出情報がダークウェブ上で取引されていないかを確認できる「ダークウェブ監視サービス」を活用し、早期に対処できる体制を整えることが重要です。

 

②クレジットカード情報

ダークウェブでは、スキミング(カード情報を不正に読み取る行為)やハッキングによって盗まれたクレジットカード情報が違法に取引されています。これらの情報が第三者に渡ると、本人になりすまして高額な買い物をされたり、不正送金が行われたりするなど、深刻な金銭被害につながる恐れがあります。

さらに、盗まれた情報が偽造カードの作成に利用されることもあり、本人が気づかないうちに被害が拡大するケースもあります。こうした不正利用は海外のオンラインショップや暗号資産取引などにも悪用され、複数の国やサービスにまたがって被害が発生する場合もあります。

加えて、クレジットカード情報はダークウェブ上で1件あたり数ドルから数十ドル程度で売買されることが多く、複数の被害者情報がまとめて取引されるケースもあります。一度流出した情報は完全に削除されることが難しく、長期間にわたって不正利用が続く可能性があります。

こうした被害を防ぐには、カード利用明細を定期的に確認し、不審な取引を早期に発見できるよう利用通知メールを設定することが有効です。万が一、不正利用の疑いがあれば、速やかにカード会社へ連絡し、利用停止や再発行の手続きを行うことが重要です。

 

③ランサムウェアなどの不正ソフト

ダークウェブでは、ランサムウェアと呼ばれる身代金要求型ウイルスが活発に取引されています。ランサムウェアは、感染した端末やサーバーのデータを暗号化し、元に戻すことと引き換えに金銭(身代金)を要求する悪質なマルウェアです。

近年は「RaaS(Ransomware as a Service)」と呼ばれるサービス型の仕組みが普及しており、攻撃ツールやマニュアルがパッケージ化され、専門的な技術がない人物でも購入すれば容易に攻撃を実行できるようになっています。その結果、サイバー攻撃の敷居が大幅に下がり、企業や団体、さらには個人にまで被害が拡大しています。

特に近年は、データを暗号化するだけでなく、盗み出した情報を公開すると脅迫する「二重恐喝型攻撃」も増加しており、被害の深刻度が高まっています。ランサムウェアによる被害は、業務停止やデータ喪失、金銭的損失だけでなく、企業の信用失墜や法的責任の追及にもつながる可能性があります。

こうしたリスクに備えるには、OSやソフトウェアを常に最新の状態に保つこと、重要データのバックアップを定期的に取得すること、不審なメールの添付ファイルやリンクを開かないことが基本対策となります。さらに、侵入を早期に検知し、攻撃を未然に防ぐためのセキュリティ対策ツールやSOC(セキュリティオペレーションセンター)などの導入が有効です。

ダークウェブが危険である理由

ダークウェブへのアクセスは、危険性が高いことから避けるべきと言われています。なぜダークウェブは危険とされているのでしょうか?ここでは、主な3つの理由を紹介します。

 

理由①犯罪に巻き込まれる可能性がある

ダークウェブは匿名性が非常に高く、通常のインターネットとは異なり安全性が保証されていません。そのため、利用者が意図せず違法なWebサイトやサービスにアクセスしてしまい、結果として犯罪に関与したと見なされる危険があります。ダークウェブ上には、違法薬物や武器、児童ポルノ、ハッキングツールなど、法律で禁止されているコンテンツが多く存在しており、たとえ意図がなかった場合でも、違法情報を閲覧したり取引したりすれば法的責任を問われる可能性があります。

さらに、ダークウェブ利用中には個人情報が盗まれるリスクもあります。アクセスしたサイトやダウンロードしたファイルを経由して、氏名や住所、ログイン情報、クレジットカード情報などが流出すると、第三者による不正利用やなりすまし被害が発生する恐れがあります。その被害は本人だけにとどまらず、家族や知人が詐欺や迷惑行為の標的になるなど、周囲にまで影響が及ぶケースもあります。

加えて、ダークウェブにはウイルスやスパイウェアが仕込まれたページも多く、アクセスしただけで端末が感染することもあります。多くの国では、違法サイトへのアクセスや違法取引を行った場合、故意でなくても捜査対象となる可能性があります。

こうした危険性の高さから、ダークウェブを一般利用者が安全に使うのは非常に難しく、利用は強く注意が必要です。セキュリティやプライバシー保護を目的とする正当な利用方法も存在しますが、専門知識やセキュリティ対策が不十分なままアクセスすると、大きなリスクを負う可能性があります。

 

理由②マルウェアに感染するリスクがある

ダークウェブにアクセスすると、マルウェアやウイルスに感染するリスクが高まります。悪意のあるサイトやファイルを開いてしまうと、デバイスが不正プログラムに侵入され、個人情報が盗まれたり、保存しているデータが破損・削除されたりする恐れがあります

特にランサムウェアに感染した場合、端末内のファイルが暗号化され、元に戻す条件として金銭を要求される「身代金要求型被害」に発展することがあります。これにより、個人や企業の重要データが使えなくなり、業務停止や大きな金銭的損失、さらには情報漏えいによる法的トラブルにつながる可能性もあります。

さらに、ダークウェブ上には、サイトを閲覧しただけで自動的にマルウェアを仕込む「ドライブバイダウンロード攻撃」を行うページも存在します。感染した端末は、パスワードや金融情報を盗む「スパイウェア」や、外部から遠隔操作される「バックドア型マルウェア」の被害を受けることもあります。

一度感染すると、データの完全復旧が難しかったり、被害調査や復旧作業に多大な時間と費用がかかったりするケースが多く見られます。そのため、セキュリティ対策や専門知識が不十分な状態でダークウェブにアクセスすることは、非常に大きなリスクを伴います。

 

理由③詐欺被害に遭うリスクがある

ダークウェブでは、偽のサービスや商品の取引が数多く行われており、利用者が詐欺被害に巻き込まれるリスクが非常に高い環境です。たとえば、存在しない商品を販売すると偽って代金だけを騙し取られる、粗悪な偽造品を送りつけられる、入力した個人情報やクレジットカード情報が不正利用されるといった被害が多発しています。

ダークウェブは匿名性が極めて高く、取引相手の身元や信頼性を確認する手段がほとんどないため、詐欺や情報漏えいが起きやすく、トラブルが深刻化しやすいのが特徴です。また、詐欺被害が発生しても、取引の追跡や犯人の特定が困難で、返金が期待できないケースがほとんどです。

さらに、詐欺サイトにはマルウェアが仕込まれていることも多く、金銭被害に加えて端末がウイルス感染し、個人情報が抜き取られる二次被害が発生するリスクもあります。ダークウェブは違法取引の温床となっているため、利用そのものが法的リスクを伴うこともあり、安易なアクセスは非常に危険です。

 

ダークウェブの被害事例

ダークウェブでは、流出した個人情報が匿名で取引され、被害の拡大を招くケースが多数報告されています。以下に、注目すべき実例を2つ紹介します。

 

事例①AT&Tにおける個人情報の漏えいと暗号ウェブでの販売

2024年3月、米国の通信大手AT&Tでは、約7,000万人の顧客を対象とした個人情報が漏えいし、ダークウェブ上で販売されました。流出内容には氏名、メールアドレス、住所、社会保障番号(SSN)などが含まれていたとされ、巨大被害として注目を集めました。シニア・グループ「ShinyHunters」が関与していたとされ、法的訴訟やクレジットモニタリングの提供などの対応が進められています。

 

事例②フィンランドの心理クリニック「Vastaamo」での公開脅迫

フィンランドの心理療法クリニック Vastaamo(ヴァスタアモ)では、クライアントの診療記録がハッキングにより流出し、治療内容や個人特定情報がTor上の掲示板に掲載されました。不払いや支払い拒否の場合には患者に直接脅迫メールが送りつけられ、多くの被害者に精神的被害が及びました。この事件は「ダブルエクストーション(二重脅迫)」攻撃の典型として、国際的にも大きな衝撃を与えました。

 

ダークウェブでの情報掲載を防ぐ方法

会社でセキュリティ教育を受ける女性

企業の情報がダークウェブに掲載されないようにするには、どのような対策を講じたらよいのでしょうか。以下の3つの方法を推奨します。

 

方法①セキュリティパッチの適用

ネットワーク機器やソフトウェアには、設計上の不備や設定ミスなどに起因する「脆弱性」と呼ばれるウィークポイントのような部分が必ず存在します。

脆弱性を修正せずに放置し続けると、悪意のある攻撃者にとって侵入口となり、ゼロデイ攻撃やランサムウェアなどのサイバー攻撃に悪用される可能性が高まります。これらの攻撃は、機密情報の漏えいや業務の停止といった深刻な被害をもたらす可能性があるため、メーカーから脆弱性を修正するために定期的に提供される「セキュリティパッチ(修正プログラム)」を、公開され次第速やかに適用することが重要です。

管理対象の機器やソフトウェアが多い企業では、パッチ適用管理ツールの活用により、適用状況の可視化や一元管理が可能になります。これにより、対応漏れを防ぎながら効率的な運用が実現できます。

 

方法②社員教育の実施

ダークウェブへの情報流出を防ぐには、技術的なセキュリティ対策だけでなく、情報を扱う従業員一人ひとりの意識向上が不可欠です。知識や警戒心が不足していると、不審なメールの添付ファイルや危険なリンクを誤って開き、マルウェア感染やアカウント情報の窃取、結果としてダークウェブ上での情報売買につながる重大な被害が発生する恐れがあります。

このリスクを減らすには、定期的な社内研修やeラーニングを通じて、最新のサイバー攻撃手口や安全なデータの取り扱い方法を学び、情報セキュリティリテラシーを高めることが重要です。標的型攻撃メールを想定した模擬訓練などを行えば、従業員が実際の攻撃に素早く気づき、被害拡大を防ぐ対応力を身につけられます。

また、セキュリティポリシーやデータ管理ルールを明確に定め、全従業員に徹底周知することも有効です。これらの教育・訓練を一度きりではなく継続的に行うことで、組織全体の防御力を強化し、ダークウェブに自社の情報が流出するリスクを大幅に低減できます。

 

方法③マネージドサービスの活用

情報セキュリティを担う専門人材の確保が難しい企業にとって、「マネージドサービス」を活用することは有効な対策のひとつです。マネージドサービスとは、セキュリティ監視や脆弱性管理、ソフトウェアのパッチ適用、ログ分析などのITセキュリティ業務を、外部の専門業者に委託できるサービスを指します

このサービスを利用することで、最新の攻撃手口や脅威動向に精通したセキュリティ専門家が、24時間365日体制でシステムを監視し、インシデント発生時には迅速な対応を行います。これにより、自社で人材や設備を整えるよりも低コストで、高度なセキュリティ対策を実現でき、社内担当者の負担を大幅に軽減できます。

さらに、マネージドサービスにはファイアウォールやEDR(Endpoint Detection and Response)の運用、脅威インテリジェンスの提供、セキュリティポリシー策定の支援など、幅広いサービスが含まれる場合があります。特に専門部署を持たない中小企業にとっては、こうした外部リソースの活用が、サイバー攻撃の高度化に対応するための重要な手段となります。

ただし、導入にあたっては、委託先の信頼性やサポート体制、対応範囲、インシデント発生時の責任分担などを事前に明確にしておくことが重要です。これにより、外部委託のメリットを最大限に活かしつつ、安全で効率的な情報セキュリティ体制を構築できます。

 

まとめ

本記事では、ダークェブの基本から危険とされている理由、企業が取るべき対策についてわかりやすく解説しました。

ダークウェブは匿名性が高く、違法な取引やサイバー攻撃の温床にもなり得る危険な領域です。企業としては、情報漏えいやシステム侵害といった被害を未然に防ぐためにも、日頃から情報セキュリティ対策を強化しておくことが重要です。

特に、不正アクセスやDDoS攻撃の対策には、WAFなどの導入がおすすめです。中でも「Cloudbric WAF+」は、専門知識がなくても導入しやすく、日々進化する攻撃にも対応可能なクラウド型セキュリティサービスです。24時間365日いつでも電話やメールでサポートできるため、セキュリティに特化した人材がいなくても安心して運用することができます。
「Cloudbric WAF+」については以下のWebサイトで詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

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ハッカーとは?クラッカーやホワイトハッカーなどの種類と役割


情報システム部門の担当者にとって、「自社がハッカーの標的となった場合、どのような影響があるのか」を想定することは重要です。実際に被害を受けた際には、緊急対応や原因調査に追われるだけでなく、経営層や関係部署からの説明責任を求められる場面も少なくありません。

とはいえ、ハッカーの攻撃手法や近年の動向について、日常的に把握している担当者は多くないのが実情です。そこで本記事では、ハッカーの基本的な定義を整理したうえで、企業として講じるべきセキュリティ対策について解説します。

 

ハッカーとは?基本的な定義

「ハッカー」と聞くと、コンピューターなどから情報を盗み取る犯罪者を想像する人が少なくありません。しかし、そもそもハッキングとは、コンピューター関連の知識に精通した人がシステムやプログラムのチェックや改善を行うことであり、ハッカーの基本的定義は「コンピューターに精通した技術者」です。そのため、「ハッカー」という言葉には本来、悪事や犯罪を行う人といった意味はありません。

また、企業や公共機関のプラスになるようシステムの問題点を改善する「ホワイトハッカー」の存在もあるため、近年は悪意のあるハッカーを単に「ハッカー」と呼ばず、「ブラックハッカー」や「クラッカー」と区別がつくように呼ぶ傾向も強くなっています。

 

・ハッカーの特徴

前述したように、ハッカーとはコンピューターやネットワーク、暗号技術やプログラム解析などに関して高度なスキルをもつ存在です。それらの知識や技術を犯罪や社会の害になる使い方をするハッカーが存在する一方、システムやプログラムの脆弱性の発見やセキュリティ強化などに貢献するハッカーも存在します。

また、善悪や利益を目的とせず、純粋に技術的な興味からハッキングを行うハッカーも存在します。そのため「ハッカーの特徴」は善悪によって区別されるものではなく、あくまでハッキングのスキルをもつ人物であると理解してください。

 

・ハッカーの歴史と有名なハッカー

世界で初めてのハッキングを、いつ、だれが行ったのかは明確ではありません。しかし1960年代前半に、MIT(マサチューセッツ工科大学)にコンピューターに精通した集団が存在し、ハッカー文化の始祖となったと言われています。

また、「ハッカー」は姿や名前を知られないように行動しているイメージもあるかと思われますが、世界的に有名なハッカーも多数存在します。例えば、ケビン・ミトニックは10代からハッカーとして活動し、1982年に北米防空総指令部へのハッキングを行ったことは、映画の題材にもなっています。

また、エドワード・スノーデンは米国軍やCIA(米国中央情報局)で勤務した経歴をもちつつ、米国の公的機関の問題点を世界中に知らせたことで有名です。スノーデンは、米国政府が監視活動によって市民のプライバシーや自由を侵害していることを知り、政府に対して強い反感をもったことから、世界史に残るような告発を行っています。

 

ハッカーの種類

ひと口にハッカーと言っても、さまざまな種類があります。以下では、その種類と概要について解説します。

 

・ホワイトハッカー

民間企業や公共機関の立場から、システムの脆弱性を発見・修正する役割を担うハッカーです。企業に雇用されている場合もあれば、フリーランスとして活動している場合もありますが、いずれも正当な報酬を得て業務に従事しており、いわゆるアウトローではありません。

その行動から、エシカルハッカー(エシカルは「倫理的な」「道徳的に正しい」などの意味)や、正義のハッカーと表現されることもあります。

ホワイトハッカーは、システムの監視やサイバー攻撃の防止、対応、ペネトレーションテスト(侵入テスト)によるセキュリティ強化などを行います。また、バグバウンティ(企業や組織が特定のシステムの脆弱性を発見した人に報奨金を払う仕組み)に参加することもあります。

 

・ブラックハッカー

ブラックハッカーとは、企業や公的機関、個人のシステムに対して不正にアクセスし、重要情報の窃取やシステムの破壊・改ざんなどを行う悪意ある存在です。一般的に「ハッカー」という言葉を使う場合、このブラックハッカーを指します。

ブラックハッカーは、ウイルスやマルウェアを作り出したり、システムへの攻撃を行ったりします。近年は、DDoS攻撃やランサムウェア攻撃(攻撃の解除と引き換えに金銭を要求する)、フィッシング詐欺(偽のメールなどで悪意のあるサイトに誘導し金銭などを得る)などを行うブラックハッカーが増えています。

ブラックハッカーの行動原理は悪意や自分たちの利益であり、社会的に害を及ぼすことが特徴です。攻撃対象者は少なからずダメージを受け、巨額の損失を伴うこともあります。

 

・グレーハッカー

グレーハッカーは、ブラックハッカーとホワイトハッカーの中間的存在です。企業や個人が運営するシステムに許可なく侵入し、脆弱性を発見したうえで報告する場合もありますが、悪用するケースも見られます。

善意による報告を行い、システムを改善できる結果になったとしても、許可なくシステムに侵入する時点で違法性が高いとみなされます。そのため、分類上はブラックハッカーに分類されることも少なくありません。

行動としては、システム運営者が許可しないペネトレーションテスト(侵入テスト)を行い、セキュリティホールや脆弱性を発見して報酬を要求することが一般的です。

 

・クラッカー(Cracker)

クラッカーは、企業のサーバーに侵入して情報を盗んだり、不正にコピーを作成したりするなど、悪意のある行動をとる存在です。そのため、ブラックハッカーとほぼ同じ意味で使われることもありますが、明確に区別する場合は、クラッカーのほうが違法行為に特化した存在とされます。

また、ソフトウェアを不正に改造してチートを可能にする、著作権を侵害する、違法ダウンロードサイトを運営することなどもクラッカーの活動に含まれます。

 

ハッカーの主な手法

ハッカーが使う手口は多数存在しますが、大きくは人の心理を利用する攻撃手法、マルウェア攻撃、ゼロデイ攻撃に分類されます。

 

・人の心理を利用する攻撃手法

なりすましメールやスピアフィッシング(特定の対象に向けて行うフィッシング)、偽のサポート窓口を装った詐欺などがあります。

偽のメールやフィッシングなどの手口は、技術的な攻撃ではなく、人の思い込みや行動パターンを悪用する点が特徴です。これらの手法をソーシャルエンジニアリングと呼ぶこともあります。ソーシャルエンジニアリングという名称は一般的な業務名に見えるかもしれませんが、情報を盗む手口のひとつです。

 

・マルウェア攻撃

マルウェアとは、悪意あるソフトウェアやコードの総称で、ウイルスやワーム、スパイウェア、トロイの木馬などを含みます。データの消去や改ざん、外部ネットワークへの流出や外部への攻撃など、種類は無数に存在し、DDoS攻撃やランサムウェア攻撃などにも利用されます。

 

・ゼロデイ攻撃

まだ対応策が発表されていないシステムの脆弱性を狙って行う攻撃です。根本的な対策が難しいため、こうした攻撃を受けた場合、非常に大きな被害につながる可能性があります。

そのため、該当するソフトウェアの使用を一時的に中止したり、ゼロデイ攻撃に関連する不審な通信を遮断したりするなど、被害を最小限に抑えるための緊急対応が求められます。

 

企業が取るべきハッカーへの対策

ブラックハッカーやクラッカーによる攻撃はいつ行われるかわからないので、企業としては日ごろから対策を講じておく必要があります。企業が取るべき対応として、主に以下が挙げられます。

  • 強力なパスワードと多要素認証(MFA)の導入
    パスワードは使いまわしを避け、できるだけ強化することが重要です。近年は、パスフレーズと呼ばれる複数の単語を組み合わせた文章を使うことで、安全性を強化する動きもあります。また、パスワードと指紋認証など、複数の手法を併用する多要素認証(MFA)も有効です。
  • OSやソフトウェアの定期的な更新
    OSやソフトウェアには、システムの脆弱性を修正するために、管理元から随時アップデートが提供されています。
    そのため、常に最新のバージョンを適用し、OSやソフトウェアを最新の状態に保つことが重要です。
  • 従業員教育
    従業員にマルウェアやフィッシング詐欺などの存在や手口、大きな被害を受けた企業の実例などを紹介し、日常から気をつけるべきことや、取ってはいけない行動などを教育しましょう。
  • 必要のないソフトウェアをインストールしない
    ソフトウェアのインストールをきっかけに、マルウェアなどの脅威が侵入するケースは少なくありません。
    そのため、不要なソフトウェアや、提供元が不明確なソフトウェアのインストールは避けることが推奨されます。
  • 信頼できるクラウド環境にデータを保存する
    クラウドサービスにはさまざまな提供元があり、信頼性にも大きな差があります。
    そのため、サービスの選定にあたっては、セキュリティ対策や運用実績などを確認し、信頼性の高いクラウド環境を選ぶことが重要です。
  • ファイアウォール・クラウドWAF(Web Application Firewall)の活用
    Webサイトやアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃には、ファイアウォールやクラウドWAFが有効な対策となります。クラウドWAFの導入を検討されるのであれば、「Cloudbric WAF+」がおすすめです。

▼「Cloudbric WAF+」の詳細については、以下のサイトをご参照ください。
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ホワイトハッカーの必要性

ブラックハッカーやクラッカーによる悪意ある攻撃のリスクは、企業の大小によらず存在します。そのため、日本政府もホワイトハッカーの育成に力を入れており、企業単位でもホワイトハッカーを雇用する例が増えています。

被害を受けてからでは取り返しがつかないケースもあるので、この機会にホワイトハッカーの必要性を確認し、雇用や依頼などを検討することを推奨します。

 

ハッカーによる攻撃の最新動向と今後のセキュリティ対策

近年、AIはさまざまな分野で活用が進んでいますが、ブラックハッカーやクラッカーもAIを活用し、サイバー攻撃の高度化を図っています。
また、ディープラーニング技術の進展により、偽物と見分けがつきにくい音声や画像を用いた詐欺行為も増加しています。

このように、攻撃者側は次々と最新技術を取り入れ、サイバー攻撃を高度化させているのが現状です。一方で、防御側でも新たなセキュリティ技術の開発が進められています。

たとえば、ブロックチェーンはもともと暗号技術を基盤とした仕組みであり、セキュリティ対策にも活用されています。さらに、複数の秘密鍵の利用や、インターネットから隔離されたオフライン鍵の活用、2段階認証の導入などにより、安全性が一層強化されています。

今後も悪意あるハッカーとセキュリティ対策の攻防は続いていくため、新しい情報に常にアンテナを張ることを心がけましょう。

 

まとめ

世の中には多数の悪意あるハッカーが存在しており、ランサムウェア攻撃やDDoS攻撃、ゼロデイ攻撃など手法も多様化しています。日本の企業が被害を受けた実例もあり、個人や企業としてセキュリティ対策を行うことは必須です。そのため、この機会に悪意ある攻撃への対策強化を図ることをおすすめします。

クラウドWAFは、悪意をもったハッカーからの攻撃をリアルタイムでブロックし、Webサイトやアプリケーションを守るセキュリティ対策として有効です。企業のWebシステムの安全性向上に資する「Cloudbric WAF+」について詳しく知りたい方は、以下のサイトをご参照ください。

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シグネチャーとは?セキュリティ分野での役割と重要性を解説


企業の情報システムを管理するうえで、Webアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃は深刻な脅威です。サイバー攻撃の手法が高度化・多様化する中、システム担当者は常に最新のセキュリティ対策を検討し、適切な防御策を講じる必要があります。その中でも、シグネチャー方式のWAFは広く採用されているセキュリティ対策のひとつです。

本記事では、セキュリティ分野におけるシグネチャー(シグネチャ)の定義や種類、重要性について解説します。活用例や導入時の流れにも触れ、シグネチャー方式の課題を解決するサービスにも言及します。

 

シグネチャーとは?セキュリティ分野での役割

シグネチャー(シグネチャ、signature)は、もともと「署名」や「サイン」を意味する英単語です。近年では、以下のような意味で使われることも増えています。

  • 電子メールやSNS:送信者の名前や所属などの情報を文末に自動で挿入する機能
  • プログラミング:メソッドや関数の名前、データの型、引数の数などを示す情報
  • セキュリティ:不正アクセスやマルウェアを検知するための特徴的なデータやルール

本記事では、特にセキュリティ分野に関連して使われるシグネチャーに着目して解説します。

セキュリティ分野でのシグネチャーは、攻撃パターンやマルウェアの特徴を識別するためのデータセットや条件定義のことを指します。たとえば、WAF(Web Application Firewall)では、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングといった脅威度の高い攻撃を検知・防御するために利用します。

なお、WAFとは、Webアプリケーションへの不正アクセスを防ぐためのセキュリティ対策です。Webサイトとユーザーの間の通信を監視・解析し、攻撃パターンに一致するリクエストをブロックすることで、Webアプリケーションの脆弱性を悪用した攻撃から保護します。

 

シグネチャーの種類

シグネチャーには以下のような種類があります。

  • 電子署名(Digital Signature)
    暗号技術によって生成され、文書やデジタルデータの送付者の真正性認証、改ざん検出に役立ちます。
  • ウイルスを検出するシグネチャー(Virus Signature)
    ウイルスやマルウェアを特定するための識別情報で、セキュリティソフトに利用されます。既知のウイルスの特徴的なパターンと照合することで脅威を迅速に検出できます。
  • ネットワークシグネチャー(Network Signature)
    通信パターンを確認することで、ネットワーク経由の不正な動きを検出します。SQLインジェクションやDDoS攻撃の防止に役立ちます。IPS(侵入防止システム)やIDS(侵入検知システム)に利用されます。
  • データの改ざんや破損を検出する(Data Signature)
    公開鍵暗号やハッシュ関数などの技術を利用して生成される識別情報です。データ作成者の証明や改ざんの有無を確認するために使用されます。

 

シグネチャーの重要性

セキュリティ分野において、シグネチャーはデータの安全性や信頼性を確保するために不可欠な技術です。サイバー攻撃の増加や電子取引の普及に伴い、その重要性はますます高まっています。

 

・データ改ざんやなりすましの防止になる

悪意ある第三者によってデータを改ざんされてしまうと、業務の運用やデータの管理などに深刻な影響をおよぼす可能性があります。シグネチャーを適用すると、データのハッシュ値を検証し、改ざんの有無を迅速に特定することが可能です。そのためシグネチャーは通信の安全性確保や向上に貢献します。

また、フィッシングメールなどのなりすましメールは、人間の目では見分けにくいケースも多く、さまざまな被害が報告されています。シグネチャーを用いた電子署名によって送信元の真正性を確認できるため、なりすましメールによる詐欺や攻撃のリスクを軽減できます。

 

・マルウェアやサイバー攻撃を検知できる

マルウェアやサイバー攻撃は年々手口の巧妙化が進んでいるため、既知の脅威を迅速に検出し、適切な対策を講じることが不可欠です。シグネチャーを活用することで、マルウェアのコードや挙動をデータベースに登録し、一致するパターンを検知して脅威を素早くブロックできます。

また、パターンファイルを定期的に更新することで、新たなウイルスや攻撃手法にも迅速に対応できます。

 

・法律面やビジネス面で信頼性の向上につながる

電子契約やデジタル取引が普及する中、取引における契約の真正性を保証することは企業にとって重要な課題です。シグネチャーは電子署名として機能し、契約の証拠能力を向上させます。これにより、契約時のトラブル回避や法的な証拠の確保が可能です。クライアントやユーザーからの信頼性が向上し、企業の競争力強化にもつながります。

 

シグネチャーの活用例

シグネチャーは、WAFでの攻撃探知やウイルス対策ソフトのパターンファイル、電子契約サービスでの応用などのシーンで活用されています。

 

・WAFでの攻撃検知

多くのWAFは、Webアプリケーションへの攻撃を防ぐために名簿状に登録されたシグネチャーを参照し、通信を検査します。過去に発見された攻撃のパターンを記録し、リクエストやサーバの応答を照合することで不正なアクセスを検知・遮断する仕組みです。一致するパターンが見つかった場合、あらかじめ設定されたセキュリティポリシーに基づいて警告を出したり、通信を遮断したりといった対策を講じます。

シグネチャー方式の強みは、既知の攻撃に対して高い精度で防御できる点です。特定の攻撃パターンのみを定義するため、誤検知率を抑えることができます。

シグネチャー方式以外には、ロジックベースと呼ばれる方式があります。シグネチャー方式が「名簿を見て判断する」のに対し、ロジックベース方式は「事前に定めたルール(ロジック)をもとに攻撃を検知する」仕組みです。シグネチャー方式では過去に発見された攻撃をもとにパターンを登録しますが、ロジックベース方式では攻撃ごとの個別のパターンを記録せず共通する特徴を分析してルールを導き出します。そのため、ひとつのルールが多数の攻撃パターンをカバーできるという特徴があります。

 

・ウイルス対策ソフトのパターンファイルとして活用

シグネチャーはマルウェアやウイルスのパターンファイル(識別情報)として活用できます。マルウェアやウイルスは日々新たに生み出されており、従来の防御策だけでは対応しきれません。

しかし、パターンファイルを定期的に更新しておけば、新たに生み出された脅威にも素早く対応することが可能です。具体的には、既知のマルウェアの特徴をデータベース化し、それに基づいてスキャンを行うことで、パターンに一致する脅威を高精度で検知できます。この仕組みにより、万が一ウイルスが侵入したとしても、被害を最小限に抑えることが可能です。

 

・電子契約サービスなどでの応用

近年、電子契約はさまざまな場所で利用されていますが、データの改ざんリスクも存在します。その対策として有効なのが、シグネチャーを活用した電子署名です。電子署名は、契約文書のデータから生成されたハッシュ値を暗号化して付与することで、内容の改ざんを防ぎ、契約の真正性を保証します。万が一、契約文書が改ざんされた場合でも、署名の検証時に一致しないため、不正な変更を即座に検出できます。

また、電子署名を活用することで、リモートワーク環境でも安全に契約手続きを進めることが可能です。対面での押印や書類の郵送が不要となり、契約の迅速化にもつながるため、業務効率化に貢献します。

 

シグネチャー導入の流れ

一般的に、以下のような流れでシグネチャーを導入します。

  • 自社のセキュリティ要件を洗い出す
  • シグネチャーの運用設計を実施し、関係者と共有する
  • 導入後の保守・運用を見据え、外部ベンダーとの連携や監視体制を整備する

まず、自社のシステム構成や想定されるリスクを明確にし、セキュリティ要件を洗い出します。どのような脅威に対応する必要があるのかを把握することで、適切な製品の選定が可能です。

次に、シグネチャーの運用設計を行い、適切な運用フローを構築します。シグネチャーの適用範囲や管理・更新のルールを策定し、社内のIT部門やセキュリティ担当者、経営層などと情報を共有しましょう。

最後に、導入後の運用を想定し、外部ベンダーとの連携や監視体制を整備します。社内にセキュリティの専門家がいない場合、シグネチャーの適切な設定や継続的な更新を自社内だけで行うのは困難です。信頼できるベンダーを選定し、監視体制を強化することで、長期的なセキュリティの維持につなげましょう。

 

シグネチャー導入の注意点

シグネチャーの導入や運用にあたっては以下のような注意点も存在します。

  • 誤検知リスク
  • 適切な更新が必要
  • 運用コストの上昇

シグネチャーは数が増えるほど誤検知のリスクが高まります。シグネチャー方式では、新たな攻撃が発見される度にシグネチャーを追加しなければならず、頻繁なアップデートが必要です。しかし不要なシグネチャーが蓄積されると正常な通信まで遮断してしまう可能性があるため、必要なシグネチャーのみを維持しなければなりません。

適切な更新が必要になる点も重要です。攻撃手法は日々進化しており、シグネチャーの更新が滞ると新たな脅威に対応できません。また、シグネチャーが作成されていない「ゼロデイ攻撃」には対処が難しく、シグネチャー方式だけでは完全な防御が難しいことを理解しておく必要があります。

運用コストも無視できません。一部のベンダーでは機械学習を活用して不要なシグネチャーを最適化する取り組みも行われています。しかし、必ずしも最適な結果が得られるわけではなく、コストが上昇する場合もあります。

それでも、既知の脅威への確実な防御手段として、シグネチャーの導入は依然として有効です。

 

まとめ

シグネチャー方式は既知の攻撃への有効な対策ですが、新たな攻撃が次々に登場する中ですべての攻撃を記録するのは困難です。ゼロデイ攻撃への対応が難しいという課題もあります。

こうした課題を解決する手段としておすすめなのが、クラウド型Webセキュリティプラットフォームの「Cloudbirc WAF+」です。シグネチャーベースの検知に加え、AIや機械学習を活用したロジックベースの分析を併用することで、未知の攻撃にも柔軟に対応可能です。WAFによるセキュリティ対策を検討する際には、ぜひCloudbric WAF+をご活用ください。

 
シグネチャーとロジックの違いに関しては、こちらの記事も併せてお読みください。

WAF、シグネチャー方式とロジックベースの違いとは?

 

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SSLとは?Webサイトのセキュリティを強化できる仕組みと設定方法


インターネット上でサービスを提供する場合、悪意ある第三者から顧客の個人情報を取られたり、情報を改ざんされたりして、企業と利用者の双方が損害を受ける可能性があります。

そうしたリスクの低減のためにSSL導入を検討する企業は多いものの、TLS・HTTPSとの違いやSSL証明書など、わかりにくい点が多いことから導入が進まないケースも見られます。そこで本記事では、SSLとは何かをわかりやすく解説したうえで、SSL導入に役立つ情報を多数紹介します。

 

SSLとは?基本的な仕組みとセキュリティへの効果

SSLとは「Secure Sockets Layer」の略語であり、インターネット上で行われる通信を暗号化する仕組みです。

たとえばインターネット上で、自社のサービスに顧客が名前や住所を書き込む必要があるとしましょう。SSLなどのセキュリティが導入されていない場合、悪意のある第三者は容易に顧客の個人情報を盗み見ることができ、情報を改ざんされてしまうこともあり得ます。

一方、SSLを導入していれば、データの改ざんやなりすましによる被害のリスクを減らせるため、企業側は安心してサービスを提供できます。顧客側も個人情報を取られたり、改ざんによる被害を受けたりせずに済みます。

 

SSLとTLS・HTTPSの違い

インターネット上の通信で起こり得る、なりすましや改ざん、盗聴などのリスクを低減する仕組みとして、TLSやHTTPSもあります。以下では、SSLとこれらの違いを解説します。

 

・SSLとTLSの違い

SSLは、インターネット上の通信における安全性を高める仕組みですが、利用される中でいくつかの脆弱性が発見されました。TLS(Transport Layer Security)は、このSSLの脆弱性を改善した後継プロトコルです。

SSLとTLSは、専門的に見ると暗号形式やメッセージの認証方式に違いがありますが、原理や仕組み上の違いはほとんどありません。ただ、SSLの脆弱性はTLSで改善されていることから、2025年現在すでにSSLは使用されなくなり、TLSに置き換わっています。しかし、「SSL」という名称が広く浸透していたため、実際にはTLSを使っているにもかかわらず、一般にはSSLと呼ばれたり、SSL・TLS、またはSSL/TLSと表記されたりしています。

TLSは1999年にTLS1.0がリリースされ、その後1.2、1.3とバージョンアップするごとに暗号化アルゴリズムは強固になり、脆弱性も改善されています。

 

・SSLとHTTPSの違い

HTTPSをわかりやすく解説するために、まずHTTPについて言及します。HTTPは「Hyper Text Transfer Protocol」の略語で、ホームページを表示するための通信規格です。

そしてHTTPSは「Hypertext Transfer Protocol Secure」の略語であり、SSLによって安全性を高めたHTTPです。HTTPは、SSLやTLSのように暗号化処理が施されていないので、悪意ある第三者に情報を盗み見られるリスクがあります。一方、HTTPSはSSL/TLSの技術を使って暗号化が行われるので、盗聴などのリスクを大きく低減できます。

HTTPSは安全性の確保に配慮されていることから、SEOにも好影響を与えるため、サイトを管理する企業にもメリットがあります。

 

SSL証明書の種類

SSL証明書(SSLサーバー証明書)とは、Webサイト運営元の実在を証明する電子的証明書です。SSL証明書の発行には審査があり、発行されるまでに数日かかるので、必要な場合は時間に余裕をもって申し込みを行いましょう。

SSL証明書は、認証レベルと保護できるドメイン数で分類されます。

 

・SSLの認証レベルの種類

SSLを認証レベルで分類する場合、以下の3種類に分けられます。

  • ドメイン認証型(DV:Domain Validation)
    ドメイン名の利用権があり、個人事業主の取得も可能です。また、安価で発行が早いなどのメリットもありますが、認証レベルはほかの2種類より低めです。
  • 企業実在認証型(OV:Organization Validation)
    ドメイン名の利用権があり、サイトを運営する組織の法的実在性を証明できます。証明書情報に企業名を記載できるので、Webサイトの信頼性向上に役立ちます。認証レベルはドメイン認証型より高く、EV認証型より低めです。
  • EV認証型(Extended Validation)
    ドメイン名の利用権があり、サイトを運営する組織が法的にも物理的にも実在することを証明できます。証明書情報に企業名を記載でき、世界基準の審査を必要とするので、3種類の中で最も高い信頼性をもちます。

 

・保護できるドメイン数による種類

SSL証明書は、保護可能なドメイン数によっても分類されます。

  • シングルドメインSSL証明書
    名称の通り、ひとつのドメイン上に存在するすべてのページを保護します。ただし、サブドメインの保護はできません。
  • ワイルドカードSSL証明書
    ひとつのドメイン上に存在するすべてのページを保護するうえ、関連するすべてのサブドメインの保護も可能です。
  • マルチドメインSSL証明書
    複数のドメインの保護が可能ですが、関連するサブドメインの保護はできません。

 

企業向けに適したSSL証明書の選び方

SSL証明書を認証レベルで検討する場合、サイトの規模や用途によって検討する必要があります。

ドメイン認証(DV)は、無料で証明書を発行できる場合があり、費用がかかってもほかの認証レベルより安価です。また、1か月単位での契約も可能なので、手早くSSL暗号化を行いたい個人事業主や、小規模のサイトを運営する企業に向いています。

一方、顧客データを扱うサイトや大規模なサイトを運営したり、サイトの信頼性を重視したりする場合、費用や審査の手間はかかるものの、企業認証型(OV)かEV認証を選択することを推奨します。

 

SSLの導入と設定方法

SSLを導入する際には、以下の手順が必要です。

  1. CSR(Certificate Signing Request)と呼ばれる署名リクエストを作成する
  2. 認証局にSSL証明書の申請を行う
  3. 認証手続きを実施する
  4. 審査や認証の終了後、SSL証明書が発行されたらインストールを行う

また、SSLの導入に際しては、CDN(Contents Delivery Network)やレンタルサーバーを使う手もあります。CDNを利用すると、Webコンテンツの配信効率が上がるほか、大容量の動画を配信する場合やアクセス集中時にも速度の低下が起こりにくいなど、多くのメリットを得られます。一方、レンタルサーバーを利用すると、サーバーをレンタルする企業のサービスを利用できることがメリットです。

なお、HTTPSのリダイレクト設定を行うと、HTTPにアクセスしたユーザーをHTTPSに転送できます。リダイレクトを行う場合、FTPソフトで.htaccessをダウンロードし、.htaccessに必要な記述を追加します。その後、FTPソフトで.htaccessをサーバーにあげれば作業完了です。

さらに、SSL導入後に混在コンテンツ(Mixed Content:SSLと非SSLが混在する状態)が発生した場合、Google ChromeであればChromeデベロッパーツールで該当箇所のHTMLを修正すれば、問題を解消できます。

 

SSL証明書の更新・管理のポイント

SSL証明書は、有効期限を過ぎるとサイトの安全確保ができなくなり、サイト閲覧ができなくなります。すると利用者が離れ、SEOの評価も下がってしまいます。そのため、SSL証明書が期限切れにならないようにすることが重要です。

SSL証明書の更新は、期限切れになる90日前から30日前まで可能なので、この期間に入ったら早めに更新しましょう。更新切れを避けるためには、スケジューラーなどで管理する方法もありますが、証明書の機能を使って自動更新することを推奨します。

また、SSL証明書のエラーには、期限切れのほかに設定不備や証明書の失効、証明書のドメイン名(またはホスト名)とコモンネームの不一致、混在コンテンツや危険性があるサイトに対する警告などがあります。各エラーや警告に対してはブラウザごとに対応が異なるので、使用するブラウザごとに対応を確認してください。

 

SSL証明書の改ざんリスク

SSLは、インターネット通信時の改ざんやなりすましなどを暗号化によって防ぎます。しかし残念なことに、どんなセキュリティ対策でもひとつの手法ですべての悪意に対応するのは困難です。たとえば、SSLのプロトコルに脆弱性があったり、SSL証明書自体が改ざんされたりするリスクもあり得ます。

そのため、SSLと併用してWAF(Web Application Firewall)を導入することがおすすめです。WAFは、Webアプリケーションの脆弱性を攻撃するウイルスやマルウェアへの対策として有効であり、SSLと併用することで安全性を強化できます。

 

最新のSSL技術

インターネット上の通信では、盗聴やなりすまし、改ざんなどによって、サイト運営者や利用者に被害を与える悪意ある存在が後を絶ちません。一方で、安全性の向上を目指す側も、常に新たな技術を生み出し続けています。

たとえば、TLSは1999年に1.0がリリースされて以来、1.2、1.3と進化を続けています。TLS1.3では、1.2より高速処理ができるようになり、脆弱性も改善されました。

しかし、2025年現在まだ登場していない量子コンピュータが使えるようになると、現在の暗号化は簡単に解読されると言われています。現時点ではまだ実現していないものの、将来的なリスクとして、量子コンピュータ時代にも対応できる暗号技術の開発が求められています。

 

まとめ

インターネットで通信を行う場合、盗聴やなりすまし、改ざんのリスクがあるため、SSLによる暗号化の技術が必須となっています。

SSLは認証レベルによっていくつかの種類に分かれ、手軽で安価なものから、高い認証レベルをもつものまで存在します。自社の目的やセキュリティ要件に応じて、適切なSSLを選定することが重要です。また、SSLの暗号化技術でもすべての攻撃に対応できるわけではないため、WAFの併用などでより高い安全性を確保することが推奨されます。

WAFの導入を検討するのであれば、シグネチャ方式とロジックベースの併用で安全性を高めた「Cloudbric WAF+」がおすすめです。「Cloudbric WAF+」については以下のサイトで詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

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セキュリティインシデントとは? 発生原因や対策方法・事例を解説

現代社会ではどのような事業に取り組む際も、多様なデジタル機器やネットワークを使用します。安全に事業を進め、企業として安定的な成長を目指すためには、セキュリティインシデントについて正しい知識を持つことが不可欠です。

当記事では、セキュリティインシデントの意味や近年発生した事例を紹介します。情報セキュリティに関する理解を深め、安全な事業運営を目指したい場合には、参考にしてください。

 

セキュリティインシデントとは

セキュリティインシデントとは、情報システムやネットワークの安全性を脅かすトラブルです。例えば、マルウェア感染・不正アクセス・情報漏えい・システム障害などがセキュリティインシデントと呼ばれます。

セキュリティインシデントは、外部からの攻撃のみが原因で発生するとは限りません。従業員の人為的なミスや自然災害などが引き金となり、大規模なトラブルに発展するケースもあります。

 

セキュリティインシデントの主な発生要因

セキュリティインシデントの発生要因は主に、外的要因・内的要因・環境要因の3種類に分類できます。

 

・外的要因

外的要因とは、主にサイバー攻撃や不正アクセスなど、悪意のある第三者によってもたらされる外部からの脅威です。具体的には、ランサムウェア攻撃・SQLインジェクション・不正ログインなどが外的要因に分類されます。

外的要因によるインシデントを防止するためには、ファイアウォールや侵入検知システム(IDS/IPS)を活用して、技術的に監視や防御を行う方法が一案です。

 

・内的要因

内的要因とは、従業員の過失や管理体制の不備といった企業内部の問題です。たとえば、メールの誤送信やアクセス権限の不適切な管理によって発生した情報漏えいは、内的要因が原因のインシデントにあたります。従業員が行った顧客情報の不正持ち出しも、内的要因によるインシデントです。

内的要因による被害を防止するには、情報セキュリティの重要性や重要情報の取り扱いルールに関して、十分な従業員教育を行う必要があります。併せて、アクセス権限の設定を見直し、適切に強化する対応が必要です。

 

・環境要因

環境要因とは、地震や台風などの自然災害や、外部サービスの障害です。大規模な地震や台風が発生すると通信機器の物理的な破損・停電により、事業運営に支障が生じることも珍しくありません。また、自社が利用している外部サービスやクラウドサーバーの障害が原因の場合もあります。環境要因による影響を軽減するには、事前に情報資産のバックアップを取得する・BCPを策定するなどの対策をとりましょう。

 

セキュリティインシデントの発生事例

大規模な情報漏えいやデータ改ざんが発生した場合には、企業の信頼を揺るがす事態に発展する恐れがあります。近年発生したセキュリティインシデントの事例を知り、十分な対策をとることの必要性を今一度確認しましょう。

 

・大手通信会社が不正持ち出しで約596万件の個人情報漏えい

2023年に大手通信会社の業務委託先で、映像配信サービスやインターネット接続サービスを利用していた一部顧客の個人情報が流出しました。流出した個人情報は、約596万件にものぼります。

大規模な情報流出を引き起こした直接的な原因は、業務委託先に勤務していた派遣社員の不正です。元派遣社員は業務用PCから個人契約したストレージにアクセスする手法で、大量の個人情報を持ち出しました。

大手通信会社では事故の再発防止策として、個人情報管理体制を強化しています。併せて業務委託先の監督を強化し、サービスの向上に努めている最中です。

 

・大手電機メーカーが不正アクセスで約5千件の個人情報漏えい

2024年に大手電機メーカーの運営するオンラインストアや食材宅配サービスが第三者による不正アクセスを受け、約5千件の個人情報を漏えいする事故が発生しました。漏えいした情報は、一部顧客の氏名、郵便番号、住所、メールアドレスなどです。特定期間にオンラインストアを利用し、クレジットカードで買い物した顧客の場合、カード番号、パスワード、名義人名なども流出している可能性があります。

事故の発生要因は、Webサイトの脆弱性を突いた攻撃で不正なスクリプトを埋め込まれ、顧客の入力した個人情報を外部へ転送されたことです。大手電機メーカーでは個人情報保護委員会・警察へ事故の詳細を報告し、より詳細な調査と再発防止対策の検討を進めています。

 

セキュリティインシデントの対策方法

情報資産を正しく管理し、適切な対策によってトラブル防止に努めることは、企業としての責任です。以下では、セキュリティインシデントの被害拡大防止、発生抑制対策として取り組みたい3つの事項を紹介します。

 

・セキュリティ体制を明確にする

情報セキュリティ対策の第一歩として、経営陣のリーダーシップのもと、十分なセキュリティ体制を整備しましょう。体制整備に取り組む際には自社の事業が抱えるリスクの概要を調査して認識し、影響を軽減するために必要なタスクを明確にすることが必要です。

全社的なセキュリティ体制を構築するために、十分なノウハウを持つ人材による「セキュリティ統括機能」を設置して、経営層の意思決定をサポートしましょう。セキュリティ統括機能を構築した後にはスピーディーな対応を促すため、インシデント発生時の対応チームを編成したり指揮系統を確立したりすることが重要です。

参照元:経済産業省商務情報政策局サイバーセキュリティ課独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver2.0 付録Fサイバーセキュリティ体制構築・人材確保の手引き
12~15ページ

 

・システムを定期的に更新する

OSやソフトの状態が古いまま放置すると、脆弱性を狙ったサイバー攻撃の標的になるリスクがあります。リスクを回避するにはベンダーの通知に気を配り、OSやソフトのアップデートを確実に行って、最新の状態を維持してください。

ベンダーから受け取るアップデートの通知を見逃すリスクがある場合は、従業員への連絡方法を工夫する対策が必要です。たとえば、メールによる通知で見逃しが目立つ場合は、チャットで連絡する方法を検討しましょう。

 

・セキュリティツールを導入する

組織として情報セキュリティ対策に取り組む際には、適切なセキュリティツールを導入することも欠かせません。サイバー攻撃の被害を防止する対策としては、ファイアウォール・侵入検知システム(IDS/IPS)を導入し、システムやネットワークの安全性を確保する方法があります。運営しているWebサイトの安全性を強化したい場合には併せて、WAFの導入も検討しましょう。

WAFとは、Webサイトの保護に特化したセキュリティツールです。WAFを導入するとSQLインジェクションやコマンドインジェクションなど、ファイアウォールや侵入検知システムで対応できないサイバー攻撃も防御できます。

 

まとめ

セキュリティインシデントは主に、悪意のある第三者によるサイバー攻撃・企業内部の過失・自然災害や外部サービスの障害などが原因で発生します。トラブルの発生リスクを軽減し、万が一起こった場合の被害を最小限に留めるためには、組織としての体制整備やセキュリティツールの導入に取り組みましょう。

取り組みを主導できる専門知識が豊富な人材がいない場合には、ぜひクラウド型WAFサービス「Cloudbric WAF+」の導入を検討してください。Cloudbric WAF+の詳細は、以下のページで確認できます。

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クリックジャッキングとは?攻撃の手口や事例・対策方法をわかりやすく解説


企業が警戒すべきサイバー攻撃のひとつに、クリックジャッキングがあります。クリックジャッキングに遭うと、企業は大きな損失を被る恐れがあるので注意が必要です。この記事ではクリックジャッキング攻撃がどのような手口で行われているかを説明し、具体的な対策方法を取り上げます。ぜひこの記事を読んで、企業のWebセキュリティ強化に役立ててください。

 

クリックジャッキングとは

クリックジャッキング(Clickjacking)とは、Webサイト利用者を視覚的にだまして、意図しない操作をさせるサイバー攻撃手法のひとつです。ユーザーは通常のリンクやボタンをクリックしているつもりでも、実際にはリンクやボタンの上に透明なレイヤーや偽装されたインターフェースが重ねられていて、アタッカーが仕掛けた別の操作に誘導されます。

 

クリックジャッキング攻撃の仕組み

クリックジャッキング攻撃は、Webページに巧妙に仕掛けられています。

アタッカーは、本来のWebページ(被害サイト)の上に、透明化された別のページを重ねます。ユーザーが正規のWebページを訪れても、罠サイトの表示は見えないので危険の存在に気づけません。しかし、実際には透明なページにはアタッカーが意図するボタンやリンクが配置されていて、ユーザーが正規のボタンと思い込んでクリックすると、別の操作に誘導されてしまうという仕組みです。

アタッカーは企業のWebページを利用することもあれば、無害に見える「罠サイト」を自分で作ることもあります。どちらの場合にも、透明のページやボタン、リンクが重ねられていて、悪意のあるサイトや不適切なアクションに誘導されてしまいます。

 

クリックジャッキング攻撃によって発生する影響

クリックジャッキング攻撃によって起こり得る影響を4つ紹介します。

 

・SNSで意図しない「いいね」やフォローが行われる

クリックジャッキング攻撃により、ユーザーが意図せず「いいね」やフォローを行ってしまう被害がよく報告されています。この手口では、FacebookやX(旧Twitter)といったSNSの正規の「いいね」ボタンやフォローボタンの上に、別の透明化されたボタンが配置されています。ユーザーはいつも通りのボタンをクリックしたつもりでも、実際には透明化された別のボタンを押してしまう仕組みです。

クリックジャッキングによりSNSが乗っ取られてしまい、勝手に悪意のあるURLを掲載した投稿をされ、それが拡散されて被害が広がることもあります。

 

・マルウェアをダウンロードされる

クリックジャッキング攻撃は、ユーザーに意図せずマルウェアをダウンロードさせる手口としても利用されています。

悪意のあるマルウェアは、個人情報やクレジットカード情報の窃取、企業秘密の漏えいなど深刻な被害を引き起こす恐れがあるため注意が必要です。特に企業は、この種の攻撃が大規模なデータ漏えいや業務停止につながる場合があるので気をつけましょう。

 

・Webカメラやマイクを乗っ取られる

クリックジャッキングは、Webカメラやマイクといったデバイスの乗っ取りにも悪用されます。

アタッカーは、悪意あるページ上にAdobe Flash Playerなど特定のプラグインの設定画面を透明化された状態で重ねています。ユーザーが何か別の操作だと思い込んでそこをクリックすると、その背後でWebカメラやマイクへのアクセス許可が与えられる仕組みです。

Webカメラやマイクが乗っ取られると、ユーザーの意図に反してカメラやマイクが起動し、自宅内の様子が盗撮されたり、ミーティング中の発言内容が録音されたりする恐れがあります。

 

・意図せず商品の購入・不正送金をさせられる

クリックジャッキングによって最も深刻な被害となり得るもののひとつが、不正送金や意図しない商品の購入への誘導です。

この手口では、「購入する」ボタンや「送金する」ボタンが透明化されていて、その背後に悪意ある操作フィールドが配置されています。この仕掛けにより、ユーザーは気づかない間に高額商品の購入手続きを完了したり、不正送金を実行したりしてしまいます。

 

クリックジャッキング攻撃の対策方法

クリックジャッキング攻撃からの被害を避けるために講じるべき対策を解説します。

 

・ブラウザでJavaScriptやFlashを無効にする

クリックジャッキング攻撃の一部は、JavaScriptやFlashといった技術を利用して実行されるため、これらを無効化することで防御できます。ほとんどのブラウザでは、設定メニューから簡単に無効化が可能です。

ただし、クリックジャッキングはCSSやHTMLのみで実行されることもあるため、この対策をしただけでは完全に防御できたとはいえません。他のセキュリティ対策と併用して実施するようにしましょう。

 

・ブラウザやOSのセキュリティアップデートを実施する

クリックジャッキング攻撃は、ブラウザやOSの脆弱性を悪用して行われることがあるため、常にブラウザやOSを最新バージョンにアップデートをしておくことが大切です。

Google ChromeやMozilla Firefoxなどの主要ブラウザでは、自動更新機能が搭載されているため、この機能を有効にしておくと便利です。OSについても同様に、自動更新機能を活用して新しいセキュリティパッチが適用されるよう設定しておきましょう。

 

・セキュリティ対策ツールを導入する

セキュリティ対策ツールは、不正なプログラムや挙動を検知して警告を発する機能を備えています。これらはクリックジャッキングに限らず、多種多様なサイバー攻撃からシステム全体を保護するのに有効です。

企業のWebセキュリティ対策におすすめなのが、「Cloudbric WAF+」です。企業のWebセキュリティ確保に必須とされる以下の5つのサービスを、ひとつのプラットフォームで利用できます。

  • WAFサービス:Web攻撃の遮断
  • DDoS攻撃対策サービス:最大40GbpsのDDoS攻撃に対応可能
  • SSL証明書サービス:SSL証明書の無料提供・自動発行
  • 脅威IP遮断サービス:脅威IPとして定義されたIPの遮断
  • 悪性ボット遮断サービス:スパイウェアやスパムボットなどの遮断

 

・X-FRAME-OPTIONSを設置する

クリックジャッキング攻撃に対処するには、Webサイト管理者側の対策も重要です。最も効果的な対策として挙げられるのが、外部サイトの表示を制限する「X-FRAME-OPTIONS」ヘッダーの設定です。

「X-FRAME-OPTIONS」には、「DENY」・「SAMEORIGIN」・「ALLOW-FROM」という3つの設定値があります。「DENY」は、全てのページでフレーム表示を禁止する設定です。「SAMEORIGIN」は、同一オリジン内でのみフレーム表示を許可します。「ALLOW-FROM」は、特定オリジンからのみフレーム表示を許可する設定です。

「X-FRAME-OPTIONS」は簡単に実装できるうえ、高い防御効果があるため、多くの企業サイトで採用されています。

 

まとめ

Webブラウザを悪用したクリックジャッキングにより、情報流出やデータ破壊などの深刻な被害が及ぶことがあります。企業は、セキュリティアップデートをこまめに実施したりセキュリティ対策ツールを導入したりして、Webセキュリティ確保に努めましょう。

 

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リバースブルートフォース攻撃とは?基本情報や有効な対策を解説


近年、ますます巧妙化・多様化するサイバー攻撃のひとつに、リバースブルートフォース攻撃と呼ばれる手法があります。従来のセキュリティ対策では防ぐのが難しいこの攻撃は、企業や個人にとって大きな脅威となっています。

本記事では、リバースブルートフォース攻撃における基本的な仕組みや特徴、そして攻撃を未然に防ぐための有効な対策を詳しく解説します。

 

リバースブルートフォース攻撃とは

リバースブルートフォース攻撃は、不正アクセスの中でも独特なサイバー攻撃の手法のひとつです。この攻撃では、特定のパスワードを固定し、それに対して多数のユーザーIDでの不正ログインを試行します。

この攻撃が危険視される理由のひとつは、不特定多数のアカウントを対象としている点です。パスワードに対するIDとの組み合わせを幅広く試行することで、検出や防御が難しくなります。複数回のログイン失敗でアカウントがロックされるような一般的なセキュリティ対策では、この攻撃を完全に防ぐのは困難です。そのため、より高度なセキュリティ対策が求められています。

 

ブルートフォース攻撃・パスワードスプレーとの違い

リバースブルートフォース攻撃は、ブルートフォース攻撃やパスワードスプレー攻撃と比較されることがあります。各手法は似ているようで目的やアプローチが異なるため、以下でそれぞれの違いを詳しく解説します。

 

・ブルートフォース攻撃との違い

ブルートフォース攻撃は、リバースブルートフォース攻撃と異なり、固定されたユーザーID(またはユーザー名)に対して、可能性のある全てのパスワードを試行する手法です。例えば、特定のメールアドレスに対して「123456」や「password」など、広く使用される可能性のあるパスワードを総当たりで入力して、不正ログインを試みます。

一方、リバースブルートフォース攻撃は、逆(リバース)のアプローチです。パスワードを固定し、それに対応するユーザーIDを試行するため、不特定多数のアカウントへの侵入を目指す攻撃手法として特徴づけられます。

 

・パスワードスプレーとの違い

パスワードスプレー攻撃は、リバースブルートフォース攻撃とも一部似ているものの、目的や手法は異なります。この攻撃では、多数のIDに対して同じパスワードを少数ずつ試行する方法を取ります。例えば、「password123」というパスワードを広範なアカウントに試し、その後一定時間待機して別のパスワードで再度試行する形です。短期間に多数の試行をしないのは、セキュリティシステムによるアラートやロックを回避することが目的です。

 

リバースブルートフォース攻撃の仕組み

以下では、リバースブルートフォース攻撃の具体的な仕組みを解説します。

 

・1. 攻撃に使うパスワードを決定する

第1段階は、攻撃に使用するパスワードの選定作業です。ここで狙われるのは、多くのユーザーが使用している可能性の高い、簡単なパスワードです。

例えば、「123456」や「password」といったパスワードは、シンプルで覚えやすいため多くのユーザーが使用していると考えられており、攻撃者はこれらのパスワードを優先的に使用する傾向があります。また、攻撃者が「辞書攻撃」と呼ばれる手法を利用することもあります。この手法では、辞書データベースに登録されている一般的な単語やフレーズを用いて、攻撃に適したパスワードを抽出します。過去のデータ漏えい事件や公開された情報をもとに、実際に使用されているパスワードリストが作成されることもあるため、ユーザー側にも注意が必要です。

 

・2. ユーザーIDを総当たりでログイン試行する

パスワードが決定された後、次になされるのが固定したパスワードによる、複数のユーザーID(アカウント名)へのログインの試行です。この段階では、攻撃者は公開されている情報や過去に流出したデータから入手した大量のユーザーID候補を用います。

例えば、SNSやインターネット上に公開されているユーザー名やメールアドレス、過去のデータ漏えい時に収集したID情報などが利用されるケースがあります。これらを使い、攻撃者は特定のパスワードで総当たり的にログインを試行します。

この作業は手動で行われることは少なく、自動化ツールを用いて効率的に進められることが一般的です。大量のアカウントに対して短時間で攻撃を実行することが可能なため、一部でもセキュリティが脆弱なアカウントが存在すれば、攻撃が成功する確率が高まります。

 

リバースブルートフォース攻撃の有効な対策

リバースブルートフォース攻撃は、従来のセキュリティ対策だけでは防ぐのが難しいため、複数の対策を組み合わせることで、より効果的な防御が可能です。以下では、有効性の高い対策を具体的に解説します。

 

・長くて複雑なパスワードを使用する

最初に取り組むべき対策は、長くて複雑なパスワードを使用することです。パスワードは、英大文字・小文字、数字、記号を組み合わせた12文字以上のものが推奨されます。このような複雑なパスワードを設定することで、攻撃者が試行できるパスワードの組み合わせが膨大になり、攻撃の成功率を大幅に下げられます。

また、攻撃者がよく使用する簡単なパスワード(例:「123456」「password」など)を避けることで、リスクをさらに減らせます。特に注意すべき点は、複数のサービスで同じパスワードを使い回さないことです。ひとつのサービスで情報が漏えいした場合、他のサービスでも同じパスワードを使って不正アクセスが行われる可能性が高まるため、サービスごとに異なるパスワードを設定することが重要です。

 

・多要素認証を活用する

多要素認証(MFA)は、リバースブルートフォース攻撃を防ぐうえで非常に有効な手段です。この認証方式では、IDとパスワードのほか、追加の認証要素を要求します。スマートフォンに送信される1回限りのコード(ワンタイムパスワード)や、生体認証(指紋や顔認証)などが代表例です。

多要素認証を導入しておくことで、攻撃者が仮に正しいIDとパスワードの組み合わせを見つけたとしても、追加の認証要素に阻まれてログインは成功しません。さらに、生体認証や物理トークンなど、より高度な認証方式を採用することでセキュリティを強化することが可能です。

 

・パスワードマネージャーを利用する

パスワードマネージャーを活用することで、より安全かつ効率的にパスワードを管理できます。このツールは、英大文字・小文字、数字、記号を含む強力なパスワードを自動生成し、それを安全に保存します。そのため、ユーザーは複雑なパスワードを覚える必要がなくなり、それぞれのアカウントに異なるパスワードを設定することが可能です。

さらに、いくつかのパスワードマネージャーには、ダークウェブモニタリング機能が搭載されており、自身の情報が漏えいしていないか定期的に確認できることも利点です。

 

・セキュリティ対策ツールを導入する

最後に、セキュリティ対策ツールの導入により、リバースブルートフォース攻撃のリスクを大きく下げることが可能です。これらのツールは、短期間での大量のログイン試行や異常な挙動を監視し、不正アクセスの兆候を早期に発見します。例えば、不審な動きが検出されると、自動的にIPアドレスをブロックしたり、管理者に通知を送ったりする機能を備えています。

特に「Cloudbric WAF+」のような企業向けのセキュリティサービスは、専門知識がなくても簡単に導入・運用できるため、どのような企業にも適しています。

 

まとめ

リバースブルートフォース攻撃は、固定のパスワードを用いて多数のユーザーIDを試行するというサイバー攻撃です。この攻撃は、従来のセキュリティ対策だけでは防ぎきれない場合があり、特に不特定多数のアカウントを狙うため、リスクが広範囲に及ぶ点が特徴です。

有効な対策としては、長くて複雑なパスワードの設定のほか、多要素認証の導入、パスワードマネージャーの活用、セキュリティ対策ツールの利用が挙げられます。

サイバー攻撃が日々高度化している現代では、個人と企業の双方がセキュリティ意識を高め、継続的に対策を強化することが重要です。Cloudbric WAF+ のようなツールを活用しながら、オンライン環境の安全性を確保する取り組みを進めていきましょう。

 

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SBOMとは? 導入メリット・課題をわかりやすく解説


企業が利用しているソフトウェアの透明性を高め、脆弱性の管理やライセンスコンプライアンスの確保を効率化したいなら、SBOMの導入がおすすめです。企業のセキュリティ強化を図りたい情報担当者に向けて、SBOMの概要や重要視される背景、導入するメリットと付随する課題などを解説します。自社のニーズに合ったSBOM管理ツールの選び方も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

 

SBOM(Software Bill of Materials)とは

「SBOM(エスボム)」とは、「Software Bill of Materials」の頭文字を取った言葉であり、日本語に訳すと「ソフトウェア部品構成表」です。ソフトウェアを組み立てるコンポーネント(構成要素)やライセンス情報、脆弱性、依存関係などを一覧にしたものを指します。わかりやすい例として、食品包装に記載されている食品表示(原材料名や添加物、製造者など)のようなものです。

その他にも、ソフトウェアに関する以下の情報が含まれます。

  • サプライヤー名
  • コンポーネントのバージョン
  • タイムスタンプ
  • SBOM作成者 など

SBOMはソフトウェアの詳細情報をすぐに確認できるだけではなく、関係者間での共有により、ソフトウェアサプライチェーンの透明化やセキュリティの強化、ソフトウェア管理にまつわる課題解決につながります。

 

SBOMが重要視される背景

アメリカでは、2021年に発行された「米国大統領令14028(米国サイバーセキュリティ大統領令)」をきっかけに、SBOMの重要性が問われ、多くの企業がSBOMの導入に積極的な姿勢を取るようになりました。

日本でも、SBOMの導入に向けた取り組みが広がりつつありますが、その背景には以下の事情が挙げられます。

 

・ソフトウェアサプライチェーン攻撃が増加している

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が2024年に発表した「情報セキュリティ10大脅威 2024(組織)」によると、「サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃」が2位にランクインしており、10大脅威のひとつとして取り上げられるのは6年連続6回目です。

参照:情報セキュリティ10大脅威 2024|IPA

ソフトウェアサプライチェーン攻撃のターゲットとなった組織は、大規模な被害を受け、信頼性や業務継続にも深刻な影響が及ぶおそれがあるため、厳重な対策を講じなければなりません。

 

・経済産業省がSBOM導入の手引を発表した

日本でもSBOMの重要性が認識されており、経済産業省が2023年に「ソフトウェア管理に向けたSBOM導入に関する手引」を公開し、SBOMの導入に向けた取り組みを推進しています。

その手引には、SBOMの基本情報をはじめ、導入における実施事項や認識しておくべきポイントがフェーズごとにまとめられています。さらに、ソフトウェア管理の効率化やセキュリティの強化を図る具体的な方法も併せて確認できます。

 

SBOMを導入するメリット

SBOMを導入するメリットを3つ解説します。

 

・ライセンス違反リスクを軽減できる

企業が利用しているOSS(オープンソースソフトウェア)やサードパーティ製コンポーネントのライセンス情報の正確な把握が可能です。

ライセンス情報が一元管理されると、各コンポーネントのライセンス情報を簡単にチェックできるため、新たなコンポーネントを組み立てる場合も含め、ライセンス違反の未然防止に役立ちます。

また、SBOMツールの自動管理機能を活用すれば、工数や人的ミス、運用コストの削減にも効果的です。

 

・脆弱性管理にかかる時間・コストを低減できる

ソフトウェアのコンポーネントを詳細に可視化できることから、どこにどのような脆弱性が発生しているかを見極められます。新たな脆弱性が検出された場合、影響が及ぶ範囲の正確な特定がスムーズです。

また、SBOMツールを活用すれば、脆弱性スキャンや修正作業の効率化、コスト削減が可能な上、ソフトウェアの信頼性や安全性の向上にも寄与します。

 

・開発効率と生産性が向上する

既存コンポーネントを再利用する場合、SBOMに過去に利用されたコンポーネント情報が記録されているため、新たな調査や承認作業は必要ありません。開発者は機能開発や品質向上に集中できることで、開発効率と生産性の向上につながります。

また、ソフトウェアを可視化し問題を早期発見することで、開発期間の短縮や開発コストの削減などが可能です。

 

SBOMを導入する際の課題

既出の手引によると、SBOMの導入にはコストや人材、技術面などのさまざまな課題があります。また、SBOMの位置づけや効果が正しく認識されていないことも課題のひとつです。

さらに、脆弱性情報の誤りやコンポーネントの誤検出・検出漏れが発生するおそれもあるため、出力結果は人の目できちんとチェックしなければなりません。

参照:ソフトウェア管理に向けた SBOM(Software Bill of Materials)の導入に関する手引 ver 2.0 |経済産業省 商務情報政策局 サイバーセキュリティ課

SBOMの導入を考えているものの、社内にセキュリティ専門家がいない企業には、手軽に運用できるセキュリティプラットフォーム「Cloudbric WAF+(クラウドブリック・ワフプラス)」の利用がおすすめです。

Webセキュリティの確保に必要とされる、以下の5つのサービスをまとめて利用できます。

  • WAFサービス
  • DDoS攻撃対策サービス
  • SSL証明書サービス
  • 脅威IP遮断サービス
  • 悪性ボット遮断サービス

エージェントやモジュールなどのインストールは不要である上、「サービス申し込み」→「セキュリティプラットフォーム構築」→「DNS情報変更」の3ステップを踏めば、導入は完了です。自動レポート作成機能やわかりやすいUIにより、脅威の見える化を実現します。

 

SBOM管理ツールを選ぶ際の注意点

SBOMを管理するためのツールを選ぶ際に留意すべき3つのポイントを紹介します。

 

・必要な機能が揃っているか

SBOM管理ツールを選ぶ際の条件として、まず確認すべきことは、自社のニーズに合う機能が備わっているかどうかです。

例えば、導入の主な目的がセキュリティ対策の場合、脆弱性の検出やリスク評価、トリアージ(優先順位付け)、対応管理機能などが充実しているものが求められます。

一方、コンプライアンス遵守やOSSライセンス管理を重視する場合は、ライセンス情報の解析や違反検出機能などが必要です。

 

・脆弱性の検出性能が高いか

極めて重要な前提として、コンポーネントの脆弱性を正確かつ迅速に特定できる脆弱性の検出性能も欠かせません。

この性能が高ければ高いほど、セキュリティリスクへの早期対応が可能となり、開発プロジェクト全体の安全性が向上します。

 

・既存の外部ツールと連携が可能か

既存のツールやシステムとの連携性も必要な要素であり、特に構成管理ツールやCI/CDパイプライン、脆弱性データベースなどとの連携可否を確認しておくことで、効率的な運用につながります。

例えば、SBOM管理ツールと構成管理ツールを連携させると、ソフトウェア構成情報を自動的に取り込み、SBOMの生成や更新の効率化を実現できます。

 

まとめ

ソフトウェアの詳細情報を確認できるSBOMの導入には、脆弱性管理にかかる時間やコストの削減、ライセンス違反リスクの軽減、開発効率と生産性の向上など、さまざまなメリットがあります。SBOM管理ツールを選ぶ際は、求める機能の有無や脆弱性の検出性能の高さ、既存の外部ツールとの連携可否をチェックすべきです。

また、SBOMの導入時には、社内にセキュリティ専門家がいなくても、手軽に運用できるクラウド型WAFサービス「Cloudbric WAF+」の活用がおすすめです。セキュリティを強化して、企業のWebシステムを守りましょう。

 

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