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トロイの木馬ウイルスとは?特徴・症状・感染時の対処法をわかりやすく解説


近年、サイバー攻撃の手口はますます巧妙化しており、中でも「トロイの木馬ウイルス」は危険性の高いマルウェアとして、企業や個人に深刻な脅威を与えています。

本記事では、トロイの木馬について、他のマルウェアとの違いや感染時に起こる主な症状、被害事例や感染後の対処方法について紹介します。

 

トロイの木馬ウイルスとは

トロイの木馬ウイルスとは、一見すると無害に見えるファイルやソフトウェアに偽装してパソコンやスマートフォン、サーバーなどに侵入し、裏で不正な操作を行うマルウェアの一種です。名称は、大きな木馬の内部に兵士を潜ませて敵の城内に侵入したギリシャ神話の「トロイの木馬」に由来します。

代表的な例としては、画像ファイルや文書ファイル、便利そうな無料アプリなどに偽装し、利用者がソフトウェアを開いた瞬間に感染させる手口があります。さらに近年では、偽装すら行わず、ソフトウェアの脆弱性や設定ミスを突いて、自動的にインストールされるケースも確認されており、ユーザー操作の有無にかかわらず感染する危険性が高まっています。

 

他のウイルスとの違い

トロイの木馬ウイルスは、コンピュータウイルスやワームといった他のマルウェアと特徴や感染のきっかけ、拡散方法などに違いがあります。主な相違点は、下表のとおりです。

トロイの木馬 コンピュータウイルス ワーム
特徴 正常なソフトに見せかけて侵入し、不正動作を行う 他のプログラムに寄生して不正に動作させる 自己増殖し、単体で動作可能なプログラム
感染のきっかけ ユーザーがファイルを開くなどの操作によって感染 寄生先のプログラムが実行されることで感染 ネットワーク経由で自動的に拡散・感染
拡散方法 自動では拡散しない(拡散機能を持たない) 寄生したプログラムを介して他のファイルに拡散 自律的に他の端末にコピー・拡散されていく

 
トロイの木馬は、コンピュータウイルスのように他のプログラムに寄生するわけでもなく、ワームのように自律的に拡散する機能も持ちません。見た目を偽装してユーザーに自発的に開かせるという「だまし」の手口が特徴であり、マルウェアの中でもとくに人間の心理を突いた巧妙な攻撃と言えます。

こうした特性を正しく理解し、不審なファイルを開かない習慣やセキュリティソフトの活用を徹底することが、トロイの木馬による被害を防ぐ鍵となります。

 

トロイの木馬に感染するとどうなる?

トロイの木馬に感染すると、どのような被害が発生するのでしょうか。ここでは、主な影響を3つ取り上げます。

 

機密情報の漏えい

トロイの木馬に感染すると、パソコン内の個人情報や業務データが不正に取得される可能性があります。攻撃者が保存されているパスワードやクレジットカード情報、オンラインバンキングの認証情報などを抜き取り、悪用するケースが報告されています。

さらに、キーロガー機能によってキーボードの入力内容が記録され、通信内容まで盗まれるおそれもあります。こうした情報が流出すると、金銭的な被害や不正アクセスなど、深刻なトラブルに発展しかねません。

キーロガーについては以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてください。
「キーロガーの対策とは?仕組みや危険性・スマホでも気をつけるべきポイントを解説」

 

パソコンのパフォーマンス低下

トロイの木馬によってパソコンの裏で不正な処理が実行されると、CPUやメモリ、ストレージといったリソースを大量に消費し、動作が極端に遅くなることがあります。

加えて、ネットワーク経由でのデータ送信が増加することで、インターネット接続が不安定になるといったトラブルも発生します。そのままにしておくと、フリーズや起動できなくなるなど、深刻な状態に陥る可能性もあります。

 

経済的な悪影響

業務システムや生産設備がトロイの木馬により制御不能になると、サービスの停止や出荷の遅延など、企業活動に大きな混乱を招く可能性があります。復旧には多くの人員と時間、専門的な対応が必要となり、損害額が膨らむおそれもあります。

さらに、機密情報や顧客の個人情報が流出すれば、企業としての信頼を失うだけでなく、謝罪や訴訟対応に追われる事態にも発展しかねません。企業にとっては経済面だけでなく、社会的な信用へのダメージも深刻な問題となります。

 

トロイの木馬による被害事例

ここでは、トロイの木馬によって発生した被害事例について紹介します。

 

事例1:パソコン遠隔操作事件

「パソコン遠隔操作事件」は、2012年に発生した、トロイの木馬型マルウェアを悪用したサイバー事件です。犯人は、トロイの木馬型マルウェア「iesys.exe」を他人のパソコンに感染させて遠隔操作を行い、パソコンの所有者が知らないうちに、殺人予告や襲撃予告などの犯罪メッセージをインターネット上に投稿しました。

この攻撃により、実際に複数の無関係な人物が誤認逮捕されるという深刻な事態が発生しました。当時、前例の少ない手口によるサイバー犯罪として、大きな社会的注目を集めました。

 

事例2:大学内で発生した情報漏えい事件

2022年3月、ある国立大学のパソコンがトロイの木馬の一種「Emotet」に感染する事案が発生しました。これにより、外部からメールサーバーが悪用される可能性が浮上し、大学側は職員や学生の認証情報を変更するなどの対応を実施しました。

幸い大きな被害は確認されませんでしたが、教育機関における情報セキュリティ対策の重要性を改めて浮き彫りにしたものと言えるでしょう。

 

トロイの木馬に感染したらどうしたらどうすべき?

パソコンがトロイの木馬に感染した疑いがある場合、どのように対処すればよいのでしょうか。ここでは、感染が判明した際にすぐに実施すべき3つのポイントをご紹介します。

 

ネットワークから隔離する

トロイの木馬に感染した場合は、被害の拡大を防ぐために、パソコンを速やかにネットワークから切り離すことが重要です。有線接続の場合はLANケーブルを抜き、無線接続であればWi-Fiをオフにし、自動接続の設定も忘れずに解除しておきましょう。

これにより、同じネットワーク内の他の端末への感染拡大を防げます。社内ネットワーク全体への影響を最小限に抑えるためにも、初動対応として最優先で行うことが推奨されます。

 

ウイルス対策ソフトでフルスキャンする

ネットワークから切り離したあとは、ウイルス対策ソフトを使ってパソコン全体のフルスキャンを実行しましょう。トロイの木馬は独立したマルウェアであるため、ウイルス対策ソフトの定義ファイルに一致すれば自動的に検知・駆除されます。

さらに、感染の疑いがある他の端末についても同様にフルスキャンを行うことで、ネットワーク全体への被害拡大を防止できます。

 

関係各所に連絡する

トロイの木馬に感染した場合、社内のセキュリティ担当や情報システム部門へ迅速に報告しましょう。これにより、報告をうけたセキュリティ担当者は被害の拡大を防ぐために必要な対応を取ることが可能になります。

専門部署がない場合は、日本国内のサイバー攻撃対応機関である「JPCERT/CC」や最寄りの警察へ相談するとよいでしょう。この際、通信ログやスクリーンショットなど、証拠となる情報を確保しておくと、調査や対応がスムーズに進められます。

 

まとめ

この記事では、トロイの木馬ウイルスについて特徴や感染したときの症状、対処方法について紹介しました。トロイの木馬ウイルスは、一度感染すると情報漏えいや業務停止など、企業に大きな損害をもたらすリスクがあります。だからこそ、日頃からの予防対策が不可欠です。

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ダークウェブとは?被害リスクや対策をわかりやすく解説


インターネットの裏側には、検索エンジンではたどり着けない「ダークウェブ」と呼ばれる領域が存在します。近年では、このダークウェブ上で個人情報や企業の機密データが不正に取引されるケースが増えており、企業にとって大きなリスクとなっています。

本記事では、ダークウェブの基本から危険とされている理由、企業が取るべき対策について紹介します。

 

ダークウェブとは

ダークウェブとは、Googleなどの通常の検索エンジンではアクセスできないインターネットの領域です。もともとは匿名性を保った安全な通信を目的としてアメリカ海軍が開発した技術をベースに、「オニオンルーティング(Tor)」という仕組みにより、通信内容やアクセス元を隠匿します。

しかし現在では、その匿名性が悪用され、盗まれた個人情報やマルウェア、違法薬物などが取引される危険なマーケットとしての側面を持つようになりました。

 

インターネットの3層構造について

インターネットはよく「氷山の構造」に例えられます。私たちが普段目にしているのは、海面に出ている「サーフェスウェブ」の部分です。これは検索エンジンで表示される一般的なWebサイトやSNS、ニュース、オンラインショップなどが含まれ、誰でも自由にアクセスできます。

その下には、検索エンジンにインデックスされていない領域「ディープウェブ」が広がっています。ここには、オンラインバンキング、医療情報、社内ポータル、学術データベースなど、パスワードや認証が必要な正規の情報が多く含まれています。

そして最も深く、匿名性が高い空間が「ダークウェブ」です。専用ブラウザを通じてアクセスされ、違法取引などに使われるケースが問題視されています。

 

ダークウェブには何がある?取引されているものとは

ダークウェブではどのようなものが取引されているのでしょうか。以下で代表的な3点を紹介します。

 

ID・パスワードのリストや個人情報

ダークウェブでは、ID・パスワードのリストや氏名、住所、マイナンバーなどの個人情報が不正に売買されています。これらの情報をもとに本人になりすましてログインし、業務システムやクラウドに不正アクセスされる可能性があります。

標的型攻撃の準備段階で利用されることもあり、内部情報の窃取や業務妨害につながる恐れもあります。

 

クレジットカード情報

ダークウェブでは、スキミングやハッキングによって盗まれたクレジットカード情報が不正に取引されています。これらの情報を悪用されると、第三者により高額な買い物が行われたり、不正送金によって金銭的被害を受けたりするケースがあります。

また、盗まれた情報が偽造カードに再利用されることもあり、知らぬ間に被害が拡大する恐れもあります。

 

ランサムウェアなどの不正ソフト

ダークウェブでは、ランサムウェアと呼ばれる身代金要求型ウイルスも活発に取引されています。近年は「RaaS(Ransomware as a Service)」という仕組みが普及し、専門知識がない人でもツールを購入すれば攻撃を仕掛けられるようになりました。

このような不正ソフトの流通により、サイバー攻撃の敷居が下がり、企業や団体への被害がさらに拡大しています。

 

なぜダークウェブが危険なのか

ダークウェブへのアクセスは、危険性が高いことから避けるべきだと言われています。なぜダークウェブは危険だとされているのでしょうか?ここでは、主な3つの理由を紹介します。

 

犯罪に巻き込まれる可能性

ダークウェブは匿名性が高いため、知らないうちに違法なWebサイトやサービスへアクセスしてしまい、結果として犯罪に加担してしまうケースもあります。違法な情報の閲覧ややり取りは、意図がなかったとしても、法的責任を問われる可能性があります。

さらに、利用中に自身の個人情報が盗まれ、なりすまし被害を通じて家族や知人にまで被害が広がるリスクもあります。

 

マルウェアに侵害されるおそれ

ダークウェブにアクセスすることで、マルウェアやウイルスに感染するリスクがあります。悪意あるサイトやファイルを開いてしまうと、デバイスが不正プログラムに侵され、個人情報の漏えいやデータの破損を引き起こす可能性があります。

さらに、ランサムウェアに感染すれば、ファイルを人質に金銭を要求される事態にもなりかねません。

 

詐欺被害に遭うリスク

ダークウェブでは、偽のサービスや商品の取引が横行しており、利用者が詐欺被害に巻き込まれるリスクがあります。たとえば、偽造品を購入させられたり、個人情報を抜き取られたりするケースも少なくありません。

信頼できる相手の見極めが難しい環境だからこそ、トラブルが深刻化しやすいと言えます。

 

ダークウェブに情報を掲載されないようにするには

企業の情報がダークウェブに掲載されないようにするには、どのような対策を講じたらよいのでしょうか。以下の3つの方法を推奨します。

 

セキュリティパッチの迅速な適用

ネットワーク機器やソフトウェアには、設計上の不備や設定ミスなどに起因する「脆弱性」と呼ばれるウィークポイントのような部分が必ず存在します。

脆弱性を修正せずに放置し続けると、悪意のある攻撃者にとって侵入口となり、ゼロデイ攻撃やランサムウェアなどのサイバー攻撃に悪用される可能性が高まります。これらの攻撃は、機密情報の漏えいや業務の停止といった深刻な被害をもたらす可能性があるため、メーカーから脆弱性を修正するために定期的に提供される「セキュリティパッチ(修正プログラム)」を、公開され次第速やかに適用することが重要です。

管理対象の機器やソフトウェアが多い企業では、パッチ適用管理ツールの活用により、適用状況の可視化や一元管理が可能になります。これにより、対応漏れを防ぎながら効率的な運用が実現できます。

 

社員教育の実施

ダークウェブへの情報流出を防ぐためには、企業の情報セキュリティの最前線を担う従業員への教育が欠かせません。知識や意識が不足していると、不審なメールやアクセスに気づかず、マルウェア感染や情報漏えいなど深刻な被害を引き起こす可能性があります。

定期的な社内研修やeラーニングを活用して情報セキュリティのリテラシーを高めることで、攻撃への早期対応や被害の未然防止が可能になり、結果として組織全体の防御力強化にもつながります。

 

マネージドサービスの活用

情報セキュリティ人材の確保が難しい企業にとって、「マネージドサービス」の活用もおすすめの方法のひとつです。マネージドサービスとは、セキュリティ監視や脆弱性管理、パッチ適用、ログ分析といったIT業務を外部の専門業者に委託できるサービスです。

専門的な知見や体制を持つプロに任せることで、社内の負担を減らしつつ、コストを抑えて24時間365日体制の監視や迅速なインシデント対応を実現できます。これにより、自社の情報セキュリティレベルを効率的に強化することができます。

 

まとめ

本記事では、ダークェブの基本から危険とされている理由、企業が取るべき対策について紹介しました。

ダークウェブは匿名性が高く、違法な取引やサイバー攻撃の温床にもなり得る危険な領域です。企業としては、情報漏えいやシステム侵害といった被害を未然に防ぐためにも、日頃から情報セキュリティ対策を強化しておくことが重要です。

特に、不正アクセスやDDoS攻撃の対策には、WAFなどの導入がおすすめです。中でも「Cloudbric WAF+」は、専門知識がなくても導入しやすく、日々進化する攻撃にも対応可能なクラウド型セキュリティサービスです。24時間365日いつでも電話やメールでサポートできるため、セキュリティに特化した人材がいなくても安心して運用することができます。
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日本最大の”AWSを学ぶイベント”「AWS Summit Japan 2025」に出展

 

このたび、ペンタセキュリティは2025年6月25日(水)~26日(木)に幕張メッセで開催される「AWS Summit Japan 2025」に出展いたします。

 

■イベント概要

AWS Summit は、共に未来を描くビルダーが一堂に会して、アマゾン ウェブ サービス (AWS) に関して学習し、ベストプラクティスの共有や情報交換ができる、クラウドでイノベーションを起こすことに興味があるすべての皆様のためのイベントです。
ペンタセキュリティのブースでは、AWS WAFに特化した運用管理サービス「Cloudbric WMS」やAWS WAF専用のマネージドルール「Cloudbric Managed Rules」を紹介します。

 

■開催概要

名称:AWS Summit Japan 2025
主催:アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
開催日時:2025年6月25日(水)~26日(木)
会場:幕張メッセ&ライブ配信
ブース番号:110B
参加費用:無料
登録方法:下記URLより、招待コードは「SPC3815772」とご入力のうえ、ご登録ください。
https://jpsummit-smp25.awsevents.com/public/application/add/241?smtcd=SPC3815772

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ハッカーとは?クラッカーやホワイトハッカーなどの種類と役割


情報システム部門の担当者にとって、「自社がハッカーの標的となった場合、どのような影響があるのか」を想定することは重要です。実際に被害を受けた際には、緊急対応や原因調査に追われるだけでなく、経営層や関係部署からの説明責任を求められる場面も少なくありません。

とはいえ、ハッカーの攻撃手法や近年の動向について、日常的に把握している担当者は多くないのが実情です。そこで本記事では、ハッカーの基本的な定義を整理したうえで、企業として講じるべきセキュリティ対策について解説します。

 

ハッカーとは?基本的な定義

「ハッカー」と聞くと、コンピューターなどから情報を盗み取る犯罪者を想像する人が少なくありません。しかし、そもそもハッキングとは、コンピューター関連の知識に精通した人がシステムやプログラムのチェックや改善を行うことであり、ハッカーの基本的定義は「コンピューターに精通した技術者」です。そのため、「ハッカー」という言葉には本来、悪事や犯罪を行う人といった意味はありません。

また、企業や公共機関のプラスになるようシステムの問題点を改善する「ホワイトハッカー」の存在もあるため、近年は悪意のあるハッカーを単に「ハッカー」と呼ばず、「ブラックハッカー」や「クラッカー」と区別がつくように呼ぶ傾向も強くなっています。

 

・ハッカーの特徴

前述したように、ハッカーとはコンピューターやネットワーク、暗号技術やプログラム解析などに関して高度なスキルをもつ存在です。それらの知識や技術を犯罪や社会の害になる使い方をするハッカーが存在する一方、システムやプログラムの脆弱性の発見やセキュリティ強化などに貢献するハッカーも存在します。

また、善悪や利益を目的とせず、純粋に技術的な興味からハッキングを行うハッカーも存在します。そのため「ハッカーの特徴」は善悪によって区別されるものではなく、あくまでハッキングのスキルをもつ人物であると理解してください。

 

・ハッカーの歴史と有名なハッカー

世界で初めてのハッキングを、いつ、だれが行ったのかは明確ではありません。しかし1960年代前半に、MIT(マサチューセッツ工科大学)にコンピューターに精通した集団が存在し、ハッカー文化の始祖となったと言われています。

また、「ハッカー」は姿や名前を知られないように行動しているイメージもあるかと思われますが、世界的に有名なハッカーも多数存在します。例えば、ケビン・ミトニックは10代からハッカーとして活動し、1982年に北米防空総指令部へのハッキングを行ったことは、映画の題材にもなっています。

また、エドワード・スノーデンは米国軍やCIA(米国中央情報局)で勤務した経歴をもちつつ、米国の公的機関の問題点を世界中に知らせたことで有名です。スノーデンは、米国政府が監視活動によって市民のプライバシーや自由を侵害していることを知り、政府に対して強い反感をもったことから、世界史に残るような告発を行っています。

 

ハッカーの種類

ひと口にハッカーと言っても、さまざまな種類があります。以下では、その種類と概要について解説します。

 

・ホワイトハッカー

民間企業や公共機関の立場から、システムの脆弱性を発見・修正する役割を担うハッカーです。企業に雇用されている場合もあれば、フリーランスとして活動している場合もありますが、いずれも正当な報酬を得て業務に従事しており、いわゆるアウトローではありません。

その行動から、エシカルハッカー(エシカルは「倫理的な」「道徳的に正しい」などの意味)や、正義のハッカーと表現されることもあります。

ホワイトハッカーは、システムの監視やサイバー攻撃の防止、対応、ペネトレーションテスト(侵入テスト)によるセキュリティ強化などを行います。また、バグバウンティ(企業や組織が特定のシステムの脆弱性を発見した人に報奨金を払う仕組み)に参加することもあります。

 

・ブラックハッカー

ブラックハッカーとは、企業や公的機関、個人のシステムに対して不正にアクセスし、重要情報の窃取やシステムの破壊・改ざんなどを行う悪意ある存在です。一般的に「ハッカー」という言葉を使う場合、このブラックハッカーを指します。

ブラックハッカーは、ウイルスやマルウェアを作り出したり、システムへの攻撃を行ったりします。近年は、DDoS攻撃やランサムウェア攻撃(攻撃の解除と引き換えに金銭を要求する)、フィッシング詐欺(偽のメールなどで悪意のあるサイトに誘導し金銭などを得る)などを行うブラックハッカーが増えています。

ブラックハッカーの行動原理は悪意や自分たちの利益であり、社会的に害を及ぼすことが特徴です。攻撃対象者は少なからずダメージを受け、巨額の損失を伴うこともあります。

 

・グレーハッカー

グレーハッカーは、ブラックハッカーとホワイトハッカーの中間的存在です。企業や個人が運営するシステムに許可なく侵入し、脆弱性を発見したうえで報告する場合もありますが、悪用するケースも見られます。

善意による報告を行い、システムを改善できる結果になったとしても、許可なくシステムに侵入する時点で違法性が高いとみなされます。そのため、分類上はブラックハッカーに分類されることも少なくありません。

行動としては、システム運営者が許可しないペネトレーションテスト(侵入テスト)を行い、セキュリティホールや脆弱性を発見して報酬を要求することが一般的です。

 

・クラッカー(Cracker)

クラッカーは、企業のサーバーに侵入して情報を盗んだり、不正にコピーを作成したりするなど、悪意のある行動をとる存在です。そのため、ブラックハッカーとほぼ同じ意味で使われることもありますが、明確に区別する場合は、クラッカーのほうが違法行為に特化した存在とされます。

また、ソフトウェアを不正に改造してチートを可能にする、著作権を侵害する、違法ダウンロードサイトを運営することなどもクラッカーの活動に含まれます。

 

ハッカーの主な手法

ハッカーが使う手口は多数存在しますが、大きくは人の心理を利用する攻撃手法、マルウェア攻撃、ゼロデイ攻撃に分類されます。

 

・人の心理を利用する攻撃手法

なりすましメールやスピアフィッシング(特定の対象に向けて行うフィッシング)、偽のサポート窓口を装った詐欺などがあります。

偽のメールやフィッシングなどの手口は、技術的な攻撃ではなく、人の思い込みや行動パターンを悪用する点が特徴です。これらの手法をソーシャルエンジニアリングと呼ぶこともあります。ソーシャルエンジニアリングという名称は一般的な業務名に見えるかもしれませんが、情報を盗む手口のひとつです。

 

・マルウェア攻撃

マルウェアとは、悪意あるソフトウェアやコードの総称で、ウイルスやワーム、スパイウェア、トロイの木馬などを含みます。データの消去や改ざん、外部ネットワークへの流出や外部への攻撃など、種類は無数に存在し、DDoS攻撃やランサムウェア攻撃などにも利用されます。

 

・ゼロデイ攻撃

まだ対応策が発表されていないシステムの脆弱性を狙って行う攻撃です。根本的な対策が難しいため、こうした攻撃を受けた場合、非常に大きな被害につながる可能性があります。

そのため、該当するソフトウェアの使用を一時的に中止したり、ゼロデイ攻撃に関連する不審な通信を遮断したりするなど、被害を最小限に抑えるための緊急対応が求められます。

 

企業が取るべきハッカーへの対策

ブラックハッカーやクラッカーによる攻撃はいつ行われるかわからないので、企業としては日ごろから対策を講じておく必要があります。企業が取るべき対応として、主に以下が挙げられます。

  • 強力なパスワードと多要素認証(MFA)の導入
    パスワードは使いまわしを避け、できるだけ強化することが重要です。近年は、パスフレーズと呼ばれる複数の単語を組み合わせた文章を使うことで、安全性を強化する動きもあります。また、パスワードと指紋認証など、複数の手法を併用する多要素認証(MFA)も有効です。
  • OSやソフトウェアの定期的な更新
    OSやソフトウェアには、システムの脆弱性を修正するために、管理元から随時アップデートが提供されています。
    そのため、常に最新のバージョンを適用し、OSやソフトウェアを最新の状態に保つことが重要です。
  • 従業員教育
    従業員にマルウェアやフィッシング詐欺などの存在や手口、大きな被害を受けた企業の実例などを紹介し、日常から気をつけるべきことや、取ってはいけない行動などを教育しましょう。
  • 必要のないソフトウェアをインストールしない
    ソフトウェアのインストールをきっかけに、マルウェアなどの脅威が侵入するケースは少なくありません。
    そのため、不要なソフトウェアや、提供元が不明確なソフトウェアのインストールは避けることが推奨されます。
  • 信頼できるクラウド環境にデータを保存する
    クラウドサービスにはさまざまな提供元があり、信頼性にも大きな差があります。
    そのため、サービスの選定にあたっては、セキュリティ対策や運用実績などを確認し、信頼性の高いクラウド環境を選ぶことが重要です。
  • ファイアウォール・クラウドWAF(Web Application Firewall)の活用
    Webサイトやアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃には、ファイアウォールやクラウドWAFが有効な対策となります。クラウドWAFの導入を検討されるのであれば、「Cloudbric WAF+」がおすすめです。

▼「Cloudbric WAF+」の詳細については、以下のサイトをご参照ください。
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ホワイトハッカーの必要性

ブラックハッカーやクラッカーによる悪意ある攻撃のリスクは、企業の大小によらず存在します。そのため、日本政府もホワイトハッカーの育成に力を入れており、企業単位でもホワイトハッカーを雇用する例が増えています。

被害を受けてからでは取り返しがつかないケースもあるので、この機会にホワイトハッカーの必要性を確認し、雇用や依頼などを検討することを推奨します。

 

ハッカーによる攻撃の最新動向と今後のセキュリティ対策

近年、AIはさまざまな分野で活用が進んでいますが、ブラックハッカーやクラッカーもAIを活用し、サイバー攻撃の高度化を図っています。
また、ディープラーニング技術の進展により、偽物と見分けがつきにくい音声や画像を用いた詐欺行為も増加しています。

このように、攻撃者側は次々と最新技術を取り入れ、サイバー攻撃を高度化させているのが現状です。一方で、防御側でも新たなセキュリティ技術の開発が進められています。

たとえば、ブロックチェーンはもともと暗号技術を基盤とした仕組みであり、セキュリティ対策にも活用されています。さらに、複数の秘密鍵の利用や、インターネットから隔離されたオフライン鍵の活用、2段階認証の導入などにより、安全性が一層強化されています。

今後も悪意あるハッカーとセキュリティ対策の攻防は続いていくため、新しい情報に常にアンテナを張ることを心がけましょう。

 

まとめ

世の中には多数の悪意あるハッカーが存在しており、ランサムウェア攻撃やDDoS攻撃、ゼロデイ攻撃など手法も多様化しています。日本の企業が被害を受けた実例もあり、個人や企業としてセキュリティ対策を行うことは必須です。そのため、この機会に悪意ある攻撃への対策強化を図ることをおすすめします。

クラウドWAFは、悪意をもったハッカーからの攻撃をリアルタイムでブロックし、Webサイトやアプリケーションを守るセキュリティ対策として有効です。企業のWebシステムの安全性向上に資する「Cloudbric WAF+」について詳しく知りたい方は、以下のサイトをご参照ください。

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AWS WAF専用のマネージドルール「Cloudbric Managed Rules」の対応リージョンを拡大

 

このたび、ペンタセキュリティはAWS WAF専用のマネージドルール「Cloudbric Managed Rules for AWS WAF」のサービス提供リージョンを拡大いたします。新たに追加されるのは、カナダ西部(カルガリー)とアジアパシフィック(マレーシア)の2リージョンです。

 

■Cloudbric Managed Rules for AWS WAF リージョン拡大について

Cloudbric Managed Rules for AWS WAF(以下Cloudbric Managed Rules)は、AWS WAF向けのマネージドルールです。マネージドルールとは、AWSおよび独立系ソフトウェアベンダー(ISV)によって提供されている、事前に定義されたセキュリティルールのことです。ペンタセキュリティは現在、AWS Marketplace*1で6つのマネージドルール製品(Cloudbric Managed Rules)を提供しており、ユーザーはこれらを購入すれば、さまざまな脅威からアプリケーションを保護することができます。Cloudbric Managed Rulesは、ペンタセキュリティ独自のコア技術に基づいて開発されており、世界的な製品検証機関であるTolly Groupによって高い攻撃検知率が実証されています*2。

AWSが2023年12月にカナダ西部(カルガリー)、2024年12月にアジアパシフィック(マレーシア)にリージョンを開設したことに伴い、ペンタセキュリティは「ユーザー自らがAWS WAFのセキュリティルールを作成しなければならない」という課題を解決すべく、この新しい2つのリージョンに迅速にサービスを提供いたします。

AWS WAFユーザーにとって、セキュリティの専門知識が少ない場合、セキュリティルールの定義と管理は複雑な作業になる可能性があります。Cloudbric Managed Rulesは、このような課題に対処するために特別に設計されました。新しいAWSリージョンへ迅速に導入することで、AWS WAFユーザーにとってより安全な環境の促進を目指します。

 

▽Cloudbric Managed Rules for AWS WAFの購入はこちら

https://aws.amazon.com/marketplace/seller-profile?id=be0471e9-b358-4cad-9a4b-1f7f015ea077

 

*1  AWS Marketplaceは、あらゆる規模の企業が AWS パートナーが提供するソリューションを見つけ、試し、購入し、デプロイし、管理するのに役立つ、厳選されたデジタルストアフロントです。AWS で請求と管理を一元化することで、製品評価をより迅速に行い、ガバナンスを改善し、コストの透明性を高め、SaaS の無秩序な拡大を抑えることができます。
*2 「Cloudbric Managed Rules – API Protection」の検知率を検証したもので、97.31%という高い攻撃検知率を記録しました。
https://www.tolly.com/publications/detail/224153

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シグネチャーとは?セキュリティ分野での役割と重要性を解説


企業の情報システムを管理するうえで、Webアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃は深刻な脅威です。サイバー攻撃の手法が高度化・多様化する中、システム担当者は常に最新のセキュリティ対策を検討し、適切な防御策を講じる必要があります。その中でも、シグネチャー方式のWAFは広く採用されているセキュリティ対策のひとつです。

本記事では、セキュリティ分野におけるシグネチャー(シグネチャ)の定義や種類、重要性について解説します。活用例や導入時の流れにも触れ、シグネチャー方式の課題を解決するサービスにも言及します。

 

シグネチャーとは?セキュリティ分野での役割

シグネチャー(シグネチャ、signature)は、もともと「署名」や「サイン」を意味する英単語です。近年では、以下のような意味で使われることも増えています。

  • 電子メールやSNS:送信者の名前や所属などの情報を文末に自動で挿入する機能
  • プログラミング:メソッドや関数の名前、データの型、引数の数などを示す情報
  • セキュリティ:不正アクセスやマルウェアを検知するための特徴的なデータやルール

本記事では、特にセキュリティ分野に関連して使われるシグネチャーに着目して解説します。

セキュリティ分野でのシグネチャーは、攻撃パターンやマルウェアの特徴を識別するためのデータセットや条件定義のことを指します。たとえば、WAF(Web Application Firewall)では、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングといった脅威度の高い攻撃を検知・防御するために利用します。

なお、WAFとは、Webアプリケーションへの不正アクセスを防ぐためのセキュリティ対策です。Webサイトとユーザーの間の通信を監視・解析し、攻撃パターンに一致するリクエストをブロックすることで、Webアプリケーションの脆弱性を悪用した攻撃から保護します。

 

シグネチャーの種類

シグネチャーには以下のような種類があります。

  • 電子署名(Digital Signature)
    暗号技術によって生成され、文書やデジタルデータの送付者の真正性認証、改ざん検出に役立ちます。
  • ウイルスを検出するシグネチャー(Virus Signature)
    ウイルスやマルウェアを特定するための識別情報で、セキュリティソフトに利用されます。既知のウイルスの特徴的なパターンと照合することで脅威を迅速に検出できます。
  • ネットワークシグネチャー(Network Signature)
    通信パターンを確認することで、ネットワーク経由の不正な動きを検出します。SQLインジェクションやDDoS攻撃の防止に役立ちます。IPS(侵入防止システム)やIDS(侵入検知システム)に利用されます。
  • データの改ざんや破損を検出する(Data Signature)
    公開鍵暗号やハッシュ関数などの技術を利用して生成される識別情報です。データ作成者の証明や改ざんの有無を確認するために使用されます。

 

シグネチャーの重要性

セキュリティ分野において、シグネチャーはデータの安全性や信頼性を確保するために不可欠な技術です。サイバー攻撃の増加や電子取引の普及に伴い、その重要性はますます高まっています。

 

・データ改ざんやなりすましの防止になる

悪意ある第三者によってデータを改ざんされてしまうと、業務の運用やデータの管理などに深刻な影響をおよぼす可能性があります。シグネチャーを適用すると、データのハッシュ値を検証し、改ざんの有無を迅速に特定することが可能です。そのためシグネチャーは通信の安全性確保や向上に貢献します。

また、フィッシングメールなどのなりすましメールは、人間の目では見分けにくいケースも多く、さまざまな被害が報告されています。シグネチャーを用いた電子署名によって送信元の真正性を確認できるため、なりすましメールによる詐欺や攻撃のリスクを軽減できます。

 

・マルウェアやサイバー攻撃を検知できる

マルウェアやサイバー攻撃は年々手口の巧妙化が進んでいるため、既知の脅威を迅速に検出し、適切な対策を講じることが不可欠です。シグネチャーを活用することで、マルウェアのコードや挙動をデータベースに登録し、一致するパターンを検知して脅威を素早くブロックできます。

また、パターンファイルを定期的に更新することで、新たなウイルスや攻撃手法にも迅速に対応できます。

 

・法律面やビジネス面で信頼性の向上につながる

電子契約やデジタル取引が普及する中、取引における契約の真正性を保証することは企業にとって重要な課題です。シグネチャーは電子署名として機能し、契約の証拠能力を向上させます。これにより、契約時のトラブル回避や法的な証拠の確保が可能です。クライアントやユーザーからの信頼性が向上し、企業の競争力強化にもつながります。

 

シグネチャーの活用例

シグネチャーは、WAFでの攻撃探知やウイルス対策ソフトのパターンファイル、電子契約サービスでの応用などのシーンで活用されています。

 

・WAFでの攻撃検知

多くのWAFは、Webアプリケーションへの攻撃を防ぐために名簿状に登録されたシグネチャーを参照し、通信を検査します。過去に発見された攻撃のパターンを記録し、リクエストやサーバの応答を照合することで不正なアクセスを検知・遮断する仕組みです。一致するパターンが見つかった場合、あらかじめ設定されたセキュリティポリシーに基づいて警告を出したり、通信を遮断したりといった対策を講じます。

シグネチャー方式の強みは、既知の攻撃に対して高い精度で防御できる点です。特定の攻撃パターンのみを定義するため、誤検知率を抑えることができます。

シグネチャー方式以外には、ロジックベースと呼ばれる方式があります。シグネチャー方式が「名簿を見て判断する」のに対し、ロジックベース方式は「事前に定めたルール(ロジック)をもとに攻撃を検知する」仕組みです。シグネチャー方式では過去に発見された攻撃をもとにパターンを登録しますが、ロジックベース方式では攻撃ごとの個別のパターンを記録せず共通する特徴を分析してルールを導き出します。そのため、ひとつのルールが多数の攻撃パターンをカバーできるという特徴があります。

 

・ウイルス対策ソフトのパターンファイルとして活用

シグネチャーはマルウェアやウイルスのパターンファイル(識別情報)として活用できます。マルウェアやウイルスは日々新たに生み出されており、従来の防御策だけでは対応しきれません。

しかし、パターンファイルを定期的に更新しておけば、新たに生み出された脅威にも素早く対応することが可能です。具体的には、既知のマルウェアの特徴をデータベース化し、それに基づいてスキャンを行うことで、パターンに一致する脅威を高精度で検知できます。この仕組みにより、万が一ウイルスが侵入したとしても、被害を最小限に抑えることが可能です。

 

・電子契約サービスなどでの応用

近年、電子契約はさまざまな場所で利用されていますが、データの改ざんリスクも存在します。その対策として有効なのが、シグネチャーを活用した電子署名です。電子署名は、契約文書のデータから生成されたハッシュ値を暗号化して付与することで、内容の改ざんを防ぎ、契約の真正性を保証します。万が一、契約文書が改ざんされた場合でも、署名の検証時に一致しないため、不正な変更を即座に検出できます。

また、電子署名を活用することで、リモートワーク環境でも安全に契約手続きを進めることが可能です。対面での押印や書類の郵送が不要となり、契約の迅速化にもつながるため、業務効率化に貢献します。

 

シグネチャー導入の流れ

一般的に、以下のような流れでシグネチャーを導入します。

  • 自社のセキュリティ要件を洗い出す
  • シグネチャーの運用設計を実施し、関係者と共有する
  • 導入後の保守・運用を見据え、外部ベンダーとの連携や監視体制を整備する

まず、自社のシステム構成や想定されるリスクを明確にし、セキュリティ要件を洗い出します。どのような脅威に対応する必要があるのかを把握することで、適切な製品の選定が可能です。

次に、シグネチャーの運用設計を行い、適切な運用フローを構築します。シグネチャーの適用範囲や管理・更新のルールを策定し、社内のIT部門やセキュリティ担当者、経営層などと情報を共有しましょう。

最後に、導入後の運用を想定し、外部ベンダーとの連携や監視体制を整備します。社内にセキュリティの専門家がいない場合、シグネチャーの適切な設定や継続的な更新を自社内だけで行うのは困難です。信頼できるベンダーを選定し、監視体制を強化することで、長期的なセキュリティの維持につなげましょう。

 

シグネチャー導入の注意点

シグネチャーの導入や運用にあたっては以下のような注意点も存在します。

  • 誤検知リスク
  • 適切な更新が必要
  • 運用コストの上昇

シグネチャーは数が増えるほど誤検知のリスクが高まります。シグネチャー方式では、新たな攻撃が発見される度にシグネチャーを追加しなければならず、頻繁なアップデートが必要です。しかし不要なシグネチャーが蓄積されると正常な通信まで遮断してしまう可能性があるため、必要なシグネチャーのみを維持しなければなりません。

適切な更新が必要になる点も重要です。攻撃手法は日々進化しており、シグネチャーの更新が滞ると新たな脅威に対応できません。また、シグネチャーが作成されていない「ゼロデイ攻撃」には対処が難しく、シグネチャー方式だけでは完全な防御が難しいことを理解しておく必要があります。

運用コストも無視できません。一部のベンダーでは機械学習を活用して不要なシグネチャーを最適化する取り組みも行われています。しかし、必ずしも最適な結果が得られるわけではなく、コストが上昇する場合もあります。

それでも、既知の脅威への確実な防御手段として、シグネチャーの導入は依然として有効です。

 

まとめ

シグネチャー方式は既知の攻撃への有効な対策ですが、新たな攻撃が次々に登場する中ですべての攻撃を記録するのは困難です。ゼロデイ攻撃への対応が難しいという課題もあります。

こうした課題を解決する手段としておすすめなのが、クラウド型Webセキュリティプラットフォームの「Cloudbirc WAF+」です。シグネチャーベースの検知に加え、AIや機械学習を活用したロジックベースの分析を併用することで、未知の攻撃にも柔軟に対応可能です。WAFによるセキュリティ対策を検討する際には、ぜひCloudbric WAF+をご活用ください。

 
シグネチャーとロジックの違いに関しては、こちらの記事も併せてお読みください。

WAF、シグネチャー方式とロジックベースの違いとは?

 

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what-is-SSL

SSLとは?Webサイトのセキュリティを強化できる仕組みと設定方法


インターネット上でサービスを提供する場合、悪意ある第三者から顧客の個人情報を取られたり、情報を改ざんされたりして、企業と利用者の双方が損害を受ける可能性があります。

そうしたリスクの低減のためにSSL導入を検討する企業は多いものの、TLS・HTTPSとの違いやSSL証明書など、わかりにくい点が多いことから導入が進まないケースも見られます。そこで本記事では、SSLとは何かをわかりやすく解説したうえで、SSL導入に役立つ情報を多数紹介します。

 

SSLとは?基本的な仕組みとセキュリティへの効果

SSLとは「Secure Sockets Layer」の略語であり、インターネット上で行われる通信を暗号化する仕組みです。

たとえばインターネット上で、自社のサービスに顧客が名前や住所を書き込む必要があるとしましょう。SSLなどのセキュリティが導入されていない場合、悪意のある第三者は容易に顧客の個人情報を盗み見ることができ、情報を改ざんされてしまうこともあり得ます。

一方、SSLを導入していれば、データの改ざんやなりすましによる被害のリスクを減らせるため、企業側は安心してサービスを提供できます。顧客側も個人情報を取られたり、改ざんによる被害を受けたりせずに済みます。

 

SSLとTLS・HTTPSの違い

インターネット上の通信で起こり得る、なりすましや改ざん、盗聴などのリスクを低減する仕組みとして、TLSやHTTPSもあります。以下では、SSLとこれらの違いを解説します。

 

・SSLとTLSの違い

SSLは、インターネット上の通信における安全性を高める仕組みですが、利用される中でいくつかの脆弱性が発見されました。TLS(Transport Layer Security)は、このSSLの脆弱性を改善した後継プロトコルです。

SSLとTLSは、専門的に見ると暗号形式やメッセージの認証方式に違いがありますが、原理や仕組み上の違いはほとんどありません。ただ、SSLの脆弱性はTLSで改善されていることから、2025年現在すでにSSLは使用されなくなり、TLSに置き換わっています。しかし、「SSL」という名称が広く浸透していたため、実際にはTLSを使っているにもかかわらず、一般にはSSLと呼ばれたり、SSL・TLS、またはSSL/TLSと表記されたりしています。

TLSは1999年にTLS1.0がリリースされ、その後1.2、1.3とバージョンアップするごとに暗号化アルゴリズムは強固になり、脆弱性も改善されています。

 

・SSLとHTTPSの違い

HTTPSをわかりやすく解説するために、まずHTTPについて言及します。HTTPは「Hyper Text Transfer Protocol」の略語で、ホームページを表示するための通信規格です。

そしてHTTPSは「Hypertext Transfer Protocol Secure」の略語であり、SSLによって安全性を高めたHTTPです。HTTPは、SSLやTLSのように暗号化処理が施されていないので、悪意ある第三者に情報を盗み見られるリスクがあります。一方、HTTPSはSSL/TLSの技術を使って暗号化が行われるので、盗聴などのリスクを大きく低減できます。

HTTPSは安全性の確保に配慮されていることから、SEOにも好影響を与えるため、サイトを管理する企業にもメリットがあります。

 

SSL証明書の種類

SSL証明書(SSLサーバー証明書)とは、Webサイト運営元の実在を証明する電子的証明書です。SSL証明書の発行には審査があり、発行されるまでに数日かかるので、必要な場合は時間に余裕をもって申し込みを行いましょう。

SSL証明書は、認証レベルと保護できるドメイン数で分類されます。

 

・SSLの認証レベルの種類

SSLを認証レベルで分類する場合、以下の3種類に分けられます。

  • ドメイン認証型(DV:Domain Validation)
    ドメイン名の利用権があり、個人事業主の取得も可能です。また、安価で発行が早いなどのメリットもありますが、認証レベルはほかの2種類より低めです。
  • 企業実在認証型(OV:Organization Validation)
    ドメイン名の利用権があり、サイトを運営する組織の法的実在性を証明できます。証明書情報に企業名を記載できるので、Webサイトの信頼性向上に役立ちます。認証レベルはドメイン認証型より高く、EV認証型より低めです。
  • EV認証型(Extended Validation)
    ドメイン名の利用権があり、サイトを運営する組織が法的にも物理的にも実在することを証明できます。証明書情報に企業名を記載でき、世界基準の審査を必要とするので、3種類の中で最も高い信頼性をもちます。

 

・保護できるドメイン数による種類

SSL証明書は、保護可能なドメイン数によっても分類されます。

  • シングルドメインSSL証明書
    名称の通り、ひとつのドメイン上に存在するすべてのページを保護します。ただし、サブドメインの保護はできません。
  • ワイルドカードSSL証明書
    ひとつのドメイン上に存在するすべてのページを保護するうえ、関連するすべてのサブドメインの保護も可能です。
  • マルチドメインSSL証明書
    複数のドメインの保護が可能ですが、関連するサブドメインの保護はできません。

 

企業向けに適したSSL証明書の選び方

SSL証明書を認証レベルで検討する場合、サイトの規模や用途によって検討する必要があります。

ドメイン認証(DV)は、無料で証明書を発行できる場合があり、費用がかかってもほかの認証レベルより安価です。また、1か月単位での契約も可能なので、手早くSSL暗号化を行いたい個人事業主や、小規模のサイトを運営する企業に向いています。

一方、顧客データを扱うサイトや大規模なサイトを運営したり、サイトの信頼性を重視したりする場合、費用や審査の手間はかかるものの、企業認証型(OV)かEV認証を選択することを推奨します。

 

SSLの導入と設定方法

SSLを導入する際には、以下の手順が必要です。

  1. CSR(Certificate Signing Request)と呼ばれる署名リクエストを作成する
  2. 認証局にSSL証明書の申請を行う
  3. 認証手続きを実施する
  4. 審査や認証の終了後、SSL証明書が発行されたらインストールを行う

また、SSLの導入に際しては、CDN(Contents Delivery Network)やレンタルサーバーを使う手もあります。CDNを利用すると、Webコンテンツの配信効率が上がるほか、大容量の動画を配信する場合やアクセス集中時にも速度の低下が起こりにくいなど、多くのメリットを得られます。一方、レンタルサーバーを利用すると、サーバーをレンタルする企業のサービスを利用できることがメリットです。

なお、HTTPSのリダイレクト設定を行うと、HTTPにアクセスしたユーザーをHTTPSに転送できます。リダイレクトを行う場合、FTPソフトで.htaccessをダウンロードし、.htaccessに必要な記述を追加します。その後、FTPソフトで.htaccessをサーバーにあげれば作業完了です。

さらに、SSL導入後に混在コンテンツ(Mixed Content:SSLと非SSLが混在する状態)が発生した場合、Google ChromeであればChromeデベロッパーツールで該当箇所のHTMLを修正すれば、問題を解消できます。

 

SSL証明書の更新・管理のポイント

SSL証明書は、有効期限を過ぎるとサイトの安全確保ができなくなり、サイト閲覧ができなくなります。すると利用者が離れ、SEOの評価も下がってしまいます。そのため、SSL証明書が期限切れにならないようにすることが重要です。

SSL証明書の更新は、期限切れになる90日前から30日前まで可能なので、この期間に入ったら早めに更新しましょう。更新切れを避けるためには、スケジューラーなどで管理する方法もありますが、証明書の機能を使って自動更新することを推奨します。

また、SSL証明書のエラーには、期限切れのほかに設定不備や証明書の失効、証明書のドメイン名(またはホスト名)とコモンネームの不一致、混在コンテンツや危険性があるサイトに対する警告などがあります。各エラーや警告に対してはブラウザごとに対応が異なるので、使用するブラウザごとに対応を確認してください。

 

SSL証明書の改ざんリスク

SSLは、インターネット通信時の改ざんやなりすましなどを暗号化によって防ぎます。しかし残念なことに、どんなセキュリティ対策でもひとつの手法ですべての悪意に対応するのは困難です。たとえば、SSLのプロトコルに脆弱性があったり、SSL証明書自体が改ざんされたりするリスクもあり得ます。

そのため、SSLと併用してWAF(Web Application Firewall)を導入することがおすすめです。WAFは、Webアプリケーションの脆弱性を攻撃するウイルスやマルウェアへの対策として有効であり、SSLと併用することで安全性を強化できます。

 

最新のSSL技術

インターネット上の通信では、盗聴やなりすまし、改ざんなどによって、サイト運営者や利用者に被害を与える悪意ある存在が後を絶ちません。一方で、安全性の向上を目指す側も、常に新たな技術を生み出し続けています。

たとえば、TLSは1999年に1.0がリリースされて以来、1.2、1.3と進化を続けています。TLS1.3では、1.2より高速処理ができるようになり、脆弱性も改善されました。

しかし、2025年現在まだ登場していない量子コンピュータが使えるようになると、現在の暗号化は簡単に解読されると言われています。現時点ではまだ実現していないものの、将来的なリスクとして、量子コンピュータ時代にも対応できる暗号技術の開発が求められています。

 

まとめ

インターネットで通信を行う場合、盗聴やなりすまし、改ざんのリスクがあるため、SSLによる暗号化の技術が必須となっています。

SSLは認証レベルによっていくつかの種類に分かれ、手軽で安価なものから、高い認証レベルをもつものまで存在します。自社の目的やセキュリティ要件に応じて、適切なSSLを選定することが重要です。また、SSLの暗号化技術でもすべての攻撃に対応できるわけではないため、WAFの併用などでより高い安全性を確保することが推奨されます。

WAFの導入を検討するのであれば、シグネチャ方式とロジックベースの併用で安全性を高めた「Cloudbric WAF+」がおすすめです。「Cloudbric WAF+」については以下のサイトで詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

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セキュリティインシデントとは? 発生原因や対策方法・事例を解説

現代社会ではどのような事業に取り組む際も、多様なデジタル機器やネットワークを使用します。安全に事業を進め、企業として安定的な成長を目指すためには、セキュリティインシデントについて正しい知識を持つことが不可欠です。

当記事では、セキュリティインシデントの意味や近年発生した事例を紹介します。情報セキュリティに関する理解を深め、安全な事業運営を目指したい場合には、参考にしてください。

 

セキュリティインシデントとは

セキュリティインシデントとは、情報システムやネットワークの安全性を脅かすトラブルです。例えば、マルウェア感染・不正アクセス・情報漏えい・システム障害などがセキュリティインシデントと呼ばれます。

セキュリティインシデントは、外部からの攻撃のみが原因で発生するとは限りません。従業員の人為的なミスや自然災害などが引き金となり、大規模なトラブルに発展するケースもあります。

 

セキュリティインシデントの主な発生要因

セキュリティインシデントの発生要因は主に、外的要因・内的要因・環境要因の3種類に分類できます。

 

・外的要因

外的要因とは、主にサイバー攻撃や不正アクセスなど、悪意のある第三者によってもたらされる外部からの脅威です。具体的には、ランサムウェア攻撃・SQLインジェクション・不正ログインなどが外的要因に分類されます。

外的要因によるインシデントを防止するためには、ファイアウォールや侵入検知システム(IDS/IPS)を活用して、技術的に監視や防御を行う方法が一案です。

 

・内的要因

内的要因とは、従業員の過失や管理体制の不備といった企業内部の問題です。たとえば、メールの誤送信やアクセス権限の不適切な管理によって発生した情報漏えいは、内的要因が原因のインシデントにあたります。従業員が行った顧客情報の不正持ち出しも、内的要因によるインシデントです。

内的要因による被害を防止するには、情報セキュリティの重要性や重要情報の取り扱いルールに関して、十分な従業員教育を行う必要があります。併せて、アクセス権限の設定を見直し、適切に強化する対応が必要です。

 

・環境要因

環境要因とは、地震や台風などの自然災害や、外部サービスの障害です。大規模な地震や台風が発生すると通信機器の物理的な破損・停電により、事業運営に支障が生じることも珍しくありません。また、自社が利用している外部サービスやクラウドサーバーの障害が原因の場合もあります。環境要因による影響を軽減するには、事前に情報資産のバックアップを取得する・BCPを策定するなどの対策をとりましょう。

 

セキュリティインシデントの発生事例

大規模な情報漏えいやデータ改ざんが発生した場合には、企業の信頼を揺るがす事態に発展する恐れがあります。近年発生したセキュリティインシデントの事例を知り、十分な対策をとることの必要性を今一度確認しましょう。

 

・大手通信会社が不正持ち出しで約596万件の個人情報漏えい

2023年に大手通信会社の業務委託先で、映像配信サービスやインターネット接続サービスを利用していた一部顧客の個人情報が流出しました。流出した個人情報は、約596万件にものぼります。

大規模な情報流出を引き起こした直接的な原因は、業務委託先に勤務していた派遣社員の不正です。元派遣社員は業務用PCから個人契約したストレージにアクセスする手法で、大量の個人情報を持ち出しました。

大手通信会社では事故の再発防止策として、個人情報管理体制を強化しています。併せて業務委託先の監督を強化し、サービスの向上に努めている最中です。

 

・大手電機メーカーが不正アクセスで約5千件の個人情報漏えい

2024年に大手電機メーカーの運営するオンラインストアや食材宅配サービスが第三者による不正アクセスを受け、約5千件の個人情報を漏えいする事故が発生しました。漏えいした情報は、一部顧客の氏名、郵便番号、住所、メールアドレスなどです。特定期間にオンラインストアを利用し、クレジットカードで買い物した顧客の場合、カード番号、パスワード、名義人名なども流出している可能性があります。

事故の発生要因は、Webサイトの脆弱性を突いた攻撃で不正なスクリプトを埋め込まれ、顧客の入力した個人情報を外部へ転送されたことです。大手電機メーカーでは個人情報保護委員会・警察へ事故の詳細を報告し、より詳細な調査と再発防止対策の検討を進めています。

 

セキュリティインシデントの対策方法

情報資産を正しく管理し、適切な対策によってトラブル防止に努めることは、企業としての責任です。以下では、セキュリティインシデントの被害拡大防止、発生抑制対策として取り組みたい3つの事項を紹介します。

 

・セキュリティ体制を明確にする

情報セキュリティ対策の第一歩として、経営陣のリーダーシップのもと、十分なセキュリティ体制を整備しましょう。体制整備に取り組む際には自社の事業が抱えるリスクの概要を調査して認識し、影響を軽減するために必要なタスクを明確にすることが必要です。

全社的なセキュリティ体制を構築するために、十分なノウハウを持つ人材による「セキュリティ統括機能」を設置して、経営層の意思決定をサポートしましょう。セキュリティ統括機能を構築した後にはスピーディーな対応を促すため、インシデント発生時の対応チームを編成したり指揮系統を確立したりすることが重要です。

参照元:経済産業省商務情報政策局サイバーセキュリティ課独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver2.0 付録Fサイバーセキュリティ体制構築・人材確保の手引き
12~15ページ

 

・システムを定期的に更新する

OSやソフトの状態が古いまま放置すると、脆弱性を狙ったサイバー攻撃の標的になるリスクがあります。リスクを回避するにはベンダーの通知に気を配り、OSやソフトのアップデートを確実に行って、最新の状態を維持してください。

ベンダーから受け取るアップデートの通知を見逃すリスクがある場合は、従業員への連絡方法を工夫する対策が必要です。たとえば、メールによる通知で見逃しが目立つ場合は、チャットで連絡する方法を検討しましょう。

 

・セキュリティツールを導入する

組織として情報セキュリティ対策に取り組む際には、適切なセキュリティツールを導入することも欠かせません。サイバー攻撃の被害を防止する対策としては、ファイアウォール・侵入検知システム(IDS/IPS)を導入し、システムやネットワークの安全性を確保する方法があります。運営しているWebサイトの安全性を強化したい場合には併せて、WAFの導入も検討しましょう。

WAFとは、Webサイトの保護に特化したセキュリティツールです。WAFを導入するとSQLインジェクションやコマンドインジェクションなど、ファイアウォールや侵入検知システムで対応できないサイバー攻撃も防御できます。

 

まとめ

セキュリティインシデントは主に、悪意のある第三者によるサイバー攻撃・企業内部の過失・自然災害や外部サービスの障害などが原因で発生します。トラブルの発生リスクを軽減し、万が一起こった場合の被害を最小限に留めるためには、組織としての体制整備やセキュリティツールの導入に取り組みましょう。

取り組みを主導できる専門知識が豊富な人材がいない場合には、ぜひクラウド型WAFサービス「Cloudbric WAF+」の導入を検討してください。Cloudbric WAF+の詳細は、以下のページで確認できます。

Cloudbric WAF+

 
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クリックジャッキングとは?攻撃の手口や事例・対策方法をわかりやすく解説


企業が警戒すべきサイバー攻撃のひとつに、クリックジャッキングがあります。クリックジャッキングに遭うと、企業は大きな損失を被る恐れがあるので注意が必要です。この記事ではクリックジャッキング攻撃がどのような手口で行われているかを説明し、具体的な対策方法を取り上げます。ぜひこの記事を読んで、企業のWebセキュリティ強化に役立ててください。

 

クリックジャッキングとは

クリックジャッキング(Clickjacking)とは、Webサイト利用者を視覚的にだまして、意図しない操作をさせるサイバー攻撃手法のひとつです。ユーザーは通常のリンクやボタンをクリックしているつもりでも、実際にはリンクやボタンの上に透明なレイヤーや偽装されたインターフェースが重ねられていて、アタッカーが仕掛けた別の操作に誘導されます。

 

クリックジャッキング攻撃の仕組み

クリックジャッキング攻撃は、Webページに巧妙に仕掛けられています。

アタッカーは、本来のWebページ(被害サイト)の上に、透明化された別のページを重ねます。ユーザーが正規のWebページを訪れても、罠サイトの表示は見えないので危険の存在に気づけません。しかし、実際には透明なページにはアタッカーが意図するボタンやリンクが配置されていて、ユーザーが正規のボタンと思い込んでクリックすると、別の操作に誘導されてしまうという仕組みです。

アタッカーは企業のWebページを利用することもあれば、無害に見える「罠サイト」を自分で作ることもあります。どちらの場合にも、透明のページやボタン、リンクが重ねられていて、悪意のあるサイトや不適切なアクションに誘導されてしまいます。

 

クリックジャッキング攻撃によって発生する影響

クリックジャッキング攻撃によって起こり得る影響を4つ紹介します。

 

・SNSで意図しない「いいね」やフォローが行われる

クリックジャッキング攻撃により、ユーザーが意図せず「いいね」やフォローを行ってしまう被害がよく報告されています。この手口では、FacebookやX(旧Twitter)といったSNSの正規の「いいね」ボタンやフォローボタンの上に、別の透明化されたボタンが配置されています。ユーザーはいつも通りのボタンをクリックしたつもりでも、実際には透明化された別のボタンを押してしまう仕組みです。

クリックジャッキングによりSNSが乗っ取られてしまい、勝手に悪意のあるURLを掲載した投稿をされ、それが拡散されて被害が広がることもあります。

 

・マルウェアをダウンロードされる

クリックジャッキング攻撃は、ユーザーに意図せずマルウェアをダウンロードさせる手口としても利用されています。

悪意のあるマルウェアは、個人情報やクレジットカード情報の窃取、企業秘密の漏えいなど深刻な被害を引き起こす恐れがあるため注意が必要です。特に企業は、この種の攻撃が大規模なデータ漏えいや業務停止につながる場合があるので気をつけましょう。

 

・Webカメラやマイクを乗っ取られる

クリックジャッキングは、Webカメラやマイクといったデバイスの乗っ取りにも悪用されます。

アタッカーは、悪意あるページ上にAdobe Flash Playerなど特定のプラグインの設定画面を透明化された状態で重ねています。ユーザーが何か別の操作だと思い込んでそこをクリックすると、その背後でWebカメラやマイクへのアクセス許可が与えられる仕組みです。

Webカメラやマイクが乗っ取られると、ユーザーの意図に反してカメラやマイクが起動し、自宅内の様子が盗撮されたり、ミーティング中の発言内容が録音されたりする恐れがあります。

 

・意図せず商品の購入・不正送金をさせられる

クリックジャッキングによって最も深刻な被害となり得るもののひとつが、不正送金や意図しない商品の購入への誘導です。

この手口では、「購入する」ボタンや「送金する」ボタンが透明化されていて、その背後に悪意ある操作フィールドが配置されています。この仕掛けにより、ユーザーは気づかない間に高額商品の購入手続きを完了したり、不正送金を実行したりしてしまいます。

 

クリックジャッキング攻撃の対策方法

クリックジャッキング攻撃からの被害を避けるために講じるべき対策を解説します。

 

・ブラウザでJavaScriptやFlashを無効にする

クリックジャッキング攻撃の一部は、JavaScriptやFlashといった技術を利用して実行されるため、これらを無効化することで防御できます。ほとんどのブラウザでは、設定メニューから簡単に無効化が可能です。

ただし、クリックジャッキングはCSSやHTMLのみで実行されることもあるため、この対策をしただけでは完全に防御できたとはいえません。他のセキュリティ対策と併用して実施するようにしましょう。

 

・ブラウザやOSのセキュリティアップデートを実施する

クリックジャッキング攻撃は、ブラウザやOSの脆弱性を悪用して行われることがあるため、常にブラウザやOSを最新バージョンにアップデートをしておくことが大切です。

Google ChromeやMozilla Firefoxなどの主要ブラウザでは、自動更新機能が搭載されているため、この機能を有効にしておくと便利です。OSについても同様に、自動更新機能を活用して新しいセキュリティパッチが適用されるよう設定しておきましょう。

 

・セキュリティ対策ツールを導入する

セキュリティ対策ツールは、不正なプログラムや挙動を検知して警告を発する機能を備えています。これらはクリックジャッキングに限らず、多種多様なサイバー攻撃からシステム全体を保護するのに有効です。

企業のWebセキュリティ対策におすすめなのが、「Cloudbric WAF+」です。企業のWebセキュリティ確保に必須とされる以下の5つのサービスを、ひとつのプラットフォームで利用できます。

  • WAFサービス:Web攻撃の遮断
  • DDoS攻撃対策サービス:最大40GbpsのDDoS攻撃に対応可能
  • SSL証明書サービス:SSL証明書の無料提供・自動発行
  • 脅威IP遮断サービス:脅威IPとして定義されたIPの遮断
  • 悪性ボット遮断サービス:スパイウェアやスパムボットなどの遮断

 

・X-FRAME-OPTIONSを設置する

クリックジャッキング攻撃に対処するには、Webサイト管理者側の対策も重要です。最も効果的な対策として挙げられるのが、外部サイトの表示を制限する「X-FRAME-OPTIONS」ヘッダーの設定です。

「X-FRAME-OPTIONS」には、「DENY」・「SAMEORIGIN」・「ALLOW-FROM」という3つの設定値があります。「DENY」は、全てのページでフレーム表示を禁止する設定です。「SAMEORIGIN」は、同一オリジン内でのみフレーム表示を許可します。「ALLOW-FROM」は、特定オリジンからのみフレーム表示を許可する設定です。

「X-FRAME-OPTIONS」は簡単に実装できるうえ、高い防御効果があるため、多くの企業サイトで採用されています。

 

まとめ

Webブラウザを悪用したクリックジャッキングにより、情報流出やデータ破壊などの深刻な被害が及ぶことがあります。企業は、セキュリティアップデートをこまめに実施したりセキュリティ対策ツールを導入したりして、Webセキュリティ確保に努めましょう。

 

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20250416-MEGAZONE

【Webセミナー】4/16(水)14:00~AWS運用 「AI時代のサイバーセキュリティ」

 

このたび、ペンタセキュリティは2025年4月16日(水)にMEGAZONE株式会社と共同でWebセミナーを開催いたします。

 

■セミナーについて

クラウドとAI技術の進化により、企業のITインフラはますます高度化する一方、AIを悪用したサイバー攻撃が新たな脅威となっています。いま、企業に求められるのは、最新のサイバーセキュリティ対策をいち早く取り入れ、リスクを最小限に抑えることです。
本セミナーでは、AWSのクラウドサービスを基盤に、AI時代におけるサイバーセキュリティの最新グローバルトレンドと、企業が今すぐ取り組むべき最新の対策方法について、具体的な事例とともに最新のサイバー脅威とその対策方法を徹底解説します。
企業が直面する可能性のあるサイバーセキュリティ課題を具体的に掘り下げ、どのようにAIを活用してリスクを最小限に抑え、安全で信頼性の高いクラウド運用を実現できるのかをお伝えいたします。

 

<プログラム>
14:00~:アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
AWS エッジサービスで実現するウェブアプリケーションの保護
14:25~:ペンタセキュリティ株式会社
AI攻撃に対抗する、脅威インテリジェンスと攻撃ロジック分析に基づくWebセキュリティ
14:50~:MEGAZONE株式会社
生成AI × クラウドセキュリティ:攻めと守りの戦略
15:15~:Q&A

 

<講師>
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 Partner Sales SA
小林 謙介
ペンタセキュリティ株式会社 日本法人 代表取締役社長
陳 貞喜
MEGAZONE株式会社 Solutions Architect
阿河 弘晃

 

<こんな方におすすめ>

  • クラウドインフラ運用担当者
    AWSを含むクラウドインフラのセキュリティ運用に携わる方。特に、AWS Well-Architected ReviewやSecurity Dashboardを活用して、安全なインフラ運用を実現したい方
  • セキュリティエンジニア
    Webアプリケーションやネットワークのエッジセキュリティ強化に興味を持つエンジニア。AWS WAFを活用した攻撃防止策やセキュリティサービスの進化を学びたい方
  • 経営層・ITマネージャー
    自社のITセキュリティポリシーを策定・監督する立場にある方。サイバー攻撃のグローバルトレンドを理解し、将来のセキュリティ投資戦略を練るための情報を得たい方
  • 情報システム担当者
    サイバー攻撃のリスク管理を行い、特にAWSを中心としたセキュリティ対策の実行を責任とする方。AWS Well-Architected ReviewやWAFの具体的な活用事例を参考にしたい方
  • システム管理者 (IT管理者)
    自社のWebアプリケーションやインフラを管理する立場にある方。サイバー攻撃のリスクを減らすために最新のセキュリティ対策に関心がある方

 

<セミナー概要>
名称:AI時代のサイバーセキュリティ:グローバルトレンドと最新の対策事例
日時:2025年4月16日(水)14:00~15:30
形式:オンライン
費用:無料
主催:ペンタセキュリティ株式会社、MEGAZONE株式会社
協力:アマゾンウェブ サービスジャパン合同会社

 

▼セミナーの申し込み
https://20250416security.peatix.com/