
近年、APIやクラウドサービスの普及により、Web攻撃の多様化が進んでいます。従来のWAFでは対応しきれない脅威も増え、より包括的な防御が求められるようになりました。
こうした課題を解決する次世代ソリューションが「WAAP(Web Application and API Protection)」です。この記事では、WAAPの仕組みやWAFとの違い、導入のメリットを解説します。
WAAPとは
近年、Webアプリケーションを狙うサイバー攻撃はますます巧妙化し、従来のWAF(Web Application Firewall)だけでは防ぎきれないケースが増えています。特に、スマートフォンアプリや企業間連携で利用されるAPI通信を悪用した不正アクセスや情報漏えい、ボットによる自動化攻撃、さらにはDDoS攻撃など、アプリ層を狙う脅威が多様化しています。
こうした背景から、米ガートナー社が提唱した概念が「WAAP(Web Application and API Protection)」です。WAAPはWAFの機能に加え、API保護・悪性ボット対策・DDoS防御を統合した次世代のWebセキュリティソリューションで、クラウド時代における標準的な防御基盤として注目を集めています。
WAFとの違い
WAFは、Webアプリケーションへの不正な通信を検知・遮断するためのセキュリティ対策で、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)といった代表的な攻撃から守る役割を担います。
しかし、従来型のWAFではHTTP通信の一部しか解析できず、APIやボット、DDoSなど多様化する脅威には十分対応できない場合があります。これに対してWAAPは、WAFの機能を発展させ、API保護・ぼボット対策・DDoS防御を統合した包括的な防御を実現します。
つまり、WAFが「Webアプリ中心の防御」なら、WAAPは「アプリとAPIを一体で守る次世代統合防御」が特徴です。
WAAPの主な機能
WAAPは、WebアプリケーションとAPIを一体的に守るための多機能なセキュリティソリューションです。WAF・API保護・ボット対策・DDoS防御といった複数の防御機能を統合し、アプリ層からネットワーク層までを包括的に保護します。ここでは、WAAPを支える4つの主要機能について紹介します。
機能①WAF
WAAPの中核機能を担う機能にWAFがあります。WAFは主にWebアプリケーション層を対象とし、攻撃者による不正なリクエストや脆弱性の悪用をリアルタイムで検知・遮断します。
代表的な攻撃として、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)などが挙げられ、WAFはこれらの脅威からWebサイトを守る重要な役割を果たします。また、通信内容を継続的に分析して異常を検出し、ログ記録によって攻撃傾向を可視化することも可能です。WAAP全体の「第一の防波堤」として、API保護やボット対策、DDoS防御と連携し、より強固で多層的な防御を実現します。
WAFについては以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。
セキュリティ対策に有効なWAFとは?仕組みや種類、おすすめ製品を紹介
機能②APIの保護
近年のシステム連携やモバイルアプリ開発では、APIを介した通信が欠かせません。WAAPでは、こうしたAPI通信を保護する機能を標準で備えており、不正アクセスや情報漏えいを防ぐ重要な役割を担います。
具体的には、APIの呼び出し内容やリクエストパラメータを詳細に解析し、不正トークンの利用や認証回避などの異常な挙動をリアルタイムで検知・遮断します。また、OpenAPIなどを活用してAPI構造を自動的に把握し、想定外のアクセスをブロックすることも可能です。
これにより、安全なデータ連携と安定したサービス運用を支え、WebアプリとAPIを一体的に守る基盤として機能します。
機能③ボット対策
近年、悪性ボットによる被害が急増しており、認証突破やアカウント乗っ取り、チケットや商品の自動購入といった不正行為が問題となっています。従来のアクセス制御では防ぎきれないAI搭載型ボットや分散型ボットネットも増え、Webサービスの安定稼働を脅かす要因となっています。
ボット対策機能としては、ユーザーエージェントや行動パターン、アクセス頻度などを解析し、悪性Botを識別します。そして、検出後は自動的にブロックやレート制限、CAPTCHA表示などを実行します。
これにより、正規ユーザーの利便性を損なうことなく、サービス品質とセキュリティを両立します。
機能④DDoS対策
DDoS(分散型サービス拒否)攻撃は、複数の端末から大量のリクエストを同時に送りつけ、サーバーやネットワークを過負荷状態にして停止させる攻撃手法です。近年では、クラウド環境やAPI通信を標的とした高度なL7(アプリケーション層)攻撃が増加しており、従来のネットワーク防御だけでは対応が難しくなっています。
DDoS対策機能としては、通常の通信と攻撃トラフィックをリアルタイムで識別し、異常なリクエストを自動的に遮断します。これにより、クラウド上のスクラビングセンターで不要な通信を除去し、正規のアクセスのみを通過させることが可能です。
この仕組みにより、攻撃を受けてもWebサービスを安定して稼働させることができ、企業の信頼性維持とビジネスの継続性を確保します。
DDoS攻撃への対策については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。
WAAP導入のメリット
WAAPを導入することで、企業は単なる攻撃防御にとどまらず、運用効率や可用性の向上といった多面的な効果を得られます。多層防御による強固なセキュリティ、統合管理による運用の効率化、不正アクセスの防止、そしてビジネス継続性の確保まで、幅広いメリットが期待できます。ここでは、その主な効果を順に紹介します。
メリット①多層防御による高いセキュリティ
サイバー攻撃は年々高度化・多様化しており、WAFやIPSなど単一の防御策だけでは十分に対処できません。特にAPIの不正利用やボットによる自動攻撃、DDoS攻撃など、複数層を同時に狙う攻撃が増えています。
WAAPは、WAF・API保護・ボット対策・DDoS防御を統合的に運用し、多層的なセキュリティを実現可能です。アプリケーション層からネットワーク層まで一貫して監視し、攻撃経路や影響を最小限に抑えられます。これにより、企業は強固で持続的な防御体制を維持できます。
メリット②運用の効率化
クラウドやAPIの普及により、企業のセキュリティ運用は複雑化し、担当者の負担が増しています。WAFやDDoS、ボット対策を個別に管理すると工数がかさみ、限られた人員では対応が困難です。
WAAPはこれらの防御機能を統合し、単一画面で一元管理を実現します。脅威検知やルール更新を自動化することで、作業負荷とミスを抑えます。これにより、少人数でも効率的にセキュリティを維持し、運用コスト削減と防御力強化を両立します。
メリット③不正アクセスの防止
不正ログインや情報搾取などの攻撃は、パスワードリストやセッション乗っ取りなど手口が巧妙化しています。API経由の不正リクエストやボットによる自動攻撃も増加し、従来の単一対策では防ぎきれません。
WAAPは、WAFによる検査に加え、API保護・ボット対策・DDoS防御を連携させ、多層的に防御します。不審な通信をリアルタイムで遮断し、不正ログインや情報漏えいのリスクを大幅に低減することが可能です。これにより、安全で信頼性の高いアクセス環境を実現します。
メリット④ビジネス継続性の確保
多くの企業がクラウドやオンラインサービスに依存する今、システム停止は収益損失や信用低下に直結する重大リスクとなっています。DDoS攻撃やAPIの不正利用による障害でも、顧客離脱や業務中断を招く恐れがあります。
WAAPは、WAF・API保護・ボット対策・DDoS防御を連携させ、攻撃時でもサービスを継続できる体制を構築します。自動スケーリングやトラフィック制御により、アクセス集中時も安定稼働を実現し、可用性・信頼性の高いシステム運用を支えます。
WAAPを選ぶポイント
WAAPを導入する際は、単に機能の多さだけでなく、防御性能や運用性、信頼性といった総合的な視点から比較・検討することが重要です。ここでは、導入前に確認すべき3つのポイントとして「セキュリティ機能と性能」「運用コストと管理のしやすさ」「市場での評価」について解説します。
ポイント①セキュリティ機能と性能
企業のWebサービスは、多層的な脅威に常に晒されています。そのためWAAPを選ぶ際は、機能の有無だけでなく「どの程度の攻撃に耐えられるか」という性能面を重視することが重要です。
防御力が高くても、遅延や誤検知が多ければユーザー体験を損ないます。理想的なWAAPは、防御範囲と検知精度を両立し、ログ可視化や自動更新など運用面でも優れていることが求められます。これにより、セキュリティとパフォーマンスの両立を実現し、安定したサービス運用を支えます。
ポイント②運用コストと管理のしやすさ
マルチクラウド化やAPI活用の拡大により、企業のセキュリティ運用は複雑化しています。WAFやボット対策を個別に導入すると、運用や監視にかかる負担とコストが増します。
WAAPはこれらを統合管理でき、単一画面で設定・監視・分析が可能です。脅威検知やルール更新の自動化、24時間監視などのサポートを備えたサービスを選べば、担当者の負荷を大幅に軽減できます。少人数でも効率的に運用でき、コストを抑えつつ継続的なセキュリティ強化を実現します。
ポイント③市場の評価
WAAP市場は急速に拡大しており、各ベンダーが多様な機能を提供しています。しかし導入を検討する際は、機能だけでなく「実績」や「第三者評価」といった信頼性の指標も重要です。
特に米ガートナー社などの調査機関による評価レポートは、製品の性能や運用性を多角的に分析しており、選定時の有力な判断材料となります。こうした客観的な評価や導入実績を確認することで、自社に最適なWAAPを安心して導入し、長期的な信頼性を確保できます。
まとめ
近年のWebセキュリティ対策では、攻撃を「防ぐ」だけでなく「止まらないサービス」を維持することが重要視されています。WAAPはその実現を支える次世代の統合防御基盤ですが、導入にあたっては信頼性と実績を備えたソリューションを選ぶことが鍵です。
Cloudbricが提供する「Cloudbric WAF+」は、WAF・DDoS対策・ボット対策・API保護を統合したクラウド型セキュリティサービス で、AIによる自動検知と最適化を行い、ゼロデイ攻撃や未知の脅威にも対応します。さらに、ガートナー社による「Representative Providers」にも選出された実績を持ち、グローバルでも高い評価を得ています。
専門的な知識がなくても導入・運用が容易であり、中小企業から大企業まで幅広い業種で活用されています。Web
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